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「さて、体育大会始めるよ!」
広間には兵士たちが集められていた。司会はウルフがしていた。
「まず、クロの挨拶よ」
クロは驚いた。俺?と指を刺していた。
「さっさとやって」
ウルフは小声でクロにマイクを渡した。
「えぇ…っと。急に挨拶言われて困惑していますが。今日は待ちに待った体育大会です。怪我のないように十分注意して、今日は楽しんでいってください。夜には、宴会を予定していますので楽しみにしていてください」
「はい!」
兵士たちはいっせいに返事をした。競技がどんどん行われる中、クロはドレッサージュコートに着替え、ルナの馬装を整えた。
「クロさま。頑張ってください」
クロはルナに跨った。
「あぁ。頑張ってくるよ」
ルナを進め、待機馬場でウォーミングアップをした。ウォーミングアップ中に、馬場馬術に参加している兵士たちの様子を伺った。どの兵士たちも人馬共に一流の動きをしていた。
「みんな、レベルアップしてるな」
しばらくすると、クロが呼ばれた。
「よし。ルナ行くか」
ハットを被り直し、ルナを入り口に進めた。クロが合図をすると、エレキギターの音が響いた。音楽に合わせて、ルナも動き出した。
「どうか、無事に終われますように」
ウルフや兵士たちが固唾を飲んで見守っていた。しかし、そんな心配をよそにクロの手綱捌きでルナは華麗に動いた。お互いにフォローするその光景は人馬一体そのものだった。見ているうちに、ウルフと兵士たちは安堵していた。
「クロさま…良くなった」
「クロったら。いいじゃない…」
あっという間に演技が終わると、拍手で沸いた。ハットを取り、礼をした。
「ルナ。ありがとう。ナイスフォローだったよ」
ルナを称えた。馬場を出ると、若い兵士が出迎えてくれた。
「クロさま。凄かったです」
「いや。ルナのおかげだ。それに、君のおかげでもある。本当にありがとう」
「クロさま。ありがとうございます」
ルナから降り、鞍を外した。ルナの漆黒の馬体から白い汗が流れた。ドレッサージュコートを脱ぐと、ワイシャツも汗で濡れていた。
「俺たち、真剣だったんだな」
改めてルナを褒めた。ルナを洗い場へ繋ぎ、汗を流した。
「そういえば、君のマラソンの準備は大丈夫か?」
「あ…クロさまを見てたら、忘れてました」
「大丈夫だ。ルナは俺が綺麗にするから、マラソンの準備をしてきなさい」
「すみません」
若い兵士は頭を下げた。
「いや。むしろここまで付き合ってくれて、ありがとう。ルナの手入れ終わったら、マラソン見に行くから頑張れよ」
「はい!」
若い兵士は去っていった。クロはルナの体に水をかけた。
「お互い、汗ひどいな」
ルナの汗を流し、馬房へ戻した。
「さて、俺も着替えてみんなの応援するか」
部屋に一旦戻り、綺麗な服に着替えた。窓からマラソンをする兵士たちがウォーミングアップをしていた。
「そろそろだな」
クロは急いで応援へ駆けつけた。
「位置について…」
一人の兵士がピストルを構えた。
「間に合った」
クロは急いで来た。
「クロ。遅いよ」
ウルフが迎えてくれた。
「ごめんごめん。着替えてた」
すると、パンッと乾いた音が響いた。マラソンを走る兵士たちはいっせいにスタートを切った。
「いけー!」
クロは大声で叫んだ。
「すごいな。君」
若い兵士は必死で走り、一位に輝いた。クロは若い兵士を労った。
「ありがとうございます…」
若い兵士は息が切れ、汗が尋常じゃなかった。
「みんなも良く頑張った!」
クロは皆に拍手すると、全員で拍手をした。
「さーて。次は私達よ!」
ウルフと複数人の女性?兵士が現れた。みんな奇抜な衣装だった。
「身体は性別ないけど、心は女よ!」
音楽がなるとウルフと一緒に華麗なダンスで、みんなを楽しませていた。
「ウルフって…こんな動きできるんだ…」
クロは唖然と見ていた。兵士たちもノリノリだった。
そして、無事に体育大会は終わった。
「閉会の挨拶〜」
ウルフはクロを指差した。また?と言う顔をしながらも、兵士の前に立った。
「え〜と。みんな。今日はお疲れ様でした。怪我の報告もなく無事に終わった事にホッとしています。今日の体育大会でお互いに仲が深め合ったと思います。また、このようなイベントができたらやろうと思いますので、よろしくお願いします。さて、この後は宴会になります。ハメを外さないように。と言う事で、体育大会はこれにて終了です。お疲れ様でした!」
兵士たちは拍手を送った。
大広間に場所を移り、宴会がスタートした。
「それじゃ、かんぱーい」
ウルフの声に皆が乾杯をした。クロはお酒が飲めないので、ジュースを飲んだ。すると、初老の兵士がクロのところに来た。
「クロさま。お疲れ様です」
「お疲れ様です」
クロは初老の兵士と乾杯をした。
「復活しましたね」
初老の兵士は笑顔だった。
「いえいえ。まだ身体は戻っていません。精神面もまだまだです。でも、今日ここまで来れたのはみんなのおかげもありますし、馬術のフォローをしてくれたあなたやあの兵士のおかげもあります」
クロは若い兵士を見た。若い兵士は他の兵士と飲んでいた。
「いえいえ。私は何もしておりません」
すると、初老の兵士は輝き出した。
「クロさま。今までありがとうございました」
「いえ。私なんて、迷惑かけてばかりで申し訳ありません」
クロは謝った。すると、初老の兵士は手を差し出した。クロはその手を取った。
「クロさまなら、大丈夫です。では、私はこれで行ってきます」
初老の兵士の体が薄くなっていった。
「はい。行ってらっしゃい」
そして消えていった。
「さて。宴会を楽しむとするか」
クロは宴会へ戻り、一人一人に挨拶を交わしたのだった。
いつも読んでいただきありがとうございます。
クロが馬場馬術で流していた曲は、THE ALFEEさんの「Victory」です。
今精神的に辛い時があり、なかなか思うように小説が書けなくて時間がかかってしまい、投稿が遅れています。ごめんなさい。
一人でも多くの人に読んでいただけていることに、作者は励みになります。
完結を目指して頑張りますので、ぜひ読んでください。