15
「もう朝か…」
クロは目を覚まし、メガネをかけた。昨日いつベットに入ったのか覚えていなかった。
「昨日は楽しかったからな…」
ベットから出て水を飲んだ。
「さて、行くか」
指を鳴らすと、クロは消えた。
「いつ以来だろう」
そこは、クロのもう一つの部屋。城からかなり離れている。城とは違い木造の部屋だった。ベットルームにある丸い窓から太陽を見た。
「やっぱここは落ち着くな」
どこか心が癒された。ベットに大の字に横になった。
「そういえば、この部屋…いつ作ったっけ…」
クロは昔を思い出した。
クロが高校生の時。
「叔父さん。実は…欲しいものがあるんです」
城でクロはライトに話しかけていた。
「ん?なんだい。珍しいね」
ライトは椅子に座るように促した。
「実は…部屋が欲しいんです」
「部屋?城にならいくらでも…」
「いえ。自分一人だけの空間の部屋が欲しいんです」
「ほう」
ライトは少し考えていた。
「贅沢だと思ってるんですが…」
「いや。贅沢じゃないよ。私なんてアパート暮らししてたもん。一人暮らししたい年頃じゃ。んで…この世で部屋借りるか?」
「それも考えたんですが…」
そう言うと、クロはとあるデザインを出した。
「自分なりに考えた間取りです。電気がなくても部屋が明るい設計です」
あまりの出来栄えにライトは驚いた。
「クロは本当に何でもできるな。まぁ、いいんじゃないか?」
「で…ここで住みたいなと思って」
「ここ!?ここって灰色の世界か!?」
ライトはびっくりした。クロは小さく頷いた。
「何もない空間が好きで…」
「いやわかるが…あ、できなくはないぞ。それに。夜に灰色の世界の地面にいなければいいだけだ。扉だけ出しといて、部屋だけ別空間って感じで作れるぞ」
ふとライトは考えた。
「別に…こんな大きい城…作らな…」
「いやいや。俺は城も好きですよ。だけど、自立って言えばいいんですか。やってみたいなと思ってて」
「いいとおもうよ。クロも成長した証だ。やってみなさい」
「それで叔父さんと二人で作って、今に至るか…」
ゆっくりと体を起こし、キッチンに向かった。
「久しぶりに甘いものでも作るか」
色々な食材が書かれている本を取り出した。そこに手を当てると材料がでてきた。材料を揃え、数時間かけてクロは料理した。
「ふぅ。できた」
オーブンからタルトを出し、粗熱を取っていた。
「待ってる間に…」
クロは色々な果物を出した。包丁で器用にカットした。
「本当に、料理は俺のストレス解消だな」
そう思いながら何処か楽しんでした。タルトにフルーツやクリームをいれた。
「…うん。久しぶりだが、出来はいいな」
フルーツタルトが完成した。カットし、皿に乗せた。お茶を淹れてテーブルに置き、ゆっくりと座った。フルーツタルトを一口たべた。
「うん。うまい」
お茶を飲み、ほっと一息吐いた。
「落ち着くな。本当に、ここは俺の大事な場所だな」
また一口食べた。
「叔父さんと一緒に食べたかったな」
フルーツタルトを食べ終え、お茶を飲んだ。
「よし。片付けて本でも読もう」
食器を片付け、残ったフルーツタルトを冷蔵庫に入れた。本棚に入っている本を眺め、一冊を取った。
「今日は基礎でもやるか」
封印学部で学んでいた本を再度読んだ。所々訂正が書いてあった。
「懐かしいな。数学の教科書も、教科書自体が間違ってるのもあったし。これは…何で訂正したんだ?」
クロは一から読み直した。
「あぁ。ここのスペルが違ってたんだった。間違った通りに唱えたら、効力が弱くなるから訂正したんだった」
次のページを開くと、珍しく訂正がなかった。
「よし。探してみるか」
ノートを用意し、本当に訂正がないのかを探した。ひたすらノートに書き続け、気づけば夕方になっていた。
「うーん。やっぱ訂正はないかー」
ノート一冊分埋まってしまった。
「ふーん」
椅子にもたれた。
「久しぶりに頭使ったな。甘いもの食うか」
机に蝋燭を置き、火をつけた。冷蔵庫から残りのケーキを出した。
「うーん。全部行こうかな」
お茶を用意し、残りのケーキを食べた。
「贅沢だな。でも、いつ以来だ?」
お腹が空いていたのか、あっという間に食べ終わった。
「…まぁ、いっか」
お茶を飲み、一息した。
「さて、片付けてシャワー浴びるか」
食器を片付け、着替えを用意しシャワーを浴びた。
「…」
少し考え事をしたが、考えるのをやめ体を洗った。タオルで体を拭き、着替えた。
「ふぅ…」
ベットに座り、月を見た。
「今日は満月だな。きれいだな」
何も考えずにしばらく月を眺めた。
「さて、寝るか」
ベットに横になり、メガネを外した。そのままクロは眠ってしまった。
朝日がクロを照らした。
「もう…朝か」
メガネをかけた。ゆっくりと体を起こし、ベットから出た。
「気持ちのいい朝だな」
キッチンに向かい、フライパンを出した。火をつけ、油を入れた。卵とベーコンを取り出し、熱したフライパンに入れた。卵が半熟になったところで火を止め、さらに盛った。
「よし」
パンを出し、椅子に座った。
「いただきます」
パンを食べ、半熟の卵を割った。黄身をパンに塗り食べた。
「ほう。なかなかいけるじゃん」
朝食を終え、食器を洗った。
「さてと。今日は何しようかな」
体を伸ばした。外を見るとよく晴れていた。
「ウォーミングアップでもするか。だらけてたら体が重くなるし」
外に出て、軽く体をほぐした。
「ふぅ…」
魔法で丸太を数本だし、地面に適当に置いた。手甲鉤をはめ、目を瞑り意識を集中した。ふと目を見開き、一瞬にして全ての丸太を全て粉々になった。
「まだ動きが重いな…」
粉々になった丸太を片付け、また丸太を出し手甲鉤で切り刻んだ。それを何回かすると、手に血豆ができた。
「あぁ…本当に一から体を作っていかないとな」
部屋に戻り、手を綺麗に洗ってから血豆を潰した。シャワーで汗を流し、着替えてキッチンに向かった。
「さて、何か食べるか」
本をペラペラめくった。
「肉…食べるか」
ステーキ肉を出し、塩胡椒を振ってからフライパンで焼いた。
「いい音だ」
火を通し、包丁でスッと肉を切った。皿に盛り、テーブルに置いた。
「いただきます」
クロは肉を食べた。
「うん。いい火加減」
あっという間に食べ終え、食器を片付けた。ベットに横になった。
「もう夜か。一日があっという間だな」
窓から見える夜空を眺めた。
「この夜空を龍と一緒に飛びたいな」
ポロッとライダーになる憧れを夢見た。ライダーになるには、二つある。元々生まれた家系がライダー一族で、龍の繁殖にも力を入れており、お互いが赤ちゃんの頃から成長していく。もう一つは、野生の龍と信頼を築き上げ、ライダーとして契約を結ぶと言うものだ。
「といっても、俺みたいな奴がライダーは無理か。そもそも龍を見たことはあるが、日常では見ないしな」
深いため息を吐き、クロは眠った。
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