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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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何回目の不法侵入

Side Unidentified


――全く、俺の愛しの吸血鬼は暗躍好きが高じて困る。



茶化したように、そう考えてしまう。たった今、リセーアスの方に使者を送った。


完全にノーマークであろうあの男。何のために周りに色々と()()を吹き込んで怪しい行動をとらせたのか。

完全にノーマークな人物を作るためだ。



あいつは所詮、研究者。意地の悪い考え方など得意ではない上、元々持っている情報も違いすぎる。

更に今は計算外のことが起こって、混乱している所だろう。体勢を立て直させないためにも、今徹底的に潰す。



今、リセーアスとチーズルに工作し、九星の恨みを皇月影に集めようとしているのだろう。


だが、それは俺が望むシナリオには入っていない。だから潰す。



「この俺に、何度も同じ手が通用すると思うなよ……アイン?」

俺は今、もぬけの殻となっているアインの寮室にいる。


そこは几帳面なアインらしく、きちんと整理整頓されていて、埃も落ちていない。

本棚には本がずらりと並べられており、かなりジャンルはバラバラだ。


辞書、伝記、ビジネス書、エッセイ、小説――。これ、最近流行ってる恋愛ミステリー小説だな。サティに布教されたな。


「この辺でいいかな」

俺は一つの本を手に取る。そして――。



「異能力”モニタリング”」

本に異能力がかかったことが分かる。それに俺は満足し、その本を元あった場所に戻す。



「本当にアインって、演技下手だよな。あんなあからさまに精霊を目で追ったら、一発でわかるだろ。――まあ、追いたい気持ちは分からなくもないがな」

俺は、肩に乗った精霊を手で払いのける。わー、と言いながら空中に漂う下級精霊は、時々かなり変なことをしている。


例えば、洗濯ばさみに挟まって洗濯物と一緒に干されていたり。

例えば、人の吸う息に紛れて吸われていたり。

例えば、パン屋のパンの中にしれっといたり。

例えば、サラダの上で、ドレッシングをかけられるのを今か今かと待ちわびてもいた。



そんなおかしなことをするから、つい見たくもなるだろうが、だから精霊が見えることがばれてしまう。別に隠したい意図はないのかもしれないが、俺のように、精霊が見えているのに、見えていないふりをしている人間の存在を、考えない。


「さすがに英雄になると、ばれるからな。だから、邪神は()()()()()()()()()()()()()皇月影を呪った。

――まあ、これで部屋で倒れられても、すぐに感知できるだろ」

俺は、アインの寮室から出た。



俺の異能力は、簡単に言えば監視カメラだ。それも、指定した物体を監視カメラ化することができる。つまり、吸血鬼の蝙蝠と似ている能力だ。


という訳で、普段自室でアインが何やっているかを、見ることができる。一応、アインの体調不良にいち早く気付ける、という名目で付けたが、当然本人からの許可は得てない上、悪用する気も満々である。

というか、主には悪用でしか使わないだろう。好きな子の部屋にカメラ仕掛けたら、やることは一つすぎる。


ばれたらさすがの俺も半殺しにされそうだが、上手く言いくるめるか。まあ、アインを言いくるめるくらいは簡単だし、無理そうならごり押しで何とかなる。

アインは案外ちょろいから。



俺は自室に戻り、大きなベッドにダイブする。まだ、アインは帰ってきていないようだ。


大きな窓からは、満天の星空と明るい月明かりが見える。俺は窓を開け、身を乗り出して空を見る。俺の緑色のピアスは、そんな月明かりの下、悲し気に輝いていた。


その緑色は、どこかで見た色で輝いていた。



「九星、か」

俺はふと呟く。


「九つの星。それが、邪神討伐で犠牲になる、という意味にしないよう、これからも動かなきゃな」

そう呟いたとき、俺の元に鳩が飛んでくる。足に紙片が括りつけられているため、伝書鳩だろうとわかった。


「なんだ、中身は……」

俺が確認した途端、笑いがこみあげてくる。



「ハハハッ、どうやって計画を実行するんだろうな、月影?」

今日はいい夢が見れそうだ。


俺の金の髪は、夜風に吹かれてはためいていた。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



Side Noah


「末恐ろしいな……」

とんだ勘違いをする羽目になるところだった。


彼の話を聞き、恐怖で身震いした四年前。確かに、そのままでは彼の思う壺だったと思う。


僕は、子供を殺した最低の外道と思い込み、奴の命を生け贄に、邪神を倒そうとまで考えた筈だ。


しかし、それこそが狙いだったのだ。



僕は異能力で、協力者の()()を見た。そして、それが真実であると知った。


()()()()()僕は皇月影を保護することを第一目標にしている。

()()()()()、奴らの思い通りにしはしない。させない。



僕は鳩の足に手紙をくくりつけた。


「しっかり頼むよ」

クルル、と鳴き、頭を僕の指にすり付けてくる。



「ノア、まだ寝ないの?」

「もう寝るよ」

いつのまにか部屋の前にいたララに、そう返す。


窓を閉めて、ララを抱きしめる。背中に、腕が回される感触があった。



「楽しみだね」

「ええ、そうね」

僕はララのお腹を撫でる。まだ、全く膨らんでないそれには、確かに小さな命が芽吹いていた。

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