12
部屋に入り、さっと朝食を作った。出来たタイミングでウルフが入ってきた。
「おはよう〜」
あくびをしながら来た。
「おはよう。どうした?」
「朝食食べに来た」
ウルフは席に着いた。
「あぁ。ちょうど多めに作ってたから、あげるよ」
皿に分け、ウルフにあげた。
「わーい。ありがとう」
クロも席につき、お茶を飲んだ。
「クロって、ほんとなんでもできるよね」
ウルフは朝食を食べた。
「それは、どう言うことだ?」
「だって、料理できるし。馬乗れるし。頭もいいし」
「そうか?料理は趣味だし、馬は…まぁ、やってたからな。勉強は全然だ」
クロは朝食を食べた。
「でも、体はまだまだだ。ウルフの方が強いだろ?」
「まぁね。昨日もクロ死んでたし。今なら…」
「死んでても全力で拒否する」
「え〜」
そんなウルフを無視してクロは朝食を終えた。片付けをし、稽古の準備を整えた。
「今日も激しくやりましょうか」
「あぁ。ただ、体育大会も日が近い。無理はしないよ」
クロとウルフは稽古場へ行き、竹刀を持った。
「クロ。あなたは調子が乗るとすぐに油断する。その癖治した方がいいわよ?」
クロは伸びをした。
「治したいが山々だが、性格だからか治らん。でも、努力はする」
クロは竹刀を構えた。ウルフも竹刀を構えた。静寂が走ると、二人は同時に飛び出した。
「私が治せって言ってるのに、なぜ治さないの!」
ウルフは竹刀を振りかざすが、クロは竹刀で受け止めた。
「仕方がないだろ…でも!」
そのままウルフを弾き飛ばした。
「昔よりはいいと思ってるが」
「いやいや。全然変わってないよ」
ウルフは呆れていた。
「まぁ、いっか」
ウルフはスイッチが入ったのか、次々と攻撃を仕掛けた。
「…!」
クロはなんとかかわした。
「まだまだよ!」
ウルフはさらにスピードをあげた。
「日々強くならないとな!」
かわしていくうちに、ウルフに隙ができてしまった。クロは隙に目掛けて竹刀を突き出した。
「ふーん。やるじゃん?」
だがウルフは間一髪で避けた。
「私を甘く見ちゃダメよ。でも、今の動きいいわ」
「当てないと意味ないがな…」
クロはまた構えた。
「いいわよ…もっと激しく!」
激しい打ち合いの音が稽古場に響きわたった。どのくらい時間が経っただろうか。
「はぁ…はぁ…」
クロは汗を拭った。
「今日はいいんじゃない?うまく動けてたし」
ウルフは呼吸一つ乱れることなく立っていた。
「あぁ…」
返事するのもやっとだった。
「大丈夫?まぁ、今日はここまでよ」
「すまんな…毎日毎日」
「こうしないと、クロ強くなれないでしょ?」
ウルフは稽古場を後にした。クロは竹刀を片付け、よろよろと歩きながら、部屋へ戻った。
「はぁ…」
服を脱ぎ、シャワーで汗を流した。
「…」
体を拭き、服に着替えた。椅子に深く座り、大きなため息を吐いた。
「マジきつい。でも、なんとか戻さないと」
机に置かれている書類に目を通した。
「本当に、ウルフと兵士たちに助けられてばかりだな」
書類の隅に、クロへの励ましのメッセージが一言書かれていた。よく見ると、全ての書類に書かれていた。
「体育大会で、兵士たちに見せてあげないとな」
すると、ノックがした。
「入れ」
扉が開くと、二人組の兵士が現れた。
「クロさま。お疲れ様です」
「お疲れ様」
「お身体は大丈でしょうか」
「あぁ。大丈夫だ。みんな、ありがとうな」
「いえいえ。あ、これをお持ちしました」
もう一人の兵士が紙袋をクロに渡した。クロは中を見た。
「…これって。いつの間に」
「ウルフさんに頼まれてたんです。綺麗にしておきましたので、ぜひ使ってください」
中身を出すと、ドレッサージュコートが綺麗に畳まれていた。
「大会で着ていたやつ。懐かしいな。ありがとう。わざわざ届けに来てくれて」
「我々も、クロさまを応援しています。体育大会頑張ってください」
そう言うと、兵士たちは部屋を出た。
「これは、頑張らないとな」
ドレッサージュコートを片付けた。そのままベットへ行き、横になった。
「ちょっと頑張りすぎたかな…」
強烈な睡魔がクロを襲い、クロは眠ってしまった。
夢を見た。
「…番。クロ・ルーマス。乗馬、ルナ号」
放送からの呼び出しに、クロとルナは大会の入り口で準備した。馬場馬術の大会で最後の種目だった。
「ルナ。最後だ。気合い入れていこうな」
クロは服装を整えた。ルナは気合いが入っているのか、ハミをしっかりと喰んでいた。クロはルナを促し、馬場に入った。合図を出すと、ロック系の音楽な流れた。それに合わせてクロはルナを進めた。ルナはクロの指示を的確に答えていった。いつしか一体となって楽しくダンスをしているような感じになっていった。そして、あっという間に競技を終えた。クロはハットを取り、礼をした。すると、大歓声が会場を包んだ。
「ルナ。ありがとう」
ルナを思いっきり褒めた。しかし、二人を待ってくれる人はいなかった。そのまま退場し、順位を見守っていた。
「ルナ。よく頑張った。ありがとう」
ルナは鼻を鳴らした。すると、順位が発表され見事に一位を取った。
「ルナ!一位だよ!」
嬉しさのあまり、ルナを抱きしめた。ルナも嬉しいのか、クロを離さなかった。
いつも読んでいただきありがとうございます。
さて、クロが夢で見ていた馬場馬術のロックの曲ですが、THE ALFEEさんの「Nouvelle Vague」をイメージしています。
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