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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第一章 初めの第一歩
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和む

いつも、何度も声を出そうとした。しかしいつも失敗に終わっていた。ほら、今だって。

「――――」

気の所為、か。



「今、声を……!」

ガシッと王太子に肩を掴まれる。



――こわい!いたい!



「あ、すまない」

僕は震えていたようだ。手に力が入らない。物凄く怖かったので、出来るだけ距離を取り、布団で出来るだけ身体を隠す。



「警戒されたな」

「いきなり触るからでは?」

「ハァ?俺はずっとこいつは声が出ない、と言われていたからな」

「……………?――!!」

ついうっかり、声のした方を向いてしまった。そこにいたのは残虐な大柄の―――……。



「!?お、おい!大丈夫か!?」

「ええ!?」

世界が暗転した。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



Side Matthias


「ええーー」


アルフレッドがあっけに取られてベッドの上の住人を見る。そこには黒と金と赤の髪の少年がいた。ついさっきまでは意識があったが、事故でアルフレッドを視界に入れてしまったのだろう。倒れた。

俺は、彼の顔にかかる長い前髪を除けて、その顔を覗き込んだ。



――こうしてみると、推しの寝顔を幼くした感じだな。めっちゃ可愛い。



「暗殺者の様子を見に来たつもりだったけれど、まだ目覚めていないようだね」

そこにいたのは叔父上だった。どうやらアインの様子を見に来たらしい。

「いや目覚めてたぞアルフレッドが原因で気絶した」

「裏切者!?」

「へえ?そうなんだい?」


――すまないな、アルフレッドよ。俺は貴様を売る!


「そもそも殿下はいきなり子供に触って怯えさせてたじゃないですか!!」

「…………気絶はさせてないぞ」

「どっちもどっちだよ。で、どうするの……。傷付けられた、と子供に思わせちゃダメでしょ」

「「おっしゃる通りです」」

「とにかく、アルフはこちらへ。マティは子供の名前を考えておいて」

「え?俺が?」


ゲームのアインの名前はマティアスがつけたのか?いや、そもそも名前なかったんだな?!



「そういえばずっと暗殺者、とか子供、とか吸血鬼、とか呼んでいたが、名前を知らないな」

「向こうの要望なんだよ。なんでも、これから共に過ごすであろう王太子殿下に名付けをして欲しいんだとか」

「媚び売っているのか?」

「さあ?僕からは何とも」



――普通に“絶対零度の司令官”の考えてることが分かんないな。



「――アイン」

「はい?」

「こいつの名前だ。アイン」


まあ、そうだとしたら、ゲームと同じ名前を付けさせて頂く。言い間違えたら可哀想だからな。それに、ドイツ語で1を表す。俺にとっての一番はアインだ。



「分かった。では僕たちはこれで。一緒にいればその吸血鬼――アインも慣れて来るだろうし」

そう言って、叔父上はアルフレッドを連れて出ていった。



「これからよろしくな、アイン」

俺は少し顔を青ざめて寝ているアインの頬に軽く触れた。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



Side 01


あれから一日が経ったようだ。僕がいるベッドの近くで王太子が寝ている。僕はそっと起き出し、体の一部を蝙蝠に変えた。それを外に放つ。

僕と蝙蝠は感覚が繋がっている。そのため、情報収集にはもってこいだ。


僕は蝙蝠から見聞きしたことを整理しつつ、驚きの情報を手にした。



――オケディアが滅んだ?チーズルも?



オケディアは、九星がいるため、革命は絶対に成功しない。革命を起こす前に、06に見破られ、仮に06の目を掻い潜れたとしても、戦闘職のメンバーには敵わない。一人一人が、たった一人で戦況を変える力を持つのだ。ただの人間が叶う訳もない。ということはつまり――。



――革命を起こしたのはむしろ九星。



国の名前もステラ星王国で、九星に関する名だ。いつかやるとは思っていたが、本当にやるとは……。このタイミングということは、僕が人質になっていたのかもしれない。僕が最後にオケディアの様子を探った時は、革命のかの字も無かったから。



――僕は、結局足手纏いだ……。



僕自身、何もできていないことは分かっていた。しかし、()()()()があって、皆が僕に対して、多かれ少なかれ臆病になった。それについては罪悪感が凄かった。同じ彼岸の魔族な筈の05も、僕を矢鱈と心配するようになった。大丈夫か、何か辛いことはないか、とか。僕がそれに頷く度、痛そうなものを見るかのような目で僕を見るようになった。何故なんだろう?声はもう、0()5()()()()()()()()()出てないだろう?



そして僕は再び視線を王太子に向けた。

金髪碧眼の明るい、目立つ容姿はこの国の王族そのものだ。王太子故か、少々傲慢な性格ではあるが、決して民草を蔑ろにしない。恩を仇で返した僕にも優しさを見せた。僕はそこまでされるような人じゃないのに。

人の血を啜ることでしか生き永らえない、人間にとっては気味の悪い存在(吸血鬼)なのに。



「んん……」

王太子が目を覚ました。僕が怯えておらず、冷静であることを見て、安堵していた。



「おはよう、アイン」

「……」



――アイン?誰だろう。



僕が内心首を傾げていると、王太子がああ、と言い、僕に僕が気絶した後のことを説明してくれた。

どうやら、06から連絡があったようで、僕の名前を王太子がつけてくれたようだ。少々複雑だが、この際そうも言っていられない。



「――という訳だ。どうやら“絶対零度の司令官”も名前を考えたらしい。番号じゃなくてノアと呼んで欲しいそうだ。

……番号で呼び合うって嫌な感じがするな」



人間も魔族も普通は番号で呼び合わない。普通じゃないからこそ、嫌な感じがするのだろう。髪の色の意味も知ってそうだし。

そう思ってたら、頭を撫でられた。その手は、暖かかった。



――王太子のこと、もう少し信用しても大丈夫かな?



なんとなくそういう考えが浮かんだ。

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