花の数ほど
とある二人の会話。
「花占いってさ。」
「うん?」
「花占い。」
「うん。」
「あるじゃん。」
「好き、嫌い、好き、嫌い?」
「そう。」
「あるね。」
「あれさ、やったことある?」
「うーん、たぶん。」
「たぶん?」
「ちゃんとは覚えてないよ。」
「でも、やったことはある?」
「子供の時とか・・・。」
「ああ、そうね。」
「なんで?」
「ん?」
「たーちゃんはないの?花占い。」
「ない。」
「ほんとに?」
「うん。」
「言い切れるんだ・・・。」
「うん。」
「なんで?」
「俺、あれ嫌いだから。」
「嫌いなの?」
「嫌い。」
「なんで?」
「むぅは『なんで?』しか言わねえな。ナンデナンデ星人かよ。」
「ナンデナンデ星人じゃないよ。」
「知ってるよ。」
「たーちゃんが理由を言わないからじゃん。」
「ちょっとは考えてみろよ。」
「えー。」
「なんでだと思う?」
「うーん。」
「当ててみて。チャンスは三回ね。」
「・・・じゃあ、『占いが嫌いだから』?」
「ブブー。」
「違うかあ。」
「まあ占いも嫌いだけどさ。」
「じゃあ正解じゃん。」
「いや・・・。花占いが嫌いなのは別の理由だから。」
「なんかずるくない?」
「ずるくないよ。はい、不正解ね。」
「えー。」
「あと二回答えられるから。」
「・・・・・・。『花びらの枚数で始めから結果が分かるから』?」
「ブッブー。」
「違うの?」
「違います。」
「でも、枚数で分かるじゃんって思うでしょ?」
「それは思うけど。」
「ほらー!」
「そうだけど、理由は別にあるから。」
「そんなのたーちゃんの匙加減じゃん。」
「そりゃそうだよ。これ俺のクイズなんだから。」
「そういうもんなの?」
「そういうもん。」
「ふーん・・・。」
「はい、最後は?」
「じゃあ、『花が嫌いだから』?」
「は?」
「え?」
「おまえマジでそれ言ってる?」
「え。」
「俺が花嫌いとか。ありえねえだろ。」
「え・・・?」
「ありえねえじゃん。」
「えっと・・・。」
「おまえ、ほんと馬鹿だな。」
「ごめん・・・。」
「俺、言ったことある?花嫌いなんだ、とかさ。あった?」
「ごめん・・・。」
「ないよな?」
「ないです・・・。」
「だよなあ?俺、花嫌いじゃねえもん。そんなのさ、ちょっと考えたら分かるだろ?」
「はい・・・。」
「おまえさ、俺と何年いるんだよ。」
「えっと・・・。」
「・・・。」
「・・・6年?」
「4年。」
「そっか。」
「覚えてねえのかよ。」
「ごめん。」
「おまえってほんと覚えてないよな。」
「ごめんなさい。」
「興味ないんだろうな。」
「え?」
「むぅはさ、そういう奴なんだよ。」
「馬鹿ってこと?」
「そうじゃなくて。もともと興味ないんだよ。俺のこと。」
「そんなわけないよ。」
「だって覚えてねえじゃん。俺とどれくらい一緒にいるかとか、何が嫌いかとか。」
「だからそれは、僕が馬鹿だからだよ。」
「そうやって誤魔化してんだよ。自分でも。馬鹿だからって言い訳して。」
「違うって。」
「違くねえよ。」
「違うよ。」
「何が違うんだよ。」
「だって、僕、たーちゃんのこと一番大事な友達だと思ってるもん。」
「どうだか。」
「ほんとだって。」
「・・・ほんとに一番?」
「うん。」
「ほんとに?」
「ほんとに。」
「・・・まあ、そうだよな。」
「うん?」
「おまえ、他にあんま友達いねえし。」
「うん。」
「俺もだけど。」
「そうだね。」
「うん。」