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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第四章 不穏な秘密

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九星とは

僕は、彼らの罵倒に、何かへの怯えを感じ取った。だからこそ、九星はほとんど存在を隠すことにした。その結果、都市伝説のような立ち位置を得て、ステラ――もといオケディアを混乱させずに済んだ。


世界の危機なんか、言葉を聞いただけでどれほど危険な状況なのかを察す。



どこから漏れたのか。僕の情報管理は的確だった筈だ。だから、どこから漏れたのかが知りたかった。こういう混乱を招くと知っていたからこそ、一般には、九星の目的を知らせなかったのだ。

そもそも、九星の存在すら、一切知らせる気もなかった。それは理由を説明されればわかるし、オケディアの政府が欲を出しすぎなければよかっただけの話だ。


そうしなければ、九星は都市伝説としてまことしやかに語られることもなかったのに。



「アイン、どうやらこいつらは自分が何をしていたのか、理解できないらしい。だから俺が代表で謝罪する。――本当に、申し訳ありませんでした」

殊勝な態度で頭を下げるラファエルに、僕は慌てた。


「……ラファエルが、謝ることはないよ。僕だって、ラファエルに同じことをした。――彼らに同じことはしなかったと思うけれど。でも、ラファエルが謝ることではないよ」

「それでも、だ。俺は――」

そう言って、またラファエルは頭を下げようとする。けれど、僕は頭を下げて貰うような存在ではない。決して。


「君たちが天使なら、僕は何も考えずに同じように罵倒していた。だから――」

「お前の場合罵倒でもないだろ。最初は罵倒だったが、段々――」

「それ以上は、いい。別に、見返りも求めていないし、何かをしてほしい訳でも、償っている訳でもない」

そう、僕は、計画にペスケ・ビアンケを巻き込むことにしただけ。その中で、ラファエルにいろいろと教えているだけなのだ。



「――私は、前世でいじめられてたの」

突然、そんな声が聞こえてきた。そちらに目を向けると、マリーと呼ばれていた女性が、泣きそうな表情で、そんな話をした。


「私は太ってたし、お世辞にも可愛くなかったし。それに陰キャ――根暗で、友達もいなかった。だから、一軍女子に目をつけられた。

あの日々は、最悪だった。何度も死にたい、って思ったし、家にいてもあいつらの汚い笑い声が頭から離れない。親にも相談できなかった。こんなみじめなの、知られたら嫌われる、って思ったから。何よりも、自分がいじめられている、という事実を認めたくなかったかもしれない。

――きっかけは、あったかもしれないし、なかったかもしれない。あの時は死にたい、って思ってた。そういう日々を過ごしていたら、いつの間にか学校の屋上から飛び降りてた。

そしたら、いつの間にかこの世界に転生していたの」

マリーは、時折涙を流していた。耐えて、耐えて、でも耐え切れなくて、という涙だった。着ている服をきつく掴み、痛みに耐えているような姿だった。


その話を聞き、全身の古傷が痛くなった気がした。大丈夫、大丈夫。


「それがどうしたの。でも、今自分はそれ以上のことをしたでしょ。寄ってたかって暴言はいてさ、自分はこんなに過去苦しんだんです、お願い大目に見て?ってか?」

「違う!」

ギルドマスターの言い分に、マリーは髪を振り乱して答える。


「そんなことが言いたいんじゃない!私は、こんな思いをしたのに、自分がこんなことをするなんて……。本当、最低だ……」

そう言って、腕に爪を立てる。その腕には、自傷痕があった。

誰もが口を開かない。彼女のそんな痛々しい姿を、誰もが目を逸らしてみようともしていなかった。



「俺たちは、仲間を得た。だが、それを他者を傷つけるために使ったら、意味がないだろ。――なあ、俺たちは何がしたかった?世界の敵を、倒したいんだろ?」

ラファエルの声が、重苦しい沈黙の中で響く。


「なら、俺からも頼む。協力してほしい。元々、この組織は俺たちが道を外れないように作った組織なんだ。なのにみんなで道から外れたら、意味がないだろ?」

その言葉に、全員がハッとしていた。そうして、口々に謝罪していた。中には、泣きながら土下座している人物までいた。


「いや、土下座は異世界の人知らないだろ」

「僕は知っているけれど……」

「「「「「「「「何で!?」」」」」」」」

ナカーマ!?とか言われたが、たぶん違うと思う。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「……つまり、この世界はその、ゲーム?とやらの中という事?」

「素直に終わり方が複数ある小説、って言った方が早かった説」

「何でそんなこと今言うんだよおおおおぉぉぉぉ!!!!」

「今言え!今言え!まだ意味が理解できていない筈だ!」

騒がしい。いつもこんな感じなのか。そういう視線を送ると、ラファエルが曖昧に笑う。僕はこの表情を知っている。諦めたような表情だ。


「……ある程度は理解しました。でも、不思議だね。なんで、ゲームの物語の中では、九星が過去存在していたのだろう?」

そこが問題なのだ。元々、この世界に九星なんか存在していなかった。それはリーリアに聞いたから、間違いない。


「なんで?今九星あるし、普通じゃない?」

「いや……元々、九星は世界の敵――邪神が無理やり未来を変えた結果、結成された部隊。――ちなみに、邪神と魔王は同一人物ではないので、魔王を倒す、とは言わないでほしい。魔族に殺される可能性がある」

「怖」

「未来って、変えれるんだ……」

「可能か不可能かで言えば、可能。ただ、やらない方がお勧めだね。邪神を例に挙げると、元々の世界――正史というけれど、正史では邪神は倒され世界は無事救われる。九星は、その道中に協力した人物たちだね。

しかし、その倒される未来を知った邪神――これが今の世界だけれど、当然倒した人物を殺すよね?そうして殺した後、同じく正史で世界を救った人物が正史で邪神討伐に協力した人物を鍛え上げることにした。そうして設立されたのが――九星だ」

そう、元々九星なんか必要じゃなかった。世界は案外世界を守ろうとする人物の味方だ。

でも、邪神が未来を見てしまうというイレギュラーが起きてしまった。だから、九星が作られることになったのだ。


「誰が九星をつくったんだ?」

そんな質問に、ラファエルがハッとした表情を浮かべた。


「まさか――」

「たぶんその通りだよ。九星をつくったのは、皇月影。久遠の第九魔王子で現在行方不明。世界中が捜している完璧な論文の内容は、九星の作り方だよ」

その僕の発言に、誰もが言葉を失った。

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