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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第三章 すれ違い

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色褪せた未来

Side Raymond


「おやおや、誰かと思いましたら、貴方でしたか」

わざとらしく建てられた足音に振り返ると、予想外の人物がいた。


「俺のことをよく知っているようだな?」

「そりゃあもちろん。ただ、何故ここに?彼に会いに来たのではなさそうですね」

「ああ。警告をしようと思ってな」

警告。その言葉の冷たさに、少し背筋が緊張する。


「警告ですか。一体どんな内容ですか?」

あくまでにこやかにそう返す。


今ここにウルガはいない。彼――アインに預けて特訓して貰っている。かなり(しご)かれそうだ。



「あいつに手を出してみろ、容赦はしない」

「あいつ、とは?心当たりがなくては、手を出さないとは約束しかねますが」

「ふざけているのか?」

「まさか」

男の声に、怒気が孕むのを感じ取った。アインのようにうまくはいかないな。立場はあくまで向こうが上、という事ですか。



「俺の全てを使ってでも、報復してやる。――一番に、あの龍人の子を拷問して殺してやる。次に――」

「あの子を殺すですって?」

思わず殺気が漏れてしまった。だが、そんな事お構いなしとでもいうように、男は続けた。


「お前が手を出さなければいいだけの話だ。いいか?俺はお前がこの国にしようとしていたことも全て知っている。――ああ、これは俺独自が知っていることだ、あいつからは何も聞かされていない」

「……なぜ知っているのか、は聞かないことにしましょうか」

「ああ、賢明な判断だな」

男はその場から立ち去ろうとしていた。


「もう行くので?」

「ああ。――お前は今のところ、危険人物だからな。釘を刺しに来た」

それだけ言うと、また歩みを進めて――。


「――ああ、そうだ」

振り返った。何を言うのか、私はその口を固唾(かたず)をのんで見守る。


「これはあいつに言うなよ?かなり高性能な結界を張ったんだ。言ったら、どうなるか、分かるよな?」

「ええ、善処しますとも……」

「じゃあな」

男が立ち去り、あたりは無音となった。気疲れを感じ、体を壁にやや預ける。


「純粋な脅威では、彼の方が上でしたか」

実力はアインの方が上なのは間違いないだろう。だが、本気で怒りを買ってはいけないのはあの男だとはっきりわかった。



――こりゃ、迂闊に手を出せなくなりましたね。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



Side Noah


「俺の異能力の覚醒っていつだろうな」

「ゼスト君はもっと後だね。ただ、異能力を使っていると、覚醒は早まるらしいよ」

「ノアが言い切らないのは珍しいな……」

「異能力について、僕だって詳しい訳じゃないからね」

一番詳しいあの人は行方不明、あの子は他国で無毒化した精霊薬を開発していた。



異能力で精霊薬を使って僕やララが暗殺される未来が見えたので、食事に精霊薬が混ぜられる前にオケディアを革命した。


軍の上層部とそこと密な関係になっていた貴族を全員国外追放した。更に、王族は子供以外は密かに処刑した。

奴らも九星を私的利用することに賛成していたし、あの人が行方不明になる原因を作ったのだ。


だが、オケディア王族の血筋が途絶えるは不味い。

それは、この地が持つ意味を考えるととくに。



「にしても、精霊薬って、用法用量守らないとララにも治せない毒になるのか……」

「だから、無毒化した精霊薬が欲しいんだよね。ただ、アイン君が言うには、体が精霊の力に耐えきれないから、その余剰分が毒になる、と言ってたね」

「成程?でも、それじゃあ無毒化は難しいんじゃ……?」

「だんだん毒性がなくなっているらしいんだけどね……」

アイン君の様子を見るに、あまり芳しくない様子だ。どうせ、僕の覚醒は後回しになるだろう。

アイン君の未来は、きちんと僕が異能力を使える条件を満たしている筈なのに、一ミリも見えない。


そして、アイン君の異能力は、抹消。恐らく、条件が満たされた事実を抹消して、未来を見えなくしたのだろう。



ただ、これは単純な異能力の力比べになる。僕の異能力は、覚醒している。アイン君の異能力は分からないが、恐らく覚醒している。

つまり、九星で異能力が覚醒したのは僕を含めて二人。これでは、とても強敵に敵う訳がない。



「俺の異能力、覚醒したらどんなのになるんだろうな……」

「ゼスト君の異能力は、飛び道具が必ず狙った場所に当たる、か。なら、軌道を変えれるとかあるんじゃない?」

「それは強いな。ノアは……条件の緩和か、三日先以上の未来も見える、かな」

「かもしれないね。異能力が覚醒したら、どういう能力になるのか、楽しみだね」

覚醒前と後の異能力が大きく違う、という事もある。異能力の本質が何なのか、それは覚醒前ではわからないこともあるからだ。



「なあ、一体どこまで計画は進んでいるんだ?」

「さあ?」

「は?」

僕の答えに、ゼスト君が呆気にとられた。別に、適当を言っている訳じゃない。


「僕だってわからないよ。一番重要な人の未来が見えないし、セオドアに条件を満たした人はいないから、未来を見ることもできないし」

「それって、問題ないのか……?」

「誰かさんの計画を最後の最後で乗っ取るつもりだからね。それまでに、九星を守りつつ、計画が失敗しないようにサポートする。――結局、それが一番いいの。僕たち(九星)を作ったのは、あの人の計画の内でしょう?」

「あ、確かに……」

「僕たち若造より、生まれてからずっとそのことだけを考えてきた天才が考えた計画なんだ。僕たちの急ごしらえの悪戦より、乗っ取った方が早いし、九星の悲願――邪神討伐がより確実になる」

「俺たちはまだ、邪神を倒すことはできないが、その計画に沿えば、確実に邪神が倒せる実力を身に着けることが可能、か」

「それに、別に最後以外は僕もいい計画だと思ったからね。だから、最後だけちょっと修正するだけ」

「本当に、こういうところは怖いな」

「たまたまこういう計画を知れてよかったよ……。知らなかったと思うと――ぞっとする」

あの日。たまたま見つけたあの人の未来が見えた。そう、全ては偶然の重なり。そのおかげで、僕は全てを知ることができた。


僕は、あの瞬間に異能力が覚醒した。

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