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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第四章 不穏な秘密
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共闘

その日は、普通の日になる筈だった。いつも通り授業を受け、生徒会の仕事をし、マティ様に言いつけられた仕事を完遂し。稀に教師の愚痴に付き合う。そんな日々。


けれど、学園の敷地内をサティ、ラファエルと歩いていた。



「お~、いるジャンいるジャン!よかった~見知った顔を追いかけて」

突然聞いたことのない声が聞こえた。一瞬で振り返ると、そこには緑髪の男がいた。覆面で、不気味な気配を漂わせている。


「おっと!アブないな~」

「これを避けますか」

気配を異能力で抹消して、首をナイフで刺そうとした。それをひらりと避けられる。


「なら、これもどうだ?」

「さっきのよりトロいから、簡単だね」

ラファエルの聖属性魔法が飛んでくるが、それも簡単に避ける。僕はその合間を縫って攻撃するが、ぎりぎりで避けられる。


「アイン!俺は聖属性に適性がある、だから共闘しないか?」

「もちろん」

「わ、私は……!」

ラファエルの提案に僕は瞬時に頷く。サティが何か言いかけたが、それを遮る。


「サティ、この円の中から出ないで」

「え、でも!」

「僕たちで何とかできるから」

「安心してろよ、そこで」

僕はサティの周りに円を描き、を異能力で守る。そして二人で相手に向き直る。


「さて、相手は彼岸だ。それも、そこそこ戦い慣れている上に悪魔」

「悪魔!?」

「そう。だから聖属性魔法がよく効く。普通の彼岸よりね」

「あーそうなのか。俺、聖属性魔法が一番痛いから、なんとなく聖属性魔法が彼岸に効きそう、て思っていたけど」

「あっているよ。それに、悪魔の弱点も聖属性魔法だ」

「そんな簡単に弱点バラさないでくれる~?」

僕はしゃがみ、闇属性魔法を使う。亜空間収納から槍を取り出し、構える。


「槍?刀じゃないのか?」

「僕は剣術習う前は、槍術が得意だったんだ。ナイフは後ろから刺すだけだから、特にそれといった技術はなかったし」

「え、ナイフのイメージしかなかった!」

「オレをムシしないでよ~」

今度は悪魔の方から仕掛けてきた。僕は槍でガードする。


「サポートを頼む。僕が前衛をやった方がいいから」

「わかった。当たったらごめんな!」

「気にしないで撃て。僕が全部避ける」

そう言い捨てて、僕は悪魔に槍と前に向けて突貫する。悪魔はバックステップで避ける。悪魔の着地の瞬間に、ラファエルの聖属性魔法が飛んでくる。それも避ける。


「当たったと思ったのに……」

「悪魔は権能と言う能力がある。一定距離、ある程度自分の思い通りにできる能力だ」

「チートじゃん!」

「天使は羽を飛ばせる上、魔法の威力が大幅に上がる。それに、理を作ることも可能でしょ」

「俺もチートじゃん!?」

「僕には、そんな都合のいい能力はないからね。相手に言うことを聞かせるのに特化した能力があるけれど」

「チートしかいない!」

「じゃあそのチートな能力で、吸血鬼を倒して、次はアンタだ」

「させる訳がないでしょ」

悪魔は爪を伸ばして、それを僕に振るってきた。僕は最小限の動きだけで避ける。悪魔が作った隙に、僕は槍を打ちこむが、悪魔の姿が消える。


「瞬間移動……!」

「ほら、どこ見てんの?コッチだよ」

「知ってるよ!」

僕は振り向かずに背後の気配に向けて槍の柄を突き出す。


呪い(カース)

聖火(トーチ)

悪魔が魔属性上級魔法を使う。ラファエルが瞬時に聖属性と火属性の複合魔法で打ち消す。

成程、魔法はいい腕前だね。


「シャドウ」

「ありゃ、見えなくなった」

僕が魔法を使えば、悪魔の視界が真っ暗闇に覆われる。


「ホーリーアロー!!」

「ムダだよ~」

ラファエルの魔法と僕の振り下ろしが同時に避けられる。まあ、僕が異能力を使って気配を消したままなのに、僕の攻撃を不通に避けれているのだから、今更視界を奪ったところで意味はないのだが。


腐食(コロージョン)

聖歌(ヒム)

悪魔の魔法を、ラファエルの魔法が打ち消す。僕は異能力を使った。


「抹消」

「おや?能力が使えない……」

「隙だよ」

「愛の告白かな?」

「?」

「お気づきになってない!」

突然悪魔がおかしくなった。ついでにラファエルも。どうしたんだ、一体?



拘束(バインド)

「避けるに決まってるだろ?」

「浄火」

「当たらないね~」

「チッ」

二対一で飄々としている悪魔に、ラファエルが舌打ちをする。僕が槍を振り下ろす。


「ずっとやられてばっかなのも癪だからね、こっちから行くよ!」

「ぐッ」

「ア、アイン!」

「血操術」

「あ、吸血鬼だった。こりゃ面倒な」

そう言いつつ、爪で僕が飛ばした血を蹴散らしていく。僕は悪魔に素早く刺突を繰り返す。


「吸血鬼って、怪我を負わせると厄介なんだよな~」

「簡単に処理しておいて、よく言う」

「吸血鬼って、かなり弱いでしょ?そこの天使も使い物にならないみたいだし」

「僕を圧倒できない時点で、弱くもないと思うけどね」

「うん、今まで見た吸血鬼より、ずっと強いよ、アンタ」

「そりゃどうも」

僕は相手の攻撃を槍で受け流し、できた隙に槍を刺す。彼岸の能力が使えないお陰で、しっかり刺さった。


「アンタ、何かしたね?」

「それを敵に喋る馬鹿がいるとでも?」

「喋ってくれてもイイんだよ?」

「じゃあ負けてくれます?」

「それはイヤ」

「ホーリーレイ!」

ラファエルが魔法を撃つ。それを悪魔は軽々避ける。


「お話し中だよ?人に話に割り込む男は嫌われるよ~?」

「あんたに嫌われても、痛くも痒くもない」

「悲しいな~」

「僕はすでに嫌い」

「オレなにかしたっけ?」

悪魔は少し困惑気味になったが、気を取り直して攻撃を仕掛けてくる。だが、もう勝負はついていた。


「王手。まさか僕が、彼岸対策を怠っているとでも?」

「あ……コレは、まさか……」

僕が、突然地面に倒れこんだ悪魔の首に槍の穂先を当てる。


「聖水。ラファエルが、聖属性魔法を中心に使ってくれたから、僕が彼岸対策を持っていないように振舞うことができた。ラファエルが無理に接近戦をしないでくれたから、思う存分槍を振り回すことができた」

「全く、普段からあんなにボコボコにしてくれりゃあ、どう考えてもあんたに前衛を完全に任せた方がいいのは分かり切ってるしな。それに、普段から警戒心の塊みたいな男が、彼岸対策してない訳がないだろうし」

得意気に言うラファエルだが、前に彼岸を撃退した時、武器に聖水を塗っていたことを教えていた。


そもそも、ラファエルは僕が槍を持っていることは知っている。刀の方が得意だから、ああいう言い方をしたんだろうが、聖水を塗っているのは槍だけだし、刀を使うとうっかり殺しかねない。



「さて、裏切り者に尋問を行いましょうか」

「う、裏切り者!?」

「あれ、言ってなかったっけ?魔族なのに、邪神側についた存在がいる。こいつも、そのうちの一人だよ」

「それで、裏切り者……」

「そう。本来魔族が属するのは、魔王の下だからね。だからこいつは、魔王陛下を裏切っている」

「成程な、つまり尋問と言うのは……」

「とにかく、拘束するよ」

僕は一旦意識を刈り取ろうとした。しかし、悪魔は不敵に笑う。


「さすがに拷問とかは受けたくないから、逃げさせてもらうよ。グッバ~イ」

「ま、待て!!」

「無駄だよ。もういなくなった」

「でも一体どうやって……」

「時差式の転移魔法陣だろうね。僕の異能力が効いている、という事は、彼岸の力は使えない。そして、転移魔法はとても難しい。だから専用の魔法陣がある訳だしね」

僕は、悪魔がいた場所を睨みながらそう言った。


「なあ、吸血鬼は弱い、とか聞こえたけど、一体どういうことだ?吸血鬼とか、悪魔とかで強さが違うのか?」

ラファエルが、少し不安そうに聞いてきた。僕は、そんな彼の言葉に頷き、こう言った。


「悪魔は、彼岸の中で最も強い。多分、膂力(りょりょく)じゃ、僕の方が圧倒的に負けてるかな」

「え"、簡単に俺たちを吹っ飛ばせるのに!?」

「それは、向こうが鍛えている、と言うのもあるよ。僕だって、並みの悪魔には勝てる。でも、あの男には多分敵わないだろうね」

「じゃ、じゃあ俺は!?」

「龍人の次だね。龍人は、悪魔の次。ちなみに吸血鬼は、下から数えて三番目くらいに戦闘向きじゃないから、頑張って」

僕の言葉に、目に見えてラファエルが落ち込んだ。


「それを聞くと、自分が情けなくて仕方なくなる……」

「僕の場合、異能力があるからね。気にしない方がいい」

僕はそう言うと、サティの守りを解除した。

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