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03

また同じ夢を見た。背中を斬られた所で目が覚めた。

「はぁ…はぁ…」

汗と呼吸が荒い。外を見ると、夜中だった。

「クッソ…」

体を起こし、またベットから降りた。すると、扉の横にある姿見が目に入った。

「…」

無理やり包帯を外し、背中を写した。すると、月光が差しはっきりと背中の傷が見えた。

「…!?」

あまりの酷さに言葉を失なった。傷口は深く、骨まで達していた。へたり込むように床に座った。

「は…はは。俺は、弱い。何にも守れなかった。俺って…」

すると、ウルフが入ってきた。

「クロ!何してるの!」

「あれ…ヒールの音が…あ…」

ウルフはたまたまシューズを履いており、足音に気づかなかった。

「何包帯取ってるの!また出血したらどうするの!起き上がれるなら、ベットに横になって」

渋々クロはベットに横になった。ウルフは綺麗な包帯とガーゼを準備した。

「ウルフ…傷口見てしまった」

その言葉にウルフは手が止まった。

「うん…すごく酷い。よくこれで麻痺とか残らなかったと思う。普通は下半身麻痺か全身麻痺…」

また手を動かした。消毒し、包帯を巻いた。

「大人しくしててよね」

「…」

ウルフは部屋をでた。

「…大人しくしてられっかよ」

ベットから出、魔法で竹刀を出した。

「痛いけど…こうでもしてないと」

激痛を堪え、素振りをした。全く動いてないからか、すごく硬い。一回一回の素振りを丁寧にした。

「クッソ。ウルフにバレたら…」

背中の包帯から滲み出て来るのがわかった。しかし、手を緩めなかった。

「強くならないと…」

汗が止まらない。一瞬気を抜いた瞬間、糸が切れたように床に倒れた。

「ウッ…」

限界だった。

「バレる前に…」

木刀を素早く魔法で消した。すると、強烈な眠気が襲ってきた。

「はぁ…俺はいつになったら…」

そのまま眠ってしまった。朝方、ウルフが部屋に入ってきた。

「また転げ落ちたのね」

クロをベットに戻し、またガーゼと包帯を変えた。

それから、毎日悪夢にうなされて、起きている間はウルフに警戒しながら竹刀を素振りすることを数日繰り返した。


「なんか…治り遅すぎるな…」

ウルフは心配していた。

「あの…」

一人の兵士がウルフを訪ねた。

「どうしたの?」

「今日の人員配置書を持ってきました」

ウルフは手渡された書類を目にした。

「うん!よろしく」

「それと…」

「どうしたの?」

「ここ最近、医務室の前を通ると、悲鳴と何か振っている音?がするんですが…」

ウルフは驚いた。

「ふーん。君、ありがとう。ちなみに何時ごろ?」

「ランダムですね…」

「わかった。ありがとう」

兵士は去っていった。

「振っている音は。わかるが…悲鳴…?」

ウルフはクロの行動が気になった。夜になり、クロの部屋をのぞいた。

「うーん。普通にベットで寝ているわね…」

部屋に入ると、寝息を立てているクロがいる。ふと、クロの手を見た。

「ん…!?」

よく手を見ると、皮が剥け血豆もたくさんできていた。

「コイツ…私に逆らうとか、いい度胸じゃない。ただ、悲鳴の原因は…」

すると、クロがうなされていた。呼吸も荒く、汗もかいていた。

「離せ…」

ウルフはその光景を見た。

「クロ。だいじょ…」

悲鳴と共に、クロは飛び起きた。

「はぁ…はぁ…」

「クロ…大丈夫?」

裸眼だが、そこに誰が居るかわかった。

「ウルフか…ウッ!」

背中の痛みでクロはうずくまった。

「大丈夫!?痛み止め打つよ」

ウルフは持っていた痛み止めをクロに打った。しばらくすると、痛みが治った。

「クロ…眠れてないの?」

クロはそっぽを向いた。

「あなたの行動…バレてるよ?」

一瞬ビクッとなった。

「兵士が悲鳴と何か振っている音がするって聞いてね。悲鳴は…今見てわかったけど」

ウルフはクロの腕を取った。

「イッ!」

「あんたね、怪我してるのよ!何考えてるの!」

ウルフは怒った。

「別に…いいだろ…」

「あんたの手当てしないわよ!ライトさんがあんたを生かしたのに、あんたは何してるの!」

「…」

クロは何も言えなかった。

「あんたが居なくなったら、この城どうするのよ。あの子はどうするの」

「…すまん。たださ、俺弱いんだ。だから、稽古をしたい。寝ている場合じゃない」

ウルフは椅子に座った。

「あいつに斬られた夢を毎日見てて、苦しい。負けて悔しい。それで、目が覚めている間はずっと素振りをしていた」

クロは頭を抱えた。

「そうだったのね…クロ。ちょっと外の空気吸いに行かない?気分転換に」

そう言い、ウルフは車椅子を取ろうとした。

「いや、自分の足で行きたい」

「…わかった」

クロはメガネをかけた。ウルフに支えてもらい、ゆっくりと歩いて部屋を出た。

「大丈夫?」

「あぁ…久しぶりに…城を歩くよ」

ゆっくりと歩き、庭へ出た。月明かりで庭が照らされていた。

「いいな」

庭に設置されているベンチにクロとウルフは座った。

「少し落ち着いた?」

「あぁ…」

風が心地よかった。

「ウルフ…毎日ありがとうな…」

クロがポツリと呟いた。その言葉にウルフはクロの背中をバシッと叩いた。

「イッ!」

「も〜やだね〜。当然じゃない。クロったら。昔から見てるもん。私からしたら歳の離れた弟みたいな者だし」

「ウルフ…痛い…」

「ごめんねー」

ウルフは笑っていた。ウルフが笑った姿は久しぶりに見たように感じた。

「早く、怪我を治したい」

「だったら大人しくしててよね。あなたの怪我教えてあげましょうか?背中の重傷に銃弾の貫通傷。まぁ、内臓にダメージ無かっただけでもありがたいと思いなさい。あと、凍傷だけど、コレは良くなったわ」

聞いてクロは真っ青になった。

「俺…やばいな」

「だから大人しくして欲しいのに。ただ、背中…なかなか治らないのよね」

「素振りの影響…?」

「それもある。だけど、本当に遅すぎる。誰にやられたの?」

クロは深く深呼吸をした。

「同級生だ。身動きが取れないところを背後から斬られた。斬られる時に言われたよ。『今まで調子乗った罰だ。死ぬ前に苦痛を味わえ!』てな。毎晩、それの無限ループだよ」

「…何か、魔法でもかけてたのかしらね。でもさ、クロって調子乗ることしてたの?」

クロは考えた。

「いや…?してないぞ。大学も首席だし、毎日通ったし」

「だよね。あなたは真面目だもん。調子乗ることしないもんね」

クロはどこか疲れていた。

「ここに戻ってきてから、まともな睡眠取ってないかも…」

クロはため息をついた。

「あ、じゃぁさ。医務室出てライトさんの部屋で寝れば?いずれクロの部屋になる予定だったし」

「そんな急に…叔父さん死んだばかりだしそれは…」

「いいんじゃない?落ち着くところで休んだら少しは変わるかもよ?それに、治る物も治るかもよ?」

ウルフの提案をのみ、ライトの部屋へウルフに支えられて来た。

「ライトさんが亡くなって以降、換気するとき以外は入ってないけどね」

扉を開けると、広いライトの部屋が広がった。

「叔父さん…」

クロをベットへ連れて行き、座らせた。

「もう寝ちゃいなよ。ちゃんと休んでね」

布団に入ると、どこか落ち着いた。

「クロ。おやすみ」

「うん…おやすみ」

ウルフは部屋を出ていった。ベットにライトの匂いがまだ残っていた。その匂いに落ち着いたのか、久しぶりの安眠をした。

気がつくと、もう朝になっていた。

「…悪夢見なかったな。それに、なんだか身体が軽い気が…」

メガネをかけ、体を起こした。すると、ウルフが入ってきた。

「おはよう。調子はどう?」

「よく眠れたよ」

「そう。よかった。朝ごはん食べる?」

「あぁ。食べるよ」

ゆっくりと椅子に座り、机にはお粥と味噌汁が置いてあった。

「久しぶりじゃない?ご飯食べるの」

クロは味噌汁を一口飲んだ。

「うまい…」

「でしょ。私だってちゃんとできるもん!」

「ウルフが料理できるとは…」

その言葉にウルフは思いっきりクロの背中を叩いた。

「イッ!」

「失礼ね!これでも、生きていた時はちゃんと自炊してたわよ!」

「…すんません」

黙々と食べた。

「ご馳走様でした…」

「あら。全部食べれたのね。偉いじゃない」

ウルフは食器を下げた。

「大人しく寝ててよ」

食器を持ち、部屋を出た。耳を澄まし足音が遠くなって行くのを確認した。また魔法で竹刀を出し、握ったが。

「イッ!」

なぜか握れない。手を見ると皮が剥け、血豆だらけだった。

「俺はコレ合わないな…」

竹刀を戻し、手甲鉤を魔法で出したが。

「…」

刃がボロボロで欠けていた。

「夜…脱走するか…」

手甲鉤をしまった。久しぶりのライトの部屋。大きな本棚に入ってるたくさんの本を眺めたり、書籍を確認した。引き出しを開けると、たくさんの資料が入っていた。確認をすると、兵士の行動や設備の様子などの記録用紙ばかり。

「叔父さんらしい」

用紙のあちこちにコメントや指摘が書いてあった。引き出しに用紙を戻し、本棚から一冊本を取り出した。

「寝てばかりは飽きたから、本でも読むか」

取り出した本は、龍の骨格についての本だった。ベットに戻り、本を読んだ。

しばらくすると、ウルフが入って来た。

「クロ。お昼持って来たわよ」

クロは本を閉じた。

「ありがとう」

「大人しくしてるのね。偉いわ」

ウルフは机にクロの昼食を準備した。

「何読んでるの?」

「龍の骨格についてだ。一応、叔父さんから学んではいたが、勉強し直しだ」

椅子に座り、スプーンを持った。

「いただきます」

「しばらくはお粥よ。自分でもわかってると思うけど」

お粥を一口食べた。

「うん。うまい」

「よかった。熱もだいぶ安定してるよね」

「言われてみればそうだな」

スプーンを進めた。

「食べ終わったら、ガーゼと包帯交換するわよ」

「あぁ」

お粥を食べ終わり、服を脱ぎベットに横になった。

「外すわよ」

包帯を外し、ガーゼを取った。

「まだ全然…」

また新しいガーゼに交換し、包帯を巻いた。

「また大人しくしててよね」

ウルフは部屋を出ていった。

「夜…抜け出して、稽古場行くか」

クロは布団に潜り眠った。

気がつくと、深夜になっていた。ゆっくりと体を起こし、ライトの部屋を出た。廊下をゆっくりと歩き、ウルフの部屋の前を通るといびきが聞こえた。

「あぁ…寝ている」

まだ足取りがおぼつかない中、稽古場へ向かった。丸太を用意し、手甲鉤をはめた。

「…っ!」

丸太を斬り裂こうとしたが、裂くことができず刃は丸太で止まった。

「まじか…」

丸太から手甲鉤を抜き、もう一度裂こうとするも丸太で止まった。

「もう…一から体を鍛え直すしかないのか…」

手甲鉤を抜き、代わりに竹刀を出した。

「痛いが、一から…」

握る痛みに耐え、素振りをした。一つ一つ確かめていったが、全てが衰えていた。

「…」

ただ素振りをするではなく、動きに注目して素振りをした。気がつくと、日が登ろうとしているのか、あたりが薄暗い。

「まずい…バレたら…」

クロは急いでライトの部屋へ戻ろうとしたが、何せ怪我が酷いから普通に走ることもできない。

「やばい…」

一生懸命に移動し、ウルフが来る前になんとか間に合った。

「ふっふー」

椅子に座った。

「シャワー浴びたいが…絶対に痛いだろうな」

すると、ウルフが部屋に入って来た。

「おはよう!」

「おはよう。ウルフ。シャワーって…地獄だよね?」

その質問に何を勘違いしたのか、ウルフが急に照れ始めた。

「え…その…も〜。シャワーだけじゃダメよ。ちゃんとお風呂に入らないと…」

「…ん?」

「背中綺麗に流すし…頭も綺麗に…」

ウルフの顔が赤い。

「誰がお前と一緒に風呂入るんだよ。第一、お前は女じゃないだろ…」

クロは呆れた。

「失礼ね!コレでもちゃんと女よ!」

クロの背中を叩いた。

「イッ!」

「あら、やだ!クロったら。汗かいてるじゃない。まさか…?」

「いえ…ちゃんと寝てました」

「まぁ、痛み覚悟の上で入ってもいいわよ?」

かなりクロは悩んだが、腹を括ってタオルを持った。

「ウルフ。絶対に入るなよ。ただ、上がったらの手当はお願いします…」

「わかったわよ。も〜思春期なんだから」

「一応大人だからな?」

服を脱ぎ、包帯とガーゼを外した。

「うわ…」

傷口から血と組織液が滲み出ていた。とりあえず傷口に水がかからないように頭を洗い、唇を噛みシャワーを浴びた。

「んぐっ!?」

傷口が滲みて激痛だったが、なんとか終わりタオルで拭いた。

「ウルフ…頼む…」

ウルフが向かうと、ゆっくりと着替えをして疲れているクロがいた。

「シャワーで疲れる人初めて見たよ。よく我慢したわね…」

立っているのもやっとなのか、フラフラだった。クロをベットへ連れて行き、傷口を綺麗にした。

「大丈夫?」

「あんなに滲みるとは思ってもなかったよ…」

もうヘトヘトだった。綺麗なガーゼと包帯を巻き、服を着せた。

「今日も安静よ」

「俺…今は動けないよ。本も読めない…」

クロは布団に潜り込んだ」

「でしょうね。ゆっくりおやすみ」

ウルフは部屋を出ていった。


いつも読んでいただきありがとうございます。

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