05
「はぁ…多いわ…」
ウルフは書類に目を通した。
「兵士の申し出と、新しく入る人の選抜と…」
すると、一人の兵士が入って来た。
「失礼します」
「どうしたの?」
「実は、数名がここを去る時が来ています」
そう言うと、ウルフに名簿を渡した。
「そうだね…寂しくなるわね」
「はい…私もお世話になったので…」
そう言うと、兵士は何処か寂しそうだった。
「君はずっと居たい?」
その問いに、兵士は驚いた。
「えっ…実は…はい」
「ふーん。聞かせてよ。書類見るのもめんどくさくなったし」
ウルフは兵士に椅子に座るように促した。
「ここに来る時さ、約束はしたと思うの。生まれ変わって新たな命になる時は幸せを約束するって。でも、ここに居たい理由は?」
「実は生きていた頃、親からの虐待で幼くして亡くなりました。でも、ここに来て周りに恵まれてすごく楽しいんです。でも、過ごして行くうちに新たな命に生まれ変わって幸せってと思いまして…」
「なるほど」
「生まれ変わって幸せを掴むより、ここで幸せに過ごした方がいいかなって思ってしまうんです」
ウルフは笑顔で兵士の頭を撫でた。
「君がそうしたいならそれでもいい。実際、私もあなたと同じ。だけどね、もし気持ちが変わったらまた言いに来て。気持ちはよく変わるもの。迷って当然よ」
その声に、兵士は安心した。
「わかりました。ありがとうございます」
「もしさ、ここに居たいならさ。新しく入ってくる兵士たちの教育はお願いね」
「はい!」
そう言い、兵士は出ていった。
「まぁ、そう言う子もいるよね…」
またウルフは書類に目を通した。
「叔父さん!なんで…」
クロの目の前でライトが斬られている所で目が覚め、体を起こした。
「はぁ…はぁ…」
外を見ると、夜だった。悪夢で食いしばっていたのか、口を切ってしまい血の味がした。
「俺は…弱い…」
メガネをかけ、何かに取り憑かれたかのように身体が動いた。ベットから出て、手甲鉤を取った。
「…」
部屋を出て外へ向かった。城は静かでクロの足跡が響いた。城の門の前にたどり着いた。
「こうするしか強くなる道がない…」
大きく深呼吸をし、城の外へ一歩踏み出した。
「交代の引き継ぎしたし…ちょっとクロさま!?」
後ろから兵士が叫んだが、クロには届いてなかった。しばらくすると、クロの影が動いた。
「来たか…」
手甲鉤をはめたー影がクロの背後に立っていた。それも複数体。
「久々に…」
影はいっせいにクロに目掛けて攻撃をして来た。クロがいるこの世界。灰色の世界。ここはあの世とこの世の境目の世界。日が昇ってる時は何もない灰色の地面が広がっているだけ。だが、夜になると一変。影が襲いにかかる。死んでいるものは特に何もないが、生きている人間が夜この地へ踏むと、影が殺しにかかってくる。
「チィッ…」
なんとか避けていった。攻撃しても影は消えるが、また新たに影が現れる。
「俺でも…」
攻撃をしようと手甲鉤を振りかざした瞬間、背中に激痛が走った。
「うっ!?」
その隙に影がクロの腹に殴り込みを入れた。
「ぐぅ…」
しかし止まってる暇はない。次々と影がクロに目掛けて攻撃をしてくる。
「避け切れねぇ…」
その光景を門番の兵士が見ていた。
「やばい…ウルフさんに知らせないと!」
兵士は走って城へ入った。ウルフの部屋まで走って行き、強くノックをした。
「なに〜。今寝てたのに…」
ウルフが扉を開けた。
「ウルフさん大変です!クロさまが!」
「ん…クロ…?寝てるでしょ?」
ウルフはまだ寝ぼけていた。
「てか、君さ門番でしょ…?なんでここへ…?」
「クロさまが影と!」
そこで目が覚めた。
「はぁ!?あの馬鹿。数名兵士をかき集めて!急いで門へ集合して!」
「わかりました」
兵士は走って行った。ウルフは急いで武器である鞭を準備した。
「くっ…」
攻撃をかわしていったが、全部をかわせなかった。いつの間にかこめかみから血を流していた。
「いつついたんだ…?」
血を見た瞬間、クロは逆上した。一瞬にして影を切り刻んだ。新たな影が出て来ては、攻撃される前に切り刻んだ。
「俺は…」
すると、背中に衝撃を感じた。
「ぐ…」
見ると、背後にいた影がクロの背中に膝蹴りを入れていたのだ。そのままクロは倒れてしまった。
「まずい…」
なんとか起き上がったか、影がクロに目掛けて攻撃を仕掛けてくる。
「チッ…」
悔しさのあまり唇を噛み血を流した。クロはもう動けなかった。とその時。クロの腹に何かが巻き付いた。
「ん!?」
驚く暇もなくクロは引っ張られた。
「ヒットしたわ!」
ウルフは勢いよく鞭を引っ張り、クロを門の中へ入れた。待機していた兵士たちがクロをキャッチした。
「急いで治療室へ!早く!」
ウルフの呼びかけに、兵士たちはクロを抱えて走った。ウルフは門の外を見た。そこには何もなく、水平な地面が広がっていた。
「俺…」
「クロさま。今治療しますからね」
担ぎ込まれている中、クロは気を失った。
「クロ。こんな所で寝てたのか」
その声にクロは起きた。
「叔父さん」
クロは大学の図書室で眠ってしまっていた。
「勉強はいいことだが、もう遅い」
窓を見ると、もう夜だった。
「あぁ。ごめんなさい」
本を片付けた。
「クロ。少しいいかな?」
「なんでしょうか?」
クロはライトの方に向いた。
「君は頭もいいし、強い。でも、たまに冷静さをなくし我を通そうとする」
「は…はい。おっしゃる通りです。でも、なかなか治らないんですよね…」
クロは苦笑いした。
「まぁ、性格だから仕方がない。でも、君の周りにはいい人がたくさんいるから、頼ってみるのもいいぞ」
「いや…いつも頼りっぱなしで申し訳ないですよ…」
「そうか?むしろ、私や城の兵士。それにウルフはもっと頼ってほしいと思うぞ?」
「えぇ〜本当!?」
「本当だよ。私なんて、君が危ない目にあったら命に変えてでも守りたいと思ってるもん。それだけ、君が可愛いんだよ。あの時の君なんて、一人暗くてボロボロの状態だったじゃないか」
ライトはクロの幼少期を思い出していた。
「それがさ、こんな立派な好青年に成長して私は嬉しいし、誇りに思うよ」
ライトは笑顔でクロに話していた。
なんだろう。久しぶりに温かみが感じれる…
クロはそう思った。すると、白い光がクロを包んだ。
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