プロローグ
初投稿です!!
Side soldier
俺はオケディア王国の一卒兵だ。つい最近、軍に志願した。この国は昔、弱小国家で、戦争とは無縁の国だった。だからといって、平和ではない。ただ単に力を持たない弱者だっただけだ。それも今は昔。今は周囲の国家を腕っ節で従えられるほど強くなった。俺はそんな軍に憧れを抱き、最近ようやく夢が叶った、という訳だ。
「っと、危ないだろ、どこ見て歩いてんだ!」
「……」
俺は、ぶつかってきた腰の高さくらいしかない黒髪――所々に金と紅の髪が見えるが――の少年に文句を言った。その少年は俺を見上げ、じっと見つめる。長い前髪の所為で瞳は全く見えない。その上始終無言なので、薄気味悪かった。
「な、なんだよ」
「おい!お前!そこをどいて差し上げろ!その方は英雄様だぞ!」
俺の先輩が焦ったように俺の肩を引いた。少年はそんな俺たちを一瞥すると、そのまま歩き去っていった。
「あの、あの子供は一体……?軍服も見たことないものでしたが」
ひどく鮮やかな深紅がはためいたのが俺の目を引き、少年の持つ雰囲気も相まってひどく不気味に思えた。
「あの方は、英雄様だ。一度戦場に出れば、その戦いは必ず勝ちになる。9人の天才のみで構成された部隊、九星を知っているか?」
「いえ……」
「ああ、最近入ったのか。説明するとな、九星は一人一人がその辺の将軍より功績を挙げている、化物部隊だ。暗殺者、狙撃手、賢者、聖女、狂戦士、司令官、重戦士、盾、鍛冶師。これらのエキスパートが所属している。彼らは単独行動を許されていて、滅多に2人以上では戦場に立たない。それだけ強く、現場では英雄と称えられている」
俺はその嘘のような説明に、ぎょっとしながら先程の少年が消えていった方向を見る。
「あの方は、暗殺者だ。九星の英雄様にはそれぞれ二つ名があって、あの方の二つ名は、“鮮血の死神”だ。敵地に潜り込み、次々に敵上層部を屠っていく。あの方が枕元に現れなさることは、死を意味することからつけられた二つ名だ」
「かなり凄いですね」
「ここだけの話なんだがな、あの方は、俺よりも古株だ。まだ10にもいっていらっしゃらない。噂によると、後御二方、10歳より前に入軍なさった方がおられるとか」
「そんな早く……」
「それから少しして、我等が国、オケディア王国は勝ち始めた。この国の勝利は、あの方々の功績そのものだ。九星の方々は、俺よりも年少の方ばかりだ……。本当に尊敬するよ」
そんなに凄いのか。俺はあの少年がそこまで強いということを、信じきれなかった。
「名前、は何ですか?」
ふと気になったので、聞いてみることにした。
「名前……?」
先輩が少し黙り込む。それに俺は嫌な予感を抱きつつ、もう一度問うた。
「ええ、名前です。あの少年の名前」
「ああ、あの方の名前はね、強いて言えば――」
当たってほしくない、そう願ってしまう。しかし、現実は残酷だった。
「特別実験体―AM―OD―01。よく、”鮮血の死神”と呼ばれていらっしゃる」