ドラゴンvs九星最強
Side Unidentified
「は……?」
思わず声を上げてしまう。
何故なら。
「彼岸の魔族もただでは済まないドラゴンをあんなにあっさり倒した……?最初に出した種類のドラゴンでも、彼岸を殺したことがあるという話だったのに……」
実際は、数分持った程度。刀が美しいな、としか思っていなかったその時だった。
ドラゴンに切りかかったと思ったら、一気にドラゴンが凍り付いた。そう思ったら、突然沈みだし、跡形もなく消えていった。あんなにも大きかったのに。
私は慌ててドラゴンを召喚する。
一体は、人間の国を踏みつぶし、一夜で滅ぼしたというドラゴン――レッドロックタートルドラゴン、攻撃力と防御力はどんな生物よりも高い。
もう一体――アークグレーターウィンドドラゴンは姿だけなら弱そうだが、強力な風属性魔法を操る。それに、体が小柄な成果、攻撃を当てづらい。更に、空を飛んでいるから機動力がある。
一体一体でもかなり強力なのに、片方はタンクとしてかなり優秀だ。彼がそっちに攻撃している間、もう片方が風属性魔法で背後から攻撃する。
そちらに攻撃しようとしても、ひらひらと躱されてしまう。更にかすっただけでも大ダメージを受ける攻撃を躱しながら、全く当たらない攻撃を躱さなければならない。
だから、かなり苦戦すると思っていた。
しかし、一瞬でレッドロックタートルドラゴンが氷漬けに。それで口をあんぐり開けていると、アークグレーターウィンドドラゴンも、あっという間に制圧してしまった。
レッドロックタートルドラゴンの防御力を遥かに超える攻撃力を持ち、アークグレーターウィンドドラゴンを遥かに超えるスピードを持つ彼。
そんなの、どうやって倒せばいいんだ……。でも――。
「興奮するッ……!」
あんなに美しい笑みを浮かべる彼が、あんなにドラゴンを圧倒できる彼が、絶望の表情を浮かべた時、どれだけ情けなくて美しいのか。どれだけ、興奮するのか。
「ああッ!研究のし甲斐がありますねぇ!!強者の心を圧し折る瞬間……彼の心を圧し折れば、どれほど興奮するんでしょうねぇ!楽しみです……楽しみです!!」
次々にドラゴンを召喚する。貯めていた魔障を使い切る勢いで。
「おイ、オレはいつデルんだ?」
「まあまだ待ちなさい……。彼を観察し、ドラゴンをすべて倒しきったら……その時がお前の出番ですよ」
「ワかっタ」
言葉があまりうまくない少年に話しかける。一見普通の人間のように見えるが、一部鱗がついている。更に耳の形も変わっている。
この子は彼岸の一種、龍人だ。龍人は怪力と頑強、それからブレスという純粋なエネルギーを口から放出する力がある。
この子は研究過程でたまたま生まれてきた存在だ。魔物に人型はかなり少なく、その上人型の魔物を召喚した覚えがなかったから、かなり驚いた。
少し観察し、この子は魔物でないことに気が付いた。なぜなら、魔物は理性がない。だから、感情のままに行動する。
しかしこの子は生まれた時から理性的に行動していた。
研究しながら調べていくと、この子が彼岸の魔族であるという事が分かった。
彼岸の魔族は、戦闘に特化した種族だ。最も戦闘に向いていないという妖狐でさえ、魔族――此岸の魔族は敵わない。
だからこそ、私はこの子を最終兵器にすることにした。どんな強者が来ても、この子を出すことで絶望を味合わせる。
「楽しみにしていますよ――ウルガ」
「ウン」
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Side Ain
次から次に出てくるドラゴン。最初の方は瞬殺ではあったものの、数で押されたらたまらない。更に、ドラゴン自体の強さも強力になっていった。
それ故に、僕の体はかすり傷がほとんどではあるが、確かに傷ついていた。
それに打撲もいくらかしている。見事なコンビネーションにやられて、勢いよく吹っ飛ばされた。
木を何本か折り、一瞬息が詰まった。しかしすぐにその場から退避した。その次の瞬間、僕がさっきまでいた場所から爆音が聞こえた。
ちら、とみるとそこは粉々になっていた。
アークグレーターウィンドドラゴン以上の速さを誇るドラゴンだ。そうなるのは当然だと思った。
魔物は理性はない。だが知性はある。だからコンビネーションができる。大小様々な大きさのドラゴンに囲まれながら、一匹一匹確実に屠る。だが、生まれるスピードに屠るスピードが段々追いつかなくなっていく。
「月夜ノ番人」
小刀からどす黒いオーラが刀の形を作る。
「闇より出でよ、万物を切り裂く悪魔の剣よ!我が敵を切り裂き、呪い殺せ!テルヴィング!」
魔法で一気に殲滅した。邪悪な闇の気配を持つ不気味な剣が、周りのドラゴンたちを次々と突き刺しにいく。
月夜ノ番人は、闇属性魔法、魔属性魔法の効果を上げる。だから、僕は威力の上がった闇属性神話級魔法を放ち、周囲のドラゴンを殲滅した。
「これで異能力にどれほど頼っていたか、気が付けたな……。もう少し、異能力の使用には気を付けよう。あと、吸血鬼の力もか」
衝動はない。あまり力を使わなかったからだ。もう少し力を使えば、もっと簡単に倒せただろうか。
ずっと感じていた魔障が一切感じられない。これで打ち止めだろう。
半日はかかった。天高く昇っていた太陽が、すっかり傾いてしまっていた。
僕は気づいていた。気配が近づいていることに。
「アンタ……こコデしネ」
「へえ?碌に言葉も話せない分際で?――いいよ、君も彼岸らしいし、力比べしよう」
僕は冷たい視線を龍人の少年に送りながら、刀を握りこんだ。




