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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第四章 不穏な秘密

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四(?)大国家会議

Side Noah


僕は、とんでもない圧に冷や汗をかく。不機嫌そうな老齢の男性が三人、つまらなそうな表情の男性が一人、その中でこの空気に合わない微笑みを浮かべた男性が、一人。


「私はね、もう少し頻度を上げるべきだと思う。――どうかな、クリスタルパレス国王、ステラ国王」

「面倒くさい。この会議をしている間、この私の創作活動が中断されるのだ……!むしろない方がありがたい」

「――僕は、時雨殿に賛成です」

僕の言葉に、次々に反対の言葉が飛ぶ。


「新人が出しゃばるな!」

「そうだ、この会議に初めて出席したひよっこが、自分の意見を言うでない」

「そもそも、我には関係ない。これはもう、おぬしらの問題じゃろう」

「君たちさ、そんなに自分の国を潰してほしいの?」

時雨殿の花萌黄色が、鋭く光る。それに(おのの)くイーストフール国王――エアスト殿、ヴァイド国王――ツヴァイト殿、ゼス国王――ドリット殿。



「そう。この私だって、面倒くさい技術の保護を積極的に行っているのだ。なのに貴様らときたら……!」

クリスタルパラス国王――ジョシュア殿が、三人をきつく睨む。それに情けない声を上げている彼らに、僕は小さく溜息を吐く。


「君たちが、五体満足でその椅子に座れることに感謝すべきだと思うよ。だって、君たちが争っているお陰で、英雄は死に、月影は行方不明。――それで月が死ぬ羽目になったら、どうするの?」

「「「うぐ……」」」

笑顔で毒を吐く時雨殿に、簡単に論破される三人。その光景を見ながら、僕は少し考えた。


月影。時雨殿の末弟で、ゼスに入国したのを最後に、消息を絶った。それに英雄という単語。月影と英雄の間には、何かがある。



「オケディア前国王もさ、それで死んだでしょ。だから、そこの席にステラ国王がいる」

「し、しかしっ――!」

「くどい。君たちの所為で、今”誰を犠牲にこの世界が守るか”という問題になっている。他ならぬ、君たちの所為で」

ドリット殿が反論しようとしたが、それを時雨殿が止めた。


「だから、増やす必要もない会議が増える羽目になる。十年毎にやれば十分。あとはわざわざ顔を突き合わせる必要もない。貴様らが、余計な茶々を入れる度に、会議が増える増える……。もう、黙っておくがいい」

ジョシュア殿が、吐き捨てるように言う。常に、こういう会話の繰り返しだったのだろうか。



「何せ、こやつは――!」

「なら、どうすればよかった?オケディア前国王も、君たちと同じように”約束”を破った。たった、それだけだよ?」

「……」

時雨殿が、楽しそうな表情で腕を組み、三人を見るが、その目は全く笑っていなかった。


僕のことで、言い合っているのは、あまり心地いいものではない。しかし実際そうなのだ。

僕は、オケディア王族の血をひいていない、ただの元平民。これが、今更ながらネックになるのだろう。



「血筋とか、二代だけだろう?なら問題ない。貴様らや、オケディアの先代がやらかしたことに比べればな」

「「「……」」」

「そもそも、今回の会議すら不要だった。前回の会議で、大人しくステラ国王を呼んでおけば、この会話すら不要だ。時雨殿、何故そうしなかった?」

「一応の採決だね。この会議、僕の独断で進める訳にもいかないから」

「フン、時間の無駄だな」

「こういうのをきちんとしないと、自分に返ってくるからね。まあ――英雄を死なせた三国や、英雄の代わりにしようとした組織を私物化した政府を止められなかった国王よりかは、可愛いけれど」

「……」

「皮肉なものだね?下剋上が成功しているんだからね」

微笑みの表情を一切崩さずに、時雨殿はこちらを見る。僕は、押し黙る。別に、下克上なんかしたくてしている訳ではなかったからだ。


「無駄口をたたく前に、会議を進行しろ。次は来ないぞ」

「ごめんね?――じゃあ、始めようか」

浮かべる表情は同じなのに、ガラッと雰囲気が変わる。僕は、自然と身が引き締まった。



「まず、ステラ国王。九星は、英雄の代わりになるかい?」

「……ならないと、思いますね。まだ、僕たちは異能力を完全に引き出せていません。そして、仮に引き出せたとしても――。かなり厳しいと、言わざるを得ません」

英雄とは何か。それについて、なんとなく知っている僕でさえ、こう断言できる。


「だろうね。英雄は、元々イーストフール、ヴァイド、ゼス――ロースタスが対応しているからね。異能力はあくまで、ウィキッド専用の対策。邪神にも効くけれど、別にやりたいのは邪神を弱らせるんじゃなくて、討伐だからね」

「じゃあどうするんだ?うちも、邪神討伐に向いた技術は一切ない。そもそも、九星に必要かどうか……」

「必要だと思います。リズちゃんだって、まだまだ学ぶことは多いと、彼女自身が言っていますし」

リズちゃんは、できることが偏りすぎている。だからこそ、クリスタルパラスでの技術が必要だ。


「そうか。なら、必要になったらいつでも言え」

「ありがとうございます」

「フン、若造が何を粋がっておる。どうせ、邪神討伐なぞ、若造がやっても失敗するのみじゃ……」

「君たちが英雄を保護すれば、月もわざわざ行方をくらましてまで、人体改造に手を染めることもなかったのに。――英雄がいれば、そもそもの場合、全ての問題が解決していた」

「――ッ!」

人体改造という言葉に、思わず体が反応する。


「ステラ国王、不快になったらすまないね」

「いえ、僕は死んでほしいと切に願いませんよ、今更。()()を、見たので」

「過去、か。あの子は、僕のことは恨んでいるのかな」

「僕が見れるのは、映像だけなので、気になるなら本人に聞くべきでしょう」

「優しくて、気弱な子だからね、僕が聞くと、否定する」

悲しそうな微笑みに、僕はなんと返していいか、分からなかった。


「――イーストフール国王、ヴァイド国王、ゼス国王。君たちは、国を立て直して、三国を統一して。いつも言っているでしょ」

「それが聞けないから、ずっと三国なんだろ。もう放っておけ。精霊王はいつも見ている」

「そうだね。はあ、オケディアに続いてロースタスもなくなるのか……エネリシア(クリスタルパラス)はなくならないでよ」

「名前が変わっている時点で、もう手遅れだろ?」

「王族の血が残っている時点で、手遅れも何もないよ。――オケディアは、復活する予定があるから、ロースタスだけか……」

革命のとき、王の血を引いている子は殺さずに育てている。異能力であの子が必要になる未来が見えたからだった。


普通は、前政権の権力者やその血筋は残さない。なぜなら、反乱を起こしたときの旗本になりやすいからだ。

けれど、オケディアはかなり特別な国だ。だからこそ、その普通が反対に悪手になる。



――王になるなら、オケディアみたいな国じゃなくて、名前もあまり聞かない小国の王になりたかった……。



そんな僕の思いは叶わないと知りつつも、あまりのややこしさにそう思わずにはいられなかった。

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