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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第四章 不穏な秘密
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特待生の特別な魔法

Side Sattie


私は、アインに言われた通り、円の中でじっとしていた。


本音を言えば、私も参戦したかった。けれど、私はアインのように素早く動けないし、ラファエルさんのように魔法を扱えない。



私は、異能力がある。それは融合。何かと何かを融合することができ、それで特待生の推薦を受けることができた。

何故か、サージェントに、異能力のことは、サティにしか使えない特別な魔法と言っておきなさい、と言われた。何故だかわからないけれど、私はそうすることにした。


私の異能力は、普通じゃかなり難しい融合魔法を簡単にできる能力だ。自分の魔法だけじゃなく、他人と他人の魔法を融合することもできる。それ以外にも、錬金術で材料を融合する時にも使えるし、他人の異能力通しを融合して、使うこともできる。


例えば、呪いに介入できる異能力と、どんな薬も作ることができる異能力を掛け合わせると、どんな呪いにも効く薬を作ることができる。

そういう異能力だ。


だからそれを使えば、ラファエルさんの聖属性魔法とアインの槍を融合させて、疑似付与(エンチャント)魔法をすれば、あの悪魔に対しても、もっと有利に動ける。そう思ったのだ。



私が歯痒く感じているその間も、戦闘は続いている。前衛のアインと後衛のラファエルさん。とても息ぴったりで、隙が無い。でも、悪魔はその二人を簡単にいなしている。



「あ!」

アインが、悪魔の爪によって傷つけられた。見た感じ、かなり深そうだ。

私がわたわたしていると、アインから離れた血の水滴が、明らかに変な軌道を描く。


「え?」

アインの異能力なのだろうか?明らかに、とんでいった血の水滴は、悪魔を攻撃した。それを、悪魔が蹴散らす。


そして、アインの槍術と悪魔の爪術?の応酬が続いた。振り下ろしたり、突いたり、間合いを詰めたり、逆に距離を取ったり。目まぐるしく立ち位置が変わり、目に見えないほどのスピードで攻撃し合っている。

ずっとアインのサポートをしていたラファエルさんも、どう攻撃したらいいのか、考えあぐねているようだ。



「あ!」

そうしたハラハラする応酬の中、不意に悪魔がアインを攻撃する。それをアインさんが槍で防ぎ、流れるように悪魔に攻撃した。

今までだったら、悪魔は目に見えないくらい早く、その攻撃を避けるだろう。だが、そうしなかった。

アインの槍は、悪魔の左胸に強く突き刺さった。あそこは、心臓がある位置だ――。


けれど、何事もなさそうにアインと話している。え、心臓刺されたよね?がっつりと、刺さっていたよね?!しかも何事もなかったように戦ってるし!どうなってるの!?



でも、やせ我慢だったのか、すぐに倒れた。アインはそんな隙を見逃さず、首筋に槍の穂先を突きつける。それでも、悪魔の余裕綽々ぶりは、消えることはなかった。


その証拠に、すぐさまどこかへ姿を眩ませてしまった。不思議に思ったのは私だけではなかったようで、アインが何かを語っていた。けれど、いつの間にか周囲からの音が聞こえない。こんなに静かだったのに、気が付きもしなかった。


アインとラファエルさんが少し会話を交わし、ラファエルさんが少し落ち込む。そんなラファエルさんを尻目に、アインは私を守っていたものを、なくした。



「大丈夫でしたか?」

「ええ、何事もなかったわ!」

「それはよかったです」

「でも、二人とも息ぴったりだったね、あまりそういうイメージはなかったけど」

「ああ、それは俺がアインに稽古をつけて貰ってるからだな」

「稽古……」

「ああ。ずっとボコボコにされるだけだったけど、なんか悪魔の攻撃、ちょっとは見えたんだよな」

「うん、まだまだだね」

「ちょっとは褒めてくれてもいいんじゃないか!?」

「褒めるよりも叱られて伸びるタイプでしょ」

「ひどい!」

生徒会室では、仲が悪そうだっただけに、仲良さそうに話している二人に面食らった。


「仲、いいんだ」

「俺はこの鬼畜と仲がいい判定されたくない」

「僕、そこまで厳しかったのかな……?なら、もっと厳しくしたら、僕の優しさが分かると思うけど、どう?」

「何でその結果に行き着く?!」

ややしょんぼりとして言う彼の言葉は、全く可愛くなかった。ラファエルさんが、青い顔をして震えている。


「ア、アイン!流石に可哀想だよ」

「サティ、別にラファエルが少しのことをかなり大げさに言ってるだけだから、気にしないでください」

「少し?!少しって言ったか?!一体どこが――ふが」

「サティ、皆さんを待たせているので、早く生徒会室に向かいましょう。恐らく、遅刻です」

アインの言葉に、私がハッとする。


「急がなきゃじゃん!!」

「は、は、へー!!」

「あ、忘れてた」

口を押さえられていたラファエルさんを、アインが解放した。


そもそも、私たちはたまたま生徒会同士という繋がりで一緒にいた私とラファエルさんに、アインが合流した形で一緒に生徒会室に向かっていた。

その時は、かなり早い時間だったから、生徒会室でアインが作ったお菓子と一緒に三人でお話ししようと思っていたのだ。


そもそも、ラファエルさんとあまり話したことがなかったから、この機会に仲良くなりたくて。

でも――。


「ほら、早く行くよ」

「いや待ってって……。と言うか、俺の扱い雑すぎだろ!」

「今更丁寧に接されたいの?」

「悪寒が体中を駆け巡る」

「なら文句言わないで」

このやり取りも見れたから、今は十分かな。

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