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女勇者の禁書覚書  作者: 道しるす
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女勇者禁書覚書19

 上を見ると青空と白い雲が見え、真ん中に目をやると見える景色は変わりこちらの岸と対岸とがはっきりとみることができる。絶景。いつ見てもここは自分の中の良い景観上位に入ることだろう。


 ノリで包まれた丸いおにぎりをゆっくりとほおばりながら景色を堪能する。


 青空のほうへ手を伸ばして、きっとこの世界には私の知らない世界がたくさんあるんだろうな・・それを少しでも疑問を解決していけば私の想像している楽しい世界にたどり着くことだろう・・だから私はそれを確かめに行きたい。それが分かれば幸福になると信じて疑わない私の願い。


「あー、食べた、食べたよー」


 この見渡しても鹿しかいない状態ではきくものもいない状態だったので、気にすることはなく、周りに臆せずどんな言葉でもはけるため余計に気軽だった。


 食事の終わりに水を水筒から蓋に半分ほど注いでそれをゆっくり飲み干す。


「はー」


 ためていた息を一気に吐き出すように、だけどゆっくりとした動作でそれを何回か繰り返す。


 これをやると落ち行くし、考えが詰まったときにも頭に直接、この冬の冷たい新鮮な空気を送れるようですがすがしい新たな気持ちになる。


私はここで見慣れない動きをしていたお姉さんを思い出して、また以前この街にお披露目に来ていた芸劇団を見て、あれぐらい体が曲がれば得意になれるはずだと、友達にも自慢できると考えて少しでも体の動きをよくしようと、まず、腕を頭の上のほうまで上げ伸ばして頭上で両腕を組んで立ち左右に振ってみる。するとあまり使わない筋肉だとすぐにわかる。どうも不安定になる膝が少しぐらつく。


 ああ、私はこんなところの筋肉なんて使ったことがない。だsからどうやったら強化できるかもわからない。わからないことがまた一つ増えて、楽しみも一つ増えたんだった。 


 まっすぐに立ち、片方ずつ前に足を挙げてみる。あの劇団の団員ほど高くは上がらない。私のはせいぜい腰より少し高く上げられる程度で、それでもひざは軽く曲がってしまい、伸ばしてやると腰までがせいぜいだった。とても地面に垂直に足を上げるなど不可能だった。あの人たちは仕事だからとくくってしまってはなんの元も子もない。足の開脚に至っても足の裏と裏がまるっきり反対を向けることなどできない。


 どうやったらあのようにできるのだろう?


 この動作ができなくて一番に考える事柄だ。今までこのような動作をしたことがなかったためだから当たり前といえば当たり前だったが、知りたくて劇団の周りをうろついていたこともあったりした。あのようなことができる人はケガや足がつったりすることが少ないと母親から聞いていたからだった。

 母にその練習はどうすればよいのか尋ねたことがあったがさあといったり、片足を上げる動作をしてみたりと今一つ要領を得られない。私も片足ずつ毎回挙げてみたがある程度は高く上がるが、ある一定のところからはなかなか伸びないのは肌で感じていたから、そのやり方である程度はできないことがわかる。


 何かあのようになれる秘訣があるに違いないと何日も考えていたことがあったが、今では仮説が頭の中で成立していた。その仮説をやっていかないといけない時期に入っている。どうでないとこれ以上高く足を上げることできないのは明らかだ。


  普通筋肉がどんどん伸びていくことにどこまで伸びていくのか不安になり、ひょっとしたら筋肉が伸びっぱなしで元に戻らないのではないかと危惧していたため、今まで本格的に思い付きを実行するための少しの勇気が足りなかったため、なかなか上達できなかったが今日からどんどん筋肉が伸びていっても気にせずどんどん伸ばしていこうと決めた。これが正しいのかどうかも判定できない。


 夜の出来事が思い出される。


 布団でぐっすり寝ている私は寝返りを繰り返しているときに、何か、足の違和感を感じるが気にせずそのまま寝返りを打つと片方の太ももの裏やふくらはぎに激痛が走り、呼吸もしずらく、気が付くとのたうち回っていることがたまにあり、その対策に手を焼いていた。あれはたまらなく痛い。何とかしたいがその対応の仕方も予防も対策もわからない。


 周りは暗いため余計に不安を覚えるし、親も寝ている。あまりの痛さに親の部屋まで行って起こそうとしたが両親とも起きなかった。片足を痛くて引きずりながら自分の部屋に戻って、しばらく痛くない姿勢でいると収まってきて、でもすぐにいつも通り動かすと足がつる気配を見せるためそのまま動くことができなかった。


 いや、例え昼間であっても、親がいても何の対策の方法も聞けないのは昔に聞いて明らかだった。そのときの母の反応はいま一つの反応だったのを覚えている。


「うーん、そうねえ、やっぱり体を動かすことかしら、あとはー、もむとかじゃない?」


 このような感想だった。私は早速試してみたが、あまり効果を期待できずまたよなよな筋肉のけいれんが起きてしまっていた。ひどいときは連日続いたこともあってその対策は急務だったのに知識がなくて、なかなか対策を立てられなかった。あの時の歯がゆい何とも言えない思いは忘れられないでいる。こんな時、しっかりとした知識があれば痛む足を和らげることもできたろうに・・・。


 それが今、塾に行き、読み書き計算までもやっている。あの時の思いは今の自分でよいのかとときどき私に投げかけてくる。

 そのたびに私は今は勉強中と言い聞かせている。将来はきっとわかるようになる。

 もしわからなかったらという不安とわかったら案外世の中ちょろいと思うかもしれないとまだわかっていないことなのにわかった気になった自分がいる。


 食事をし終えて、体も伸ばしたので自宅に帰るために舵を家路にした。まだ明るく青々とした空と白い雲を見ているといつまでも名残惜しいが近くため、またいつでも来れると思いなおす。公園を出るときこの川をうろついている鹿に目をやったが相も変わらずに草を食んでいるのか草のにおいを嗅んでいるのかのんびりとしていた。ここ都市部では鹿などはかなり珍しいため、話題になりそうだと思いながら公園を去った。


 きっと数日後には新聞の片隅に乗っていることかもしれない。


 そのしるしに人が少しずつ集まってきているのが遠巻きからでもわかる。


 私は少し早歩きでここから立ち去った。


 自宅にはすぐにつき、玄関の前に立つと一旦、後ろを振り向く。その眼には

馬車が一台と半分くらい通れるくらいの景色を目にしていた。川はかなり下を流れていた。川岸は整備されていて岸壁には石がいくつも規則正しく積み上げられていて、人工物だと容易にわかる。だいぶ前に積み上げられたものらしく隙間にはところどころ草も生えていて川岸はささやら名前のわからない木が川底から生えていた。木はまばらに生えていてササや短い草と混じりところどころに生えている。


 自分はここが生まれも育ちもなのでここから見える景色が当たり前に見てきた。だけれどもほかはそうじゃないことはだいぶ前からうすうすきずいていた。


 私は少なくても家の立地条件には恵まれている。そう思っている。おそらく口には出さないが父、母、

妹も同様だろう。ほかの家を見ていればわかる。場所を広く取ってあるせいかあまりギスギス感はない。

 だけどれども明らかにここには住みたくないなあっと思う場所がいくつもある。


 木造一階建てでその周りが壁でせまく仕切られていて、そこから見渡しても数階建ての集合住宅、赤茶けたレンガや石を規定通りに切って積み上げ、それをセメントで固めた高い建物があったりするため風の抜けも悪く、きっと良いすみごごちではないのは想像できた。洗濯物の乾き具合も曇っている日にはよくないに違いなかった。


 また高い丘の下にある木造住宅もあまり良いものではないだろう。ここは風の抜けや景観が悪いといったことではなく、そこの家から見るとその家の上のほうにいくつも家が立ち並んでいて、物理的には業者から崩れてこないといわれてもかなり不安が残るうえに上から眺められるのはいい気分ではないだろうと思う。私ならここは絶対に選ばないと強気だったが、そこを選んだ理由にはそれなりの理由があるのだろうと考えている。それとも物好きなのだろうか?そのように考えていくと答えが定まらない。


 そのような思いに駆られているを、鳥のさえずりが今、私を玄関に立っていることを改めて実感させて玄関のドアのノブに手をかける。


 家に入ったら何をやろう。何をやっても自由。なんだか少し眠いので寝ても、勉学に励んでも、新聞読んでもまた散歩でもいい、コーヒーをとりあえず飲んでも・・。頭は楽しくなっていく。そうだ、先にコーヒーを飲もう。それで頭がすっきりしてきたら勉学、休憩にはまたコーヒーを・・。


「ふふふ」  


 思わず玄関のドアノブを握りしめる手が少しだけ緩む。そのまま引こうとするが開かない。どうやら、おそらくは母だろうが、施錠をしていったみたいだ。私はカバンの金属でできたジッパーを開けると中をまさぐり、銀色の金属製のカギを取り出して、カギ穴に差し込んで回すと、かちりという音がして施錠が解錠できたことが分かった。


 当然、中に入るが屋内はシーンと静まり返っている。これが初夏になると虫の鳴き声が聞こえてきて耳は痛くないのだが、今は冬で終わりに近いとはいえまだかなり寒い。風の吹く音はある。それが窓をがたがたと音を出させている。それが救いではあった。玄関のドアを閉めた後中から施錠しなおした。


 静まり返った我が家はいつものことでもあった。はきなれた靴を両足で挟むように雑に脱ぐと、片方の靴底を手に持ち見てみる。だいぶ前に、父が営業で会社をはしごしていた時は一か月で靴底がすり減ってしまい、また変え買いなおさなければならなくなったと確か夕食のときに話をしていたことを私は思い出していた。

 

 その私の靴の底は土がついてはいたが溝などなくなっていなく、今しがた下したばかりの深さを保っていた。


「なくならないじゃん」


 私の口に出た言葉は屋内にわずかながらこだましていた。


 どうやったらそのように減るものだろうか?一度、そのすり減った靴底を見てみたかった。


 父に言って一度見せもらおう、見てもそれがどうしたと冷めた自分がささやきかけるがそんなこと言ったら始まらない。


 何事も実際に見てそれでどうかと感じて、楽しいか、くだらないか、それでなんなんだと開き直ったりすることが一番だと何かで読んだことがあった。


 読んだまんまだけど・・・。


 家の中は相も変わらずに物音せずに「シーン」としている。床も天井も階段も壁も奥も、ガラスが窓に使われているせいで暗くはない。窓がガラスに替わる前は不気味だった。


 情緒のある光景?


「わー」


 唐突に控え気味に声を出す。声は少し屋内で反射してやまびこのようになる。


 自分のわずかな呼吸音を聞きながら、念入りに磨いてるとしか思えないつるぴかの板床に足をのせて、自分の部屋へと歩き出す。少しずつ足を滑らせながら、歩きにくいと感じながら自分の部屋を目指す。


 まず、自分の部屋の中を確認した後、当然中には誰もいないことを見て取った後に妹の部屋を開けてみる・・ベッドの布団がこんもりとしている。それで妹が家の中にいることを確認すると、今度は父と母の部屋をドアをそーと開けて、中の様子をうかがう。シーンとしていて中には誰もいなかった。いたらきっとドアをたたきなさいぐらい言うだろう。


 親の部屋に誰もいないことを確認してから自室に戻り、ドアを閉めて立ったまま少し崩れてドアにもたれかかる。そのままずりずりと座っていきたいくずわりになったら思い出したことがあった。


 要領悪い、新聞。帰ってきたら新聞を持って、机でのんびりとって考えてたんだっけ。


 疲れた体に鞭を打つような感じでその場を立ち上がり、ドアを開けて階段を下りていき、階段下の裏側あたりに新聞を積んである場所があるため、そこまで行きとりあえず、新聞が束になって積んである、一番上の束を無造作につかみ、部屋へと戻った。新聞を机に置いて、呼吸を整えるとあるものを思い浮かんでしまった。それはコーヒーであった。コーヒーを飲むと眠気がなくなり、学問により力が入ることが最近、わかってきたので知識が増えたと喜んだものだが、母はそのことを知っていた。少し残念だった。せっかく新しい発見があったのに、その効果のほどが新聞に堂々と乗っていたのだった。














 

 







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