花の数ほどⅢ
とある二人の会話の続き。
「じゃあ正解は何なの?」
「ん?」
「花占い嫌いな理由。」
「ああ。わかんない?」
「わかんない。降参。」
「正解は、『汚いから』。」
「え?」
「汚いじゃん。」
「何が?」
「全部。花びらむしられた後の花も、地面に散らばった花びらも、花いじった後の手も。全部きったねえ感じがするから。」
「へえ・・・。」
「俺、小さい時、大好きだった女の子が花占いやってて、それがすげえ汚く見えてさ。すっごく可愛いと思ってたのに、花占いやってるとこだけは、なんか無理だったんだよね。花むしって、汚いのに、にこにこ笑っててさ。ぶっちゃけ気持ち悪かった。」
「そうなんだ・・・。」
「うん。」
「やっぱりたーちゃんって面白いね。」
「そう?」
「全然想像してなかったもん。そんなの。」
「むぅの方がそういうとこ多いけど。」
「えー?そう?」
「おまえ、わかってないかもしれないけど、ちょっとおかしいよ。」
「んふふ。たーちゃんに言われてもなあ。」
「まあ、それくらいがちょうどいいだろ。」
「そうだね。」
「うん。」
二人の足元で、花が小さく揺れている。
鳥はさえずり、風はざわめき、月は形を変えている。
二人の会話は、今日もどこかで続いている。
「花」モチーフの短編集でした。お読みいただきありがとうございました。
「月」から始めて、ここまでで花鳥風月シリーズとして一括りのつもりです。よろしければ「鳥」「風」「月」もお楽しみください。