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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第一章 初めの第一歩

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プロローグ

初投稿です!!

プロローグ



Side soldier


俺はオケディア王国の一兵卒だ。つい最近、軍に志願した。

この国は昔、弱小国家で、戦争とは無縁の国だった。

だからといって、平和ではない。ただ単に力を持たない弱者だっただけだ。


それも今は昔。今は周囲の国家を腕っ節で従えられるほど強くなった。俺はそんな軍に憧れを抱き、最近ようやく夢が叶った、という訳だ。



とある日の訓練の帰り道。豪華な城の中庭が見える回廊を、先輩と一緒に談笑しながら歩いていた。

もうすっかり夜も更け、涼しい風が、頬をくすぐる。


戦争が近いからと、いつもより熱が入った教官の愚痴を言いつつ、寮部屋に帰っていた時の出来事だった。




「っと、危ないだろ、どこ見て歩いてんだ!」

「……」

俺は、ぶつかってきた腰の高さくらいしかない黒髪――所々に金と紅の髪が見えるが――の少年に文句を言った。


その少年は俺を見上げ、じっと見つめる。長い前髪の所為で瞳は全く見えない。その上始終無言なので、薄気味悪かった。



「な、なんだよ」

「おい!お前!そこをどいて差し上げろ!その方は英雄様だぞ!」

俺はその少年に気圧され、どもってしまう。

しかし、それを悟られまいとしていると、先輩が、焦ったように俺の肩を引いた。

俺は、肩に食い込む先輩の手に引っ張られ、通路の端に寄ってしまう。


そして、先輩は俺の頭を掴み、一緒に頭を下げた。


「失礼いたしました!ほら、お前も!」

「し、失礼いたしました……」

俺は、先輩に怒られ、渋々謝罪する。

少年はそんな俺たちを一瞥すると、そのまま歩き去っていった。



「あの、あの子供は一体……?軍服も見たことないものでしたが」

ひどく鮮やかな深紅が、夜の涼やかな風ではためいたのが、俺の目を引き、少年の持つ雰囲気も相まってひどく不気味に思えた。

俺がやや呆然としていると、先輩はあの少年について、説明してくれた。



「あの方は、英雄様だ。一度戦場に出れば、その戦いは必ず勝ちになる。9人の天才のみで構成された部隊、九星(アストロロジー)を知っているか?」

「いえ……」

初めて聞く名だ。あすとろろじー?というか、たった一人で戦争を勝ちに導く存在など、いる訳がない。

この国は、異能力者という、他国にはいない存在がいるが、それでもそこまでの能力はないのだ。


「ああ、最近入ったのか。説明するとな、九星は一人一人がその辺の将軍より功績を挙げている、化物部隊だ。暗殺者(アサシン)狙撃手(スナイパー)賢者(セージ)聖女(セイント)狂戦士(バーサーカー)司令官(ストラテジスト)重戦士(ヴァンガード)(タンク)鍛冶師(スミス)。これらのエキスパートが所属している。彼らは単独行動を許されていて、滅多に2人以上では戦場に立たない。それだけ強く、現場では英雄と称えられている」

俺はその嘘のような説明に、ぎょっとしながら先程の少年が消えていった方向を見る。


正直、あの少年が、そこまでの存在だという事を、信じきれなかった、というのもある。

だがそれ以上に、先輩の説明には実感、というものがあるような気がした。



「あの方は、暗殺者だ。九星の英雄様にはそれぞれ二つ名があって、あの方の二つ名は、“鮮血の死神”だ。敵地に潜り込み、次々に敵上層部を屠っていく。あの方が枕元に現れなさることは、死を意味することからつけられた二つ名だ」

「かなり凄いですね」

こんな、ありふれた感想しか述べることができない。


あの小さな少年には全く似つかわしくない、物騒な二つ名。それが、なんだかこの国の歪さを象徴しているように感じた。


「ここだけの話なんだがな、あの方は、俺よりも古株だ。まだ10にもいっていらっしゃらない。噂によると、後御二方、10歳より前に入軍なさった方がおられるとか」

「そんな早く……」

「それから少しして、我等が国、オケディア王国は勝ち始めた。この国の勝利は、あの方々の功績そのものだ。九星の方々は、俺よりも年少の方ばかりだ……。本当に尊敬するよ」

先輩の声色には、尊敬、崇拝の色がにじみ出ていた。大の大人が寄って集って、あの10にも満たない少年を持ち上げているその図は、狂気を感じさせられた。



「名前、は何ですか?」

ふと気になったので、聞いてみることにした。それだけ凄いのだから、きっと名前もよく知られているだろう。

そんな、思い付きのような考えからくる質問だった。


「名前……?」

まさか、まさかな。先輩が少し黙り込む。それに俺は嫌な予感を抱きつつ、もう一度問うた。


「ええ、名前です。あの少年の名前」

「ああ、あの方の名前はね、強いて言えば――」

当たってほしくない、そう願ってしまう。しかし、現実は残酷だった。



「特別実験体―AM―OD―01(オーワン)。よく、”鮮血の死神”と呼ばれていらっしゃる」

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― 新着の感想 ―
すごい考えつくされてますね!
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