04
夢を見た。
「叔父さん…」
クロはもう動けなかった。ライトは飛んできた二人に対抗して行った。クロが灰色の世界へ沈みかかると、最後にライトはクロに声をかけた。
「…」
クロは何を喋っていたのか分からなかった。直後ライトは背後を取られ斬られてしまった。ライトを斬った人はクロの知っている人だった。
「叔父さん!なんで…」
クロはそこで目が覚めた。もう夜になっていた。
「うっ…クソが…」
背中に激痛が走った。それと同時に、激しい後悔がクロを包んだ。何かが決壊しそうだった。
「なんでこんな急に…」
すると、ウルフが入って来た。
「クロ…だいじょぶって…どうしたの!?」
ウルフが慌ててクロのところへ駆け寄った。クロの目が赤く腫れていた。
「ウルフ…俺…」
「怖い夢見たの?大丈夫よ」
クロの背中を撫でた。ボロボロと涙が溢れ出した。
「思い出した…叔父さんを殺したやつを…」
ウルフは横で頷いていた。
「俺の…親だ…」
ウルフは驚きつつも、クロの話を聞いた。
「俺は…親に撃たれたんだ。動けないところを、叔父さんが…」
手で顔を隠した。
「クロ。辛かったね」
ウルフは優しくクロを抱きしめた。
「クロ。大丈夫よ。落ち着くまで私はいるよ。泣くだけ泣いて」
息を殺しながら涙を流していた。
「やっと寝たわね」
落ち着いたのか、クロは眠りについた。
「なんでこんな十字架背負わないといけないのよ。悪いことした?クロが…」
ウルフは部屋を出た。
「クロの気分の上下激しい。もう、どうしたら」
ウルフも悩んでいた。
「これ以上無理させたら、クロ…死んじゃうし」
ウルフの部屋に入り、ベットに大の字にダイブした。
「…」
ウルフも眠った。
翌朝。ウルフは静かにクロの様子を見にきた。
「クロ…」
クロもその声に気がついたのか、目を覚ました。
「ウルフ…おはよう」
「大丈夫?調子」
首を横に振った。
「身体が動きにくい…」
「そんな日もあるよ。ご飯食べれる?」
「あぁ。食べるよ」
「わかったわ。今作ってくるね。キッチン借りるよ」
ウルフはキッチンでお粥を作った。クロの体を起こし、お粥をクロにわたした。
「ありがとう…」
クロは一口食べた。
「どう?」
「うん。うまい」
元気がなかった。
「ゆっくりでいいよ」
クロの背中を撫でた。お粥を食べ終え、クロはまた布団に入った。
「大丈夫?」
「大丈夫だ。ありがとう」
「ううん。ゆっくり休んで」
ウルフは部屋を出た。クロは眠ろうにも、悪夢にうなされる恐怖で眠れなかった。
「…」
無理やり体を動かし、起き上がった。
「俺…どうしたらいいんだ…」
無気力の中、考えようにも何も思い浮かばない。すると、窓を叩く音がした。
「ん?」
見ると、一羽のカラスが窓を突いていた。
「待ってろ…」
なんとかベットから出て、ゆっくりと歩き窓を開けた。カラスは心配そうにクロを見つめ、椅子の背もたれにとまった。
「久しぶりだな…」
クロも椅子に座ると、カラスがクロの耳元でクチバシを動かした。
「そうか。よかった。あの子には危害がなくて…」
カラスを撫でた。カラスはどこか寂しそうに鳴いた。
「大丈夫だ。心配してくれてありがとう。でも、しばらくは動けない。こうして遊びにきてくれると嬉しい。みんなにもそう伝えておくれ」
カラスにオヤツを与えた。クチバシでオヤツを持ち、カラスは飛び立った。
「いい気分転換になったな」
クロはそのまま机に置いてあった本を取った。
「寝たくないから、これで気を紛らわすか」
そのまま読み始めた。
「クロ。調子大丈夫?」
気がつくと、お昼になっていた。
「もうこんな時間か…」
「ちゃんと休んでてよ」
ウルフはクロから本を没収した。
「寝たくないもん…」
ウルフはため息を吐きつつ、本を片付けた。
「でも…悪夢にうなされてたら、寝たくないよね。昼食べる?」
「うん…お粥以外がいい…」
「わかったわ。じゃぁ、野菜スープはどう?」
「それでお願いします…」
キッチンに向かい、たくさん野菜が入ったスープを作った。
「クロ。出来たわよ」
クロの前に野菜スープを出した。スプーンで一口すくい、飲んだ。
「うん…うまい」
「よかった」
ゆっくりと野菜スープを飲んだ。
「さっき、カラスが来てさ。あの子、大丈夫だって。特に危害は無さそうだ」
「そう。それはよかったわ。あの子は、唯一の生き残りだもんね…」
「あぁ…」
スプーンを止めた。
「すまん。もういい…」
「わかったわ。大丈夫?」
「うん…」
ウルフは食器を片付けた。その間クロは外を眺めていた。
「はぁ…」
大きくため息を吐いた。
「ずっとため息じゃん。外行く?」
「行く」
ウルフの誘いにクロは乗った。
「久しぶりに、馬たちに会いたい」
「そうだね。行こ?」
ゆっくりと城を歩き、馬がいる厩舎へ向かった。厩舎では、兵士達が馬のお世話をしていた。
「クロさま。お疲れ様です。お身体は大丈夫でしょうか?」
一人の兵士がクロに声をかけた。
「大丈夫だ。ありがとう。馬達の様子を見に来た」
「そうですか。馬達はみんな元気です。寂しがってた子もいるので、会ってあげてください」
「わかった。いつも馬の世話ありがとうな」
クロとウルフは馬達に会った。
「寂しかったな。ごめんな」
何頭かの馬はクロに顔を擦り寄せていた。最後の一頭になると、馬は前描きをして嘶いていた。
「わかってるよ。ルナ」
そこには漆黒の馬がいた。長い立髪を揺らしていた。額に手をやると、馬はクロに顔を近づけた。
「待ってたろ。ヨシヨシ」
馬は小さく鳴いた。
「怪我が治ったら、また乗りに来るよ」
クロとウルフは厩舎を後にした。
「みんな元気そうでよかったね」
「あぁ。兵士たちが一生懸命お世話してるからだ。ありがたいよ」
ライトの部屋に戻り、ベットに横になった。
「ウルフ。寝たくない…」
強烈な睡魔がクロを襲った。
「でも、寝ないと。治らないわよ」
「わかってるが…」
瞼が重たくなった。
「何かあったらすぐ来るわ」
その声でクロは眠った。それを見守り、ウルフは部屋を出ていった。
いつも読んでいただきありがとうございます。
誤字脱字の報告、いいねや評価よろしくお願いします