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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第四章 不穏な秘密

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呼び出し

「アイン、ちょっと来い」

授業が終わり、生徒会室に向かおうとした、その時の出来事だった。


「……アインに用事?一旦俺を通して欲しいんだが」

「……王太子殿下、アインを少しの間借ります」

「要件は?」

「…………ここで話せることじゃありませんよ」

「ほう?」

「マティ様、恐らくあの件のことですよ」

僕を呼び止めた教師は、生徒会の顧問だ。将来の予行練習を兼ねている生徒会は、あまり教師が仕事に介入してこない。そのため、ほとんど顔を合わせることはないのだ。


「まあ、いい。だが、貴様のその恰好を何とかして欲しいものだがな」

「善処します」

完璧なアルカイックスマイルで返した顧問――ロレンツォ・ディ・エイデンバークは、マティ様に背を向けた直後、苦い表情をしていた。



「先生、どんな要件でしょうか」

職員室に入るなり、僕はそう切り出した。


「……それをお前にやられると、なんだか背筋が凍る。やめろ」

かなり苦い顔で、両腕をさするロレンツォ。


「……どんな要件、ペス――」

「それを学園の中で言うのはやめろ!!」

そう、彼はペスケ・ビアンケのギルドマスターだ。僕の口をふさぎながら、小声で怒鳴るという器用なことをした。


「全く……いくら大人ぶっていても、中身は子供だな、ギルメンのように」

「僕が大人だって言ったことはありませんが」

「別にいいだろ。細かいことは」

「――ギルドと大きく違いますね、口調とか」

「意識の切り替えかな。――ああ、ラファエルは知ってるからな」

「そうですか」

僕はそれだけ返し、視線で話をするよう促す。



「お前がやったのか?」

「何をですか?」

「あれだよ!アムステルダム公爵子息とオストワルト公爵令嬢の件!」

「残念ですが、僕は何も知りませんよ。ハロルド様が現場を見た時、僕がそこに居合わせたくらいです」

「何で居合わせたのかは置いておくが……本当に違うんだな?」

「はい。――そんなことを聞きに僕を呼び出したんですか?」

「いや……ちょっと個人的な興味だな。本題は別だ」

そう言って、ロレンツォは居住まいを正す。


「ギルドをフィンレー王子に紹介してくれてありがとう」

「いえ、僕は別のことをしていて忙しいので、簡単なことを任せただけですよ」

「それでも、だ。うちの奴らが元気に飛び回っているさ」

「それはよかったです」

どうやら、ギルドを活用してくれているようである。まあ、僕の渡した情報だけでは、王座を取るのは難しいから、そういうことにもなるだろう。



「彼自身、王になるための知識はあるそうです。ただ、力がないだけで」

「確かに、王太子殿下よりはしっかり――失言だったか」

「いえ、事実なので。むしろ、フィンレー殿下が、マティ様よりしっかりしていないのであれば、王座に座らせようなどと、画策することもありませんよ」

「それもそうか」

二人で小さく笑う。そして僕は口を開く。



「それでも、まだ王座に座るためにはまだまだ足りません。ただ僕は、帝王学を学んでこなかったので、そこでのサポートはできません」

「むしろ出来たら上出来すぎだと思うが。まあ分かった。流石に帝王学に手を出している奴はいないからな、そこはまた誰かに頼むとするか」

「でも、ロースタスと言う国が復活するという事は、久遠にとっても、クリスタルパラスにとっても、そしてステラにとっても好都合です。なので、彼らが教えてくれるでしょうね。それに、彼らはロースタスをどうこうしたいなど、思っていないでしょうし」

「そんなもんか?」

不思議そうに聞くロレンツォだが、彼らの性格を考えれば、よくわかる。


「魔族の国は、世界に二つはいらない、というのが皇の見解なので、久遠が乗っ取ることはありません」

「成程な、確か魔族は元々強者至上主義。魔族の国が二つあれば、とんでもない戦争が起きそうだからな」

「その通りです。次に、クリスタルパラス国王は、かなりのものぐさで、国を二つ治めるよりは今の自分の王位を返上したい、と思っているでしょうね」

「なんと言うか……個性的だな」

「最後にステラ――ノア兄さんは、どうせ国王になるのなら、ステラと言う面倒くさい国よりも、有名じゃない小国の王になりたかった、と嘆いているのをよく聞きますから」

「確かに、ステラは面倒くさそうだが、ロースタスはそれ以上に面倒そうな国ではある。そんな国、支配権を貰うどころか放棄するかもな」

時々聞こえるからな、テレパシーで。そういう時は、大量の仕事に追われている時だと知っている。

ミリア姉さんとリズ姉さんに、うるさい!と言われるところまでがセットだ。



「とにかく、あの老害はさっさとご隠居願いたいので、がんばってください、ロレンツォ先生?」

「本当に敬意を払っている敬語なのかが怪しいんだが……」

「ならそのだらしなく着崩した服装を何とかしてください。そうすれば、敬意を払うかもしれません」

「これは俺のアイデンティティだ。今更変えられない」

「……………そうですか」

思いっきり白けた視線を投げかけてやった。

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