09
急な吐き気で目が覚めた。
「ウッ…」
すぐにメガネをかけ、手で口を押さえながらトイレへ駆け込んだ。吐き出せるものを全部吐いた。
「はぁ…はぁ…」
しばらくすると落ち着いた。そこで気がついた。裸だった。服に着替え口をゆすぎ、部屋へ戻った。
「はぁ…もう寝るのはいいや」
窓を見ると、薄暗くなっていた。
「もう朝か。厩舎行くか」
ベットを見ると、いびきをかいて寝ているウルフがいた。
「全く…まじで耐えれん」
そう言い残し、部屋を出た。朝の城は静かだった。
「筋肉痛といい…寝不足といい…」
フラフラだった。厩舎に行くと、朝の運動時間なのか、兵士たちが馬の世話や馬房掃除をしていた。
「おはよう…」
クロの声に皆が顔を向けると、びっくりした。
「おは…クロ様!どうしたんですか!?」
「顔真っ青ですよ…」
心配していた。
「いや…ハハ。大丈夫…」
フラフラながらも、椅子に腰掛けた。
「早く起きてしまったから、朝の運動見にきた」
「そうですか。みんな準備出来ているので、これから乗り運動です」
調子が悪い馬を除き、全ての馬が運動に出た。残った兵士たちは他の準備に取り掛かっていた。
「久しぶりだな。朝の運動見にくるの」
馬場で運動しているところを、クロは眺めていた。二つの大きな馬場があり、一つは馬場馬術。一つは障害と分かれていた。ふと、馬場馬術で運動していたルナがクロを見つけた。
「クロ様。ルナがクロ様に会いたがっているので、行ってもいいですか?」
昨日の若い兵士がルナを動かしていた。
「いいぞ」
ルナはクロに近づいたが、クロを見た瞬間ルナはクロの変貌ぶりにビックリした。
「…馬にビックリされるって。俺…やばい?」
若い兵士は言いにくそうに喋った。
「は…はい。ゲッソリしていますよ。クロ様」
「そ…そうか。とりあえず、怪我なく運動してきな」
「はい」
運動に出ている馬の様子を眺めつつ、朝の冷たい風に当たっていた。
「今日は気持ちいいな…」
数十分ほどで運動が終わり、馬達が厩舎へ引き上げて行った。
「すまんが、ルナに乗ってもいいか?」
「はい。大丈夫です。終わるまで馬場の外にいます」
若い兵士は、ルナから降りた。クロはルナに跨り、馬場を走らせた。
「ルナ。今度の体育大会。一緒に頑張ろうな」
その声にルナは鼻を鳴らした。一通り走り終え、馬場の入り口に向かった。
「お疲れ様です」
クロはルナから降りた。
「待たせてごめんな」
「いえいえ」
厩舎に向かい洗い場に繋いだ。
「今度の体育大会。ルナで出ようと思ってるんだ」
クロが若い兵士に話しかけた。
「お身体大丈夫ですか?」
「あぁ。大丈夫。心配してくれてありがとう。君は何に出場するんだ?」
クロは体育大会の案内状を見た。
「私はマラソンに出ます」
「えぇ!マラソン!?馬じゃないの?」
「はい。生きていた時、ランナーだったので…」
若い兵士は照れくさそうに答えた。
「意外だな。頑張ってな」
「ありがとうございます。でも、馬術が午前で午後からマラソンなんですよ。ルナの馬付きしてもいいですか?」
意外な提案でクロは驚いた。
「本当に?嬉しいけど…コンディションとか整えなくていいのか?」
「大丈夫です。むしろ、やりたいです」
クロは少し考えた。
「ふむ…いいだろう。むしろありがたいよ。じゃぁ、お願いするね」
クロは手を差し出した。
「はい!よろしくお願いします」
若い兵士はクロの手を取った。
ウルフはクロの部屋で寝ていた。
「ムニャムニャ…あ…ヨダレが…」
ヨダレを手で拭った。
「あれ…クロ?」
見ると、クロがいない。ベットにはクロとウルフの服が散乱していた。すると、クロが部屋に入ってきた。
「あ。起きたのか。おはよう」
「クロ…どこ行ってたの?」
「馬見に行ってた。てか、服着ろ。見苦しい」
「失礼ね」
ウルフは服に着替えた。クロは椅子にどっかりと座った。
「筋肉痛だわ。ほんと、鈍ってる」
「でしょうね。朝食は私が作るわ」
「あぁ。頼む」
ウルフは朝食を作った。
「今日は、特に予定はないのか。ウルフ。少し稽古に付き合ってほしい」
「ん?いいわよ。夜の方も…」
「それはいい。夕方にまた馬術の練習するから」
テーブルに朝食を並べた。
「いただきます」
クロはスープを飲んだ。
「で、今日の稽古はどうする?基礎から?」
ウルフはパンをかじった。
「あぁ。そうだな。体を慣らすところからするよ」
朝食を終え、クロとウルフは稽古場へきた。
「しばらくは木刀でするわよ」
ウルフはクロに木刀を渡した。
「あぁ」
握り具合を確認した。クロは素振りで体を温めていった。
「なだ、動きな鈍いね」
「あぁ。多分、今お前とやり合ったら俺負けるわ」
「うん。見ててわかるもん。でも、あんたとやる時は完全復活か夜の営みだけよ」
その発言にクロはゾッとした。
「ちょっと!なんでゾッとするのよ!」
「え…夜の営みはもういい…」
「なんでよ!」
「お前は激しすぎるんだよ!」
ハッキリ言った。が。
「あれで激しい!?まだまだよ!まだあれ五割しか出してないからね!?」
恐ろしい発言だった。
「ウヘァ…」
「何よ。その反応」
クロはもう呆れた。
「とりあえず、稽古に打ち込むよ」
しばらく素振りを続けて、身体が温まった。
「それじゃぁ。とりあえず体作りからだから、しばらくはストレッチと筋トレメインだね」
「だな。多分懸垂もそんなにできないかもだし」
そう言うと、クロは鉄棒にぶら下がり、懸垂したが十回で終わってしまった。
「やば…」
「さ、やるわよ」
ウルフの補助のもと、しっかりストレッチとトレーニングをした。
「はぁ…やばいわ」
クロは汗だくだった。上の服を脱いだ。
「まぁ、クロならすぐ戻るわよ」
ゆっくりと立ち上がった。
「とりあえず、シャワー浴びてくるよ。風邪ひくし」
クロは稽古場を後にした。
「…」
クロの後ろ姿にウルフは何も言えなかった。
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