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残念な人

「ふぅ、市場で買えたのはニンニクとショウガとコショウだけだったな。ニンニク・ショウガ合わせて120ゴールド、黒コショウが少し高めで100g800ゴールドか。所持金は残り3730ゴールドか。

よし、さっきおばさんに聞いたお店に行ってみようかな」


肉屋のおばんと別れてから同じ市場でニンニクやほかの香辛料を購入し、キーラの店を目指すことにした。


「でもNPCなのに本物の人と話しているみたいだったな。しかもすごい親切だったし…」


そんなことを考えていると、市場の屋台も少なくなってきた。

どうやら市場の広場を抜けて、大通りに来たようだ。


「おお、市場もすごかったけど大通りもすごいな、なんか別の世界に来たって感じだ」


滑らかな石で整備されている大通りに面して、大・中・小の様々な建物がずらりと並んでいる。

この中にキーラの店があるんだろうか。


「これは、見つけるのが大変だな」


このたくさんの建物の中からお店を見つけるのは骨が折れそうだ。

お店を探しながら大通りを歩いていると、目の前の建物から金髪の女の人が出てきた。


「何よもう!ちょっと『のみくらべ』してただけじゃないの!それであんたは出てけなんて、ひどいじゃないのよ!」


どうやらこの建物は酒場のようで、彼女は何をしたのかはわからないけどそこを追い出されてしまったようだ。


「うーん、まだ飲み足りないのに…ん?どうしたのお兄さん」


僕が驚いてじっと見ていることに気が付いて声をかけてきた。


「あ、えっとごめんなさい、お店を探して歩いていたらいきなり目の前のお店から人が飛び出してきたから、驚いてしまって…」


「ああ、そういうことね?驚かせてごめんなさい。でも、私は悪くないのよ!私は!ただ『のみくらべ』ってゲームで遊んでただけなのに、お前は飲みすぎだーって怒られて…あのくs…」


「あ、そ、そうなんですね…アハハ…」


この人見た目はこんなにも綺麗なのにどこか残念だな。と内心思いながら、また苛立ち始めたお姉さんの愚痴を聞き流す。


「はぁ…だから私は悪くない!うん!」


ひとしきり話したお姉さんは完全に開き直ってしまっている。


「そういえばお兄さんは?お店を探しているって言ってたけど、もしかして初心者さん?」


「ああ、はい実はさっきログインしたばかりでして。必要なものを買うためにキーラさんの店を探してるんですけれど、建物がおお過ぎて…」


「あー!!あの店ね!確かにこの大通りは建物が多いし、どれがどのお店かわからないわよね」


「そういえばお姉さんはプレイヤーなんですね」


「ん?あぁ自己紹介してなかったわね、私はマキっていうの、種族はエルフよ。このゲームはリリース当初、、まぁ半年くらい前からやってるから君の先輩だね」


「僕の名前はハヤテです。よく僕がプレイヤーってすぐにわかりましたね」


先輩って呼んでくれてもいいのよ?と、得意げに言うマキさんの言葉を無視して自己紹介をする。


「そりゃあプレイヤー同士が近づくと、頭の上に青色のピンが見えるからね、ほら」


確かにマキさんが指をさした頭の上には青色でひし形のピンのようなものが浮かんでいる。


「そんなものがあったんですね。今まで気が付きませんでした」


「やっぱりいいわね!初心者相手にゲームの仕様を教えて先輩ムーブをするのは!こう、満たされるものがあるわね!」


さっきまでのいら立ちはどこに行ってしまったのであろうか?今は自尊心が満たされてとても得意げである。


「そうだ!あなたが探しているお店なら私も知っているし、案内してあげましょうか?ちょうどお酒を買いに行こうとしていたところだし」


「え!いいんですか!ありがとうございます!」


「フフーン♪このマキ先輩に任せなさ~い。もっと尊敬してくれてもいいのよ?大事なことだから二度言うわ!尊敬してくれてもいいのよ!」


「ああ、はい。ソンケイシテイマス」


この人、いい人なんだろうけどやっぱり残念な人だなぁ

そう考えながら歩きだしたマキさんの後についていく。


「そういえばさっき行ってた『のみくらべ』ってなんですか?」


「あぁ、『のみくらべ』は酒場でできるミニゲームでね?相手とどれだけ飲めるかを競うの。で、勝った方は無料。負けた方は勝負で二人が飲んだ分を全額払うっていうルールよ。無料酒飲むのに最適なのよね」


なるほど。マキさんは無料酒を飲むために『のみくらべ』をしすぎて店から追い出されてしまったと.....


「ついたわよ。ここがあなたが探していたお店よ」


やっぱり残念な人だな。と再確認していると、目的地に着いたようだ。

そのお店は思っていたよりも小さく少し古い。まるで魔女が住んでいそうな風貌だ。


マキさんが扉を開けるとカランコローンと鈴の音が響いた。


店の中はコンビニ位の広さで、古い木の棚に本や葉っぱ、瓶などが雑に置かれている。


「わーすごい色々なものがありますね」


「そうよ、ただ整理はされていないから目当ての物を探すのはちょっと大変だけれどね」


まわりの商品を見ていると、奥にあるカウンターの裏から若い女の人が出てきた。


「おや、いらっしゃい。何かお探しかい?」


その女性は長い黒髪を隠すように『これぞ魔法使い!』と思わせる三角の帽子をかぶり、まん丸の眼鏡をかけていた。


「あ、キーラさんこんにちわー」


どうやらこの人がこの店の主人であるキーラさんのようだ。


「ああ、誰かと思えばマキじゃないの。また飲み足りないからって酒を買いに来たのかい?」


お年寄りのようなしゃべり方をするが、見た目はかっこいいお姉さんって感じだ。


「あんたは初めて見るね?マキのお友達かい?」


「僕はハヤテって言います。マキさんとは友達っていうか…さっきこのお店を探して迷っていたんですけど助けてもらって」


「そうだったのかい。ハヤテくんちょっと」


そう言って手招きをするキーラさんに近づく。


『あんた友達は選びなさいよ?あの子はね顔はいいけれどね、残念な部分が多すぎるのよ残念な部分が』


『わかります。僕もさっきから残念な人だなって思ってたところです』


2人でこそこそと話しているのが気になったのか、マキさんが声をかけてきた。


「ちょっと~?ふたりで何話してるのよ?」


「ん?ああなんでもないさね。ところでハヤテは何が欲しいんだい?」


「あ、えっとお酒と片栗粉、小麦粉を探してます」


「お酒なら右奥の方の棚、残りは私もどこに置いたかわからないからね、そこら辺の紙袋に入っているから探してみるといいさね」


キーラさんは整理するのが苦手なのだろうか?

マキさんのことを残念な人といっていたが、キーラさんも残念な方なのでは…


「わ、わかりました。ありがとうございます」


僕が苦笑いで返事をするとキーラさんは、

「会計の時また呼んでおくれ」


そう言ってまたカウンターの奥の部屋に戻っていった。


「よし、まずはお酒を探しに行こうかな」


「お酒!じゃあ私も~!」


と僕と残念な人とで、お店の右奥へとむかった。






面白い!

続き見たい!

少しでもそう思った方は、いいね!していただけると幸いです。

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