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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第四章 不穏な秘密

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裏切り者は誰?

Side Lorenzo


俺は、質素な調度品が並べられている部屋で、延々と煩い口を閉ざさない少年を見て、うんざりしていた。


「ペスケ・ビアンケに入れてください!」

「何度も断ってる通り、無理だね」

「何故ですか!?僕は転生者です!なら、ここに入れる条件にも当てはまっているのでは!?」

確かに、ペスケ・ビアンケは、転生者のみを受け入れた情報屋ギルドだ。かくいう俺も転生者だ。


「それだけで受け入れていたら、組織が瓦解するでしょ。内部分裂とかが起こってね」

「俺が、そんなことをするように見えますか?!」

確実に、対立は起こすだろうね。


「少なくとも、ここにいる奴らとは、性格的に合わなそうだからね」

「そんな理由がまかり通るとでも思っているのですか!?労働法違反ですよ!!」

「この国にそんな法律はないよ」

いつまで日本人でいる気なのか。そんな甘っちょろい法律、この世界にある訳がない。それでも、十分労働者に対し、法で守っているが、まだ日本ほどではない。


「それでも、僕は十分ギルドに役立つことができる能力がある!だから――」

「話は以上だよ。さあ、お帰り願おうか」

「まだ話が――」

「ほら、お客様がお帰りだよ!」

「「「りょうかーい!」」」

別にこの少年がいなくとも、ギルドは普通に運転できている。それに、能力で雇うようなこと、うちはしていない。ただの転生者に、そこまで求めてないからね。


「放せ!放せー!!」

「うるさいなあ」

「はあ、またあいつか」

「お、ラファエル、今日は来ないかと思ったよ」

ラファエルはともかく、常に優等生なアインとサティが遅れてきた。何かあったのだろうと言い出したのは、マティアスだ。彼が捜しに行くと言い出し、そこに俺と鉢合わせた。



そのあとすぐに生徒会室に来た三人に事情を聴くと、どうやら学園内に侵入者がいたらしい。そいつを追い払うのに、時間がかかったとのこと。


それに納得できる程、俺もマティアスも甘くなかった。けれどアインが強引に話を終わらせてしまったので、何があったのか、分からずじまいだったのだ。



「いや、今日も来るつもりだった。ああ、あとアインに聞いたからな、頑なに事情を言わなかった理由」

「それじゃあ聞かせてくれるのかい、何があったのかを」

「ああ。それに今頃、アインはマティアスに色々と報告してる頃だろうしさ」

「俺も学園に報告しないといけないし、できれば事細かくに、お願いね」

「分かった。事の始まりは――」

そうして、ラファエルの説明が始まった。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「――つまり、相手は悪魔で、とても戦い慣れていて強かった、ということかな?」

「そういうこと。アインが少し手古摺(てこず)っていたしね」

あれが手古摺るってどういう領域だよ。


「そんな奴がもし、貴族の子息令嬢を襲いだしたら、大変だろうね」

「ああ。けれど、たぶん大丈夫そう。アインは、結界に強い人をステラから呼ぶって」

「それって、九星の一人じゃ……」

「”不動の堅壁”だと思う」

本気を出しに来た。しかもそれ、アインだからできることだろ。……あの悪魔は、アインに侵入した場面を見られたことが運の尽きだな。


「それに、侵入者対策用のえげつない魔法陣も張る予定らしいよ」

「それって、前のように気軽に行き来出来ないんじゃないか?」

「あ」

「あ、じゃないよ」

「ま、まあ、アインに何とかならないか聞くしか……」

「なさそうだね」

そもそも、九星二人の本気の入った結界なんぞ、誰が突破できるのだろうか。いや、無理だろ。



「あと、一つ。忘れてた」

「何?これ以上のビックニュースはいらないよ」

「どうやら、彼岸の中で種族別の強さがあるらしい」

「ふーん、じゃあ吸血鬼が一番かな」

天使が二番、と笑いながら付け加える。そんな煽りにラファエルはにっこり笑い、こう言った。


「いや、悪魔が一番、龍人が二番、天使が三番で、吸血鬼は十番らしいよ」

「いや、なんでそんなに誇らしげなんだよ、十位に思いっきり負けてるじゃん、二位と三位が」

「悪魔だって負けてるだろ」

「それもそうか……」

「それは嘘でも俺がいたから、って言ってくれないか?」

「噓だから言わない」

俺はにっこりと笑う。心なしか、ラファエルのこめかみに青い筋が……。


「でも、抵抗はできたんでしょ?なら、ラファエルより圧倒的に上でしょ」

「それは俺がいつも丸腰アインに瞬殺されてるからか?」

「だって、槍を持っていた訳でしょ?」

「それはそうだけど……」

ラファエルが落ち込む。ありゃ、虐めすぎたか。


「あ、もう一つあった!」

「あともう一つが三つくらいか?」

「もうねえよ!!」

「で、何がもう一つ?」

「ゴホン、アインが、あの悪魔のことを、”裏切り者”て呼んでいる」

「”裏切り者”か……」

「もう何人もいて、そのうちの何人かはもうこの世にいない感じだった」

「それはどうしてそう思ったんだい?」

俺の質問に、ラファエルは一瞬間を置いて、こう言った。


「だって、捕獲からの尋問、拷問の流れが、かなりスムーズだったから。それに、”裏切り者”の断定も早かったし。だから、もう既に何人もの”裏切り者”がいるんじゃないかって」

「そういうことか……」

「そう。”裏切り者”は、どうやら魔族は魔王側につくのが当たり前らしい。わかりやすく言えば、九星の敵でもある、邪神の敵側につくのが。でも、あの悪魔は邪神の味方をしていた――らしい」

「だから、”裏切り者”」

「そう。なあ、おかしくないか?」

「ああ、おかしいな」

ラファエルも、気が付いたようだ。



ラファエルの説明には、矛盾があった。それは、説明では魔王の味方をすること≠邪神の味方をすることだが、ゲームでは魔王の味方をすること=邪神の味方をすることだ。

アインが前に、魔王と邪神は同一人物ではない、と言っていた。けれど、ゲームでは同一人物だった。


一体どっちが間違っている?ゲーム知識は、どこからどこまでが正しい?俺たちは、このままで本当に大丈夫なのだろうか?

不安しかない。それでも、時間は止まってくれない、だから、がむしゃらに進むしか、方法はない。

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