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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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崩れてく

Side Hue


「これはノアが一枚上手だね」

エリック、オットー、リズの後姿を見て、サージがしみじみと呟く。


「そりゃそうだろ。そもそも、あいつが呪われてるのを知ったとき、もう手遅れに近かったからな」

「それでああなるとはねぇ……」

穏やかに笑うサージが、昔を懐かしむ。本当に、アイツは肝心なところで常にドジを踏む。だから、ラースに秘密を知られるなんてヘマを犯す。もしその秘密を知ったのが俺なら、もっと上手に出れただろうに。


「で、本当のことは言わなくてよかったの?」

「言う必要もないだろ。それに、延命治療の意味をしっかり理解できているのか」

「気が動転しすぎて理解が追いついていないだけじゃないかな。流石に気づくよ」

延命治療。それは、回復の見込みの()()患者に対して、生命を維持する目的でする医療行為だ。決して、改善するための医療ではない。


「あの呪い、ヒューでもってしても解けない。つまり、かけた張本人が解かない限り、生きるのは絶望的だ」

「ああ。それに今生きているのだって、奇跡に近い。もう、時間がない」

あの皇月影だ、そもそもこんな博打に近いようなこと、やる筈がないし、そもそも人体改造なんて禁忌、犯したくもなかった筈だ。


「皇月影に、本当に寿命がなければ、邪神を倒せる見込みがあったんだけどねぇ……」

「ああ。まあ、いいんじゃないか?邪神を倒す、という事は皇月影を殺すことにつながる。あいつも言っていただろ?それを知ったとき、九星の心の傷になりたくない、って」

「でも、僕たちが死んでいない、という時点でかなり恨みはなくなりそうだけど」

だから、必死で俺たちの居場所を九星から隠していた筈だ。なんでばれたんだろうな。


「そうならないように、怒りを煽ってんだろ。記憶を消したり、ノアを怒らせるようなことを言ったり。更に、九星の危機を、見て見ぬふりをした」

「やることが子供なんだよね。なんか、甘い。嫌われたいなら拷問でもすればいいのに」

サージの言う通りだ。人体改造だって、麻酔を使っていたし、そもそも苦痛を伴うものですらないらしい。一応、死ぬかもしれないらしいのだが、それもどこまで本当なのか。



「苦肉の策が、俺たちの死なんだろ。実際、それで嫌っているんだろ」

「計画が崩れちゃったかな」

テンの言葉に、サージがあちゃーと言った。そもそも、セオドアに俺たちを住まわせるなよ、本当にばれたくないんだったら。せめてクリスタルパラスとかにしとけよ。なんでそこでドジるんだ。



「俺たちが、嫌われるよう誘導するべきか」

「さすがに、心に傷は、負ってほしくないからね」

「あ、そうだ佐倉の動きが怪しいって。今は特に何もしてないけれど、後々何かをやらかすかも、と」

「……あいつって事情知ってるっけ?」

「さあ……」

テンが両手を広げて首をかしげる。


「幼馴染なんだよね?」

「婚約者だ、一応」

「呪いに詳しくないからでは?そもそも、呪いなんて魔属性の魔法の方が一般的でしょ」

「ああ、あの呪いもどきか。本当の呪いは、才能がものを言うんだがな」

呪いは、感情を可視化した力だ。だからこそ、魔力で再現できないくらい、禍々しい。

時には見た目に影響を与えるくらい、強力で、他と混ざりあうことを許さない。だからこそ、皇月影は、どんな強力な呪いも、全く効かない。それくらいが恩恵だろうか。

人生で呪われる体験なんぞ、人生で精霊学者に会う確率より低いから、ほぼ意味ないが。



「あ、誰か来た」

「今日は客人が多いな」

「はいはーい、今開けます、か……」

サージの声が途中で途切れる。おいおい、さっきもあったぞ。


「サージ?」

「邪魔するな」

「邪魔するなら帰れ」

「フン、不敬だぞ」

ずかずかと人の家に上がり込んだ男に、辟易(へきえき)とする。


「あんたの要件は何だ」

「客人に、茶の一杯も出さないのか」

「はー、テン、お出しして」

「わかった」

あまりにも図々しい客人に、渋々茶を振舞う。だが、ここで出される茶に、期待しないでもらいたいが。


「で、話って」

「なに、無能な異能力者に釘を刺そうと思ってな」

「は――、誰が無能だって!!」

「ちょっ、ヒュー!!」

男に言われた言葉に、思わず激昂する。殴りかかりたい衝動に襲われたが、それをサージに止められた。


「自覚があるようで何よりだな」

そんな中、暢気に茶を飲む男に、更に苛立つ。テンはオロオロしてるが、男に冷たい視線を送っている。



「サージ、放せ!俺はこいつに――!!」

「駄目でしょ!今は落ち着いて!ヒュー、お願い!」

「無能なのはその通りだろう。貴様は患者を見捨てるのか?」

「は?何を言って――」

「そのままの意味だ。貴様は患者を見捨てるのか?治療方法もある、まだ可能性はゼロじゃないのに」

「ハッ、あんたに何が分かる。可能性がない訳じゃない?ないよ!毛の先程もな!」

「俺があると言ったらある。貴様、俺の言葉を根拠もなく否定るするのか?」

「相手は邪神だぞ!無理に決まってる」

「邪神について、よく調べるがいい。それもせず、むざむざと死なせるような奴が、無能ではないと、俺はそう思わんがな」

そう一方的に言い、奴は席を立つ。


「もう用はない。――俺を失望させるなよ」

「お前、何様のセリフだよ」

「俺は俺様だ。おかしなことを聞くな?」

「チッ、調べりゃいいんだろ、調べりゃ!」

俺が投げやりに言うと、奴は不敵に笑った。


「ああ。くれぐれも、アイツに見つかるなんてヘマを犯すなよ」

「チッ、それなら、お前が言えばいいだろうが!」

「人にものを頼む態度か、それが」

横柄に言い切られ、俺は腹を決める。


「……教えてください、お願いします」

「愛息子の命、誰だって救いたいだろ」

「……!」

「今度こそ、じゃあな」

奴はそう言い、去っていった。


「愛息子の命、誰だって救いたい、か……。それを聞くと、皇月影の両親のどちらかが、邪神、という事になるけれど」

「おそらく、そうなんだろうな。けどそれ以外が全く理解できねー!」

「……ヒュー、救える、かな」

「あんだけ挑発されたんだ、もはや救わない選択肢はない。テン、サージ、探るぞ」

「「了解」」

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