16
「クロ。いいリフレッシュしてるかしら」
城の窓からウルフは夜空を眺めていた。
「はぁ。今日も疲れたな。でも、生きていた時よりずっといい夜だな」
すると、一人の兵士が声をかけた。
「ウルフさん。お疲れ様です」
「お、お疲れ様。調子どう?」
「はい。調子は大丈夫です。城の見回りも特に異常なしですし、施設設備も異常なしです」
「そう。ありがとう。そろそろ寝るわ。みんなもゆっくり休んでね」
「ありがとうございます」
兵士は去っていった。ウルフは体を伸ばしながら部屋へ戻った。派手な服を脱ぎ、裸になった。タオルを持ち、シャワーを浴びた。
「気持ちいい…」
体を拭き、長い赤髪を束ねた。裸でベットに横になった。
「これが気持ちいいのよね。いい事をライトさんから学んでよかったな」
ウルフは疲れていたのか、そのまま眠った。
目を覚ますと、太陽が昇っていた。
「やべ…寝過ぎた…」
床に散乱している下着を取り、布団の中で着替えた。部屋を出て城を歩くと、兵士たちが掃除や稽古に励んでいた。
「今日もみんな元気だね」
一通り見回り、クロの部屋に入った。窓を開け、部屋を換気した。
「ライトさんの匂い…もう無いな」
どこか切なく感じた。
「さて、私も稽古するかな」
ウルフは部屋を出た。すると、クロの机に置いてあった本が風でページがめくれた。
「…」
一つの丸太にクロは集中した。風が吹いた瞬間、丸太は粉々になった。手甲鉤には丸太の破片がついていた。
「まだまだだな」
手甲鉤から丸太の破片をとった。ふと手甲鉤を見た。
「あぁ…ボロボロだな」
刃が欠けており、凸凹していた。
「新しいの作るか」
部屋に戻り早速新しい手甲鉤を作る準備をした。
「どうしようかな…」
紙を取り出し、デザインを描いた。
「ワイヤーも使いやすいように…後、ちょっとかっこよくでもいいな。刃も少し大きく」
出来たデザインは、持っていた手甲鉤より少し大きな漆黒の手甲鉤になった。
「うん。これでいくか。切れ味は、出来てから調整するとして」
デザインを床に置き、クロは何かを唱えた。すると、デザインから実物が出てきた。出てきた手甲鉤をはめ感触を確かめた。
「ちょっとサイズ小さいかな。少し削るか」
魔法で出したヤスリで手甲鉤のはめる部分を削り調整した。
「…うん出来た」
さらに魔法で砥石を出した。
「刃をしっかり研いでっと」
三本ついている刃を丁寧に研いでいった。
「よし。我ながらいいな」
漆黒の手甲鉤の刃が反射でクロを映し出した。手甲鉤をしまうと夕方になっていた。
「時間の流れが早く感じるな…」
キッチンに行き、適当に食材を出して料理した。
「まぁ、いっか」
野菜と肉を炒め、適当に味を整えて皿に移した。
「いただきます」
黙々と食べた。食べ終えると、クロは深いため息を吐いた。
「本当に、のんびり過ごせてるな」
食器を片付け、シャワーを浴び体を拭いた。
「ウルフだったら、裸で寝そうだが…俺は無理だな…」
服に着替えた。ベットに座り、頭を真っ白にして何も考えないようにした。
「…」
ベットに横になって天井を眺めた。ふと、あることを思い出した。
「俺…なにか忘れてたな。叔父さんに頼まれたあの子を守ることを…」
ここ最近、稽古と体育大会に夢中になって忘れていた。しかし、もう夜だ。
「明日、カラスに聞くか」
そう言い、メガネを外してクロは眠った瞬間、すぐに目を覚ますとあたりが薄暗くなっていた。
「もう朝か…」
メガネをかけた。外を見ると、朝焼けに一羽のカラスが飛んでいた。
「お。来たか」
カラスはクロ目掛けて飛んできた。窓を開け、カラスを迎え入れた。
「おはよう。調子はどうだ?」
カラスはクロに擦り寄った。
「よかった。ごめんな。最近の状況聞けていなくて」
カラスはクロの耳元でクチバシを動かした。
「うん…よかった。ありがとう」
カラスをキッチンへ連れて行き、冷蔵庫からおやつを取り出した。それをカラスに与えると、カラスは嬉しそうに食べた。
「また頼むな」
クロはカラスを外に放った。
「無事に生きていてくれよ。俺が迎えにいく日まで…」
クロはカラスを見送った。
それから数日後。クロは城へ戻った。
「クロ。おかえり」
部屋にフッとクロが現れた。
「あぁ。ただいま。いいリフレッシュになったよ。ありがとう」
クロは椅子に座った。
「顔色も良くなってるじゃない」
ウルフはどこか安心していた。
「まぁ、好きなことしてだだけだし。後普通に稽古もした。おまけに俺の武器も新しく作り直したよ」
そう言うと、漆黒の手甲鉤をウルフに見せた。
「あら、かっこいいじゃない。ライトさんの好きそうな感じ」
「ワイヤーを使いやすいようにしたかったんだ。前のは刃だけしかついていなかったけど、ワイヤー通す穴を作った」
「ふーん。で、今日はこれからどうする?」
クロは立ち上がった。
「新しい武器で稽古がしたい。手合わせいいか?」
ウルフは口角を上げた。
「ええ。もちろん。やりたくてうずうずよ」
クロとウルフは稽古場へ向かった。ウルフは鞭を手に持った。
「クロ。かかってきなさい」
クロは手甲鉤をはめた。
「…」
一瞬静寂が走ると、クロは一気に飛び出した。ウルフは鞭のグリップでクロの攻撃を受けた。
「あら。いいじゃない」
「この鞭頑丈すぎるだろ」
クロは一度距離を取り、再度ウルフに攻撃を仕掛けた。
「じゃぁ、攻撃していくわ」
ウルフが鞭を振るった。クロはその攻撃を手甲鉤で受けていた。しかし、ウルフの鞭捌きが上手いのか、なかなかウルフに近づけれない。
「私に近づけれるかしら?」
鞭捌きが加速した。
「チッ…」
クロも手甲鉤で鞭を受け続けた。クロは冷静に鞭の動きを注意した。
どこかに隙はある…
攻撃を受け続けると、クロは気づいた。攻撃のパターンに。
「よし…」
息を一気に吐き、ウルフに急接近した。
「無駄よ!」
鞭がクロの顔面に飛んできた。
「…っ!」
クロはそれを紙一重でかわし、ウルフの鞭を持っている手を思いっきり手甲鉤で殴った。
「イッター!」
ウルフがのけぞった所を背後に周り、首元に手甲鉤を突きつけた。
「攻撃パターンが同じだから、隙が見つけれたよ」
「あら…わかった?でも避けれるようになったわね」
手甲鉤を下ろし、閉まった。
「だいぶ取り戻してきたんじゃない?」
ウルフも鞭を片付けた。
「いや。まだまだだ。俺は弱い」
「もー。悲観しすぎ」
ウルフはクロの頭を撫でた。
「あんたは、強くなってるよ。あいつらより人一倍努力している」
「…」
「汗かいたし、一緒にシャワ…」
「絶対嫌だ!」
「えー」
「とりあえず。今日はありがとう」
クロは部屋に戻った。
「もう…一緒に入りたかったのに…」
ウルフはトボトボ稽古場を後にした。
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