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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第四章 不穏な秘密

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緑の妖精

Side Unidentified


「ひィ、ふゥ、みィ……うん、ちょうどだね、毎度アリ~」

オレはサツタバを数えて、ピッタリ報酬分あることを確認した。

満面の笑みを浮かべながら、ポッケに雑にサツタバを仕舞う。


「相変わらず独特な数え方だね~。――また頼むかもしれないから、その時もよろしく~」

目の前にいる依頼人――カーステ()ィス・フ()ォン・マ()ルティン()がオレに依頼した内容にそぐわないくらい、明るい声でそう言った。


「今度は、王太子サマの婚約者か?」

「まさか。それって単なるお前の好みでしょ。俺だよ、俺」

「あ~よく言ってた、メンドくさい婚約者のコトか?あの女も、かなりメンドかったけど」

常に自慢やら文句やら。ツマラナイ話しかしないし、気に入らないことがあればすぐにヒスる。

そもそも貴族じゃないオレが、浪費癖のあるお嬢サマを満足できるワケないのに、ソレにも気が付かない。


「その分報酬は多いでしょ?ほら、お綺麗なハロルドやアインにはできないことだからさ」

「確かに、ハロルドは堅物のお貴族サマ~ていう感じだったし、黒髪黒目だったし、一緒にいた男がアインだな?は純粋だったな~。キスすれば子供がデキる、って思ってそう」

第三者からのかなり常識的かつ純粋な言葉に、ダメージを受けてるあの女の真っ赤な顔は、傑作だったなァ~。


「そんな純粋だった、あの子?まあ、かなり鈍感そうなのは分かるけど」

「現場見ても浮気かどうか、言われるまで気づいてなかったポイし、連れ込み宿知らなかったし」

トクベツ耳イイからさ、外の会話も丸聞こえだったんだよね~。


「あ~想像できるな~。マティアス様大切に囲い込んでるし、幼い頃からそういうの、無縁そうだったしね~」

「ソレに、ピンク髪に白メッシュのあの子、可愛いかった~。口説こうかな」

「一応マティアス様とジェシカ嬢のオキニね、その子」

「婚約者に可愛い護衛に可愛い同級生?ハーレムでも築きたいの?」

「いや、少なくともアインはハーレムの中には入れないでしょ。特別好きなのはわかるけど、男だよ?」

「分かってないな~」

ティティは()()()()だからね、しょうがないか~。



「まァ、次必要なら、またやってあげるよ。ティティからの仕事、オモシロいしね~」

「それはよかった。じゃあ、また」

「グッバ~イ~♡」

オレはティティと別れ、ポッケからサツタバを取り出す。別に、コイン(硬貨)が別にあるしソッチの方がかさばらないため、コインを愛用するニンゲンが多いが。オレはサツタバ独特の重みと匂い、手触りが好きだ。



「ん~イイニオイ♡」

「おい兄ちゃん、悪いことは言わねぇ、その金を置いていきな」

「俺たちが有効活用してやるからよ!」

サツタバのニオイを堪能していたら、キタナイ笑みを浮かべる醜い男たちがいた。


「~」

別に、オレがソイツらの話を聞いてやるギリもない。だから、ムシしてソバを通り抜けようとした。


「おい、聞いてんのかよ!」

「うるさい」

折角のオタノシミの時間をジャマされた。自然と低く地の這うような声が出る。


「ん~ヒトゴロシはマズいでしょ?だから――コレだけで許してあげる」

「イ”ダダダダダダダッ!!!!」

「あ、兄貴!?」

「キミも」

「ギャアアアァァァァ!!!」

「うるさいなァ」

腕を折ったダケなのに。相変わらず、ニンゲンは痛みになれてなさスギでしょ。


「じゃあね~」

オレは、笑顔で痛がる男共をムシし、花街へと歩を進める。



自室に入り、豪華な机に無防備に山積みになっているサツタバに、今日貰ったサツタバを追加する。


「今月も稼いだなァ~」

机には、今月稼いだサツタバを置いている。月が終わる度に、数えながら金庫にしまうのだ。ソレもまた、ツキイチのオタノシミだ。



「ソレにしても、あの男――」

脳裏に思い描くのは、双黒のあの男。特徴的には、皇月影が合うだろうか。けど、なんでこの国に?


ソレに、イメージと随分違う。

皇月影は、聡明ではあるが、誰かに強く意見できない程、気弱だった筈だ。


同じ彼岸でも、たまたま同じ色を持った別人、と考えた方がしっくりくるくらいには。



「ソレを考えるのは、オレの仕事じゃないか」

考えても答えは出ない。オレは考えるのをやめた。


ソレに――。



「まさか同族の気配もわからないなら、ソレほど強力な彼岸でもないだろうしね~」

ソレに月影は、今年で36だ。まだ成人していないとはいえ、ニンゲンの国で生きていれば、ソコソコの性に関しての知識もつくだろう。



オレはそう思い直し、薄緑色の酒が入ったボトルと特徴的なデザインのグラスとスプーンを持ってくる。

グラスに酒を注ぎ、その上に置いたスプーンに角砂糖を乗っける。魔法で水を一滴ずつ垂らすと、角砂糖が徐々に崩れていき、酒が段々と白濁してくる。

ハーブ独特の香りが鼻腔をくすぐり、また強い度数の酒は喉を焼く。


あまりに度数が高いこの酒は、ニンゲンたちを狂わせてきた、悪魔の酒だ。

オレにピッタリな酒。この程度なら全く酔わないので、ストレートで飲んでもイイが、酒の色が変わるのは、いつ見てもオモシロい。



オレは本来の姿に戻り、グッと背伸びをする。

ヤギのようなツノに、トガった耳。横に長い瞳孔、そして先がスペード型の尻尾。


「さて、ホストの仕事でもやるかな」

ニンゲンたちを真似して、発音もナカナカ上達した。久遠の母国語の発音は、魔物の言語と似ているトコロがあるから、ニンゲンの言葉はムズかしいんだよね~。


オレは口元に笑みを浮かべながら、机のサツタバを、ジックリと見つめていた。

最初の方で「あ」と思った方、感想に書いてみてください~

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