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異世界帰りの少年の大事件 ~TSした元男の娘の非日常~  作者: 九十九一
1年生編 1章 魔王討伐、帰還後
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5件目 女の子の生活スタート

※ 諸事情により、依桜の誕生日を変更します。

  十一月二十日 → 十二月十七日

 女の子になってしまったという事実に、しばらく放心状態になって、少ししてようやく落ち着いた頃、ボクは再び鏡に向き合っていた。


 そこに映っているのは、腰元まで届いた綺麗な銀髪に、優し気な印象を与える碧い瞳。

 ややあどけなさの残る、可愛らしい顔立ち。

 体も、服の上からわかるほどに胸が大きく膨らみ、体の至る所が妙に丸みを帯びている。

 肌の質感も、ものすごく柔らかくて、ぷにぷにしている。

 太腿だって、肉付きがよくてとても柔らかそうな感じだし……。


 昨日までの自分とは大違い……というか、


「まったくの別人だよっ……!」


 思わず叫んでしまった。


 その時の動きが、鏡に映った女の子とシンクロしていた。

 それを見るに、やっぱりこの鏡に映ったのはボクで間違いないと思う。


 ……一応一つ言わせてもらうと、銀髪碧眼だったのは生まれつきです。

 ボクの先祖に、北欧の人(?)がいたらしくて、隔世遺伝でボクは銀髪碧眼に生まれたらしいです。あ、両親はごく普通の日本人ですよ。隔世の幅が広すぎるのはご愛敬。


 それにしても……あぁ、まさか、本当に女の子になってしまうなんて……。


 あの本で対処法を見つける前にこっちに帰ってきちゃったしなぁ……。


 ……そういえば、あの呪いが書かれてた本に、ちらっと見えたものがあったよね?


 たしか……『呪いが発動すると、一生戻ることはありません。効果は十二日後に発現します』だったよね?


「……あれ、それ、まずい気が……?」


 呪いが発動すると一生戻らないということは、効果を発揮すると、それが呪いではなく、正常なもの、として存在することになるわけだよね……?


「……ということは、ボクって一生このまま、ってこと……!?」


 そ、そんな……一生女の子だなんて……!


「う、うぅ……こんなんじゃ、外も歩けないよぉ……」


 途方もない出来事に、涙が出てきた。


 それもそうだよね……だって、一夜にしてボクは女の子になってしまう、というとんでも事態が起きてしまったのだから、涙が出ても仕方ないと思うんです。


 どういう顔して外を歩けばいいんだろう? 今まで……というより、男として当たり前――なのかはわからないけど、男としての生活をしていたのだ。


 突然女の子になったら、外出するのも躊躇われる。


 が、それはそれとして、一番身近な問題が出てきた。


「……と、というか、母さんたちにどう説明しよう……?」


 母さんたちにどう説明するか、だ。


 さすがに『女の子になっちゃった。てへぺろ♪』なんて言えるわけもないし……。いや、そんな恥ずかしい風には言えないけど。


 かと言って、異世界に行ってました! なんてことは言えないし……。


 そんなことを言おうものなら、確実に『え、この子頭大丈夫? 病院行く?』みたいな、残念な子を見る目を向けられてしまう。


「はぁ……どうしよう?」


 どう説明したって、ボクが依桜だって信じてもらえるわけないし……。


「いっそ、どこか遠い所にでも――」


 遠い所にでも行こうかと呟きかけた時だった。


「……あ、あなた……依桜?」


 突然、扉の方から声がした。


「ふぇ……?」


 呆けた声を出しながら、声の方を振り返ると、件の母さんがそこにはいた。

 目を大きく見開き、驚愕に似た表情を浮かべて、硬直している母さんがそこにいた。


 訪れる沈黙。


 時が止まったと錯覚できるほどの長いようで短い沈黙。


 き、気まずい。昨日もこんなことがあったけど、あれの比じゃないくらいに気まずい……。

 あっちは友達だけど、こっちは実の親。あれの比じゃないくらいに、気まずい。


「あ、あの……え、えっと……」


 とにかく何か言わないとと思ったボクは、何かを言おうとした。

 だが、ボクが言う前に、


「依桜!? あなた、依桜なの!?」


 母さんのセリフによってかき消された。

 だけど、そのセリフはボクが男女依桜なのかと尋ねる質問。

 ちゃ、ちゃんと答えないと……。


「う、うん。信じられないかもしれないけど、ボクだよ。依桜だよ……」


 ボクが、母さんの質問に肯定すると、一瞬思案するようなそぶりを見せて、口を開いた。


「た、誕生日は?」

「十二月の十七日」

「好きな食べ物は?」

「えんがわ」

「通っている学校の名前は?」

叡董(えいとう)学園」

「……本物?」

「……うん。正直、信じられないかもしれないけど、その……ボク、女の子になっちゃったみたい」


 ボクがそう言うと、母さんは驚愕に目を見開いている様子だった。

 それに、嘘みたい、みたいな感じの表情もしているようにも見える。


 ……まあ、これで信じてもらえなかったとしても、どうにかなると思うし……。


 今の内に、先の事を――


「――すごいわあ!」

「……え?」

「たまに、依桜が女の子だったらなぁ、とは思ったことはあったけど……まさか、本当に女の子になっちゃうなんてねぇ……母さん、ちょっと嬉しいわぁ!」


 あ、あれ、なんかすごく好印象?

 というより、喜んでいる……?

 いや、それよりも、


「信じて、くれるの……?」

「当たり前でしょ。あなたは私とあの人の子供。自分の子供が姿を変えたくらいで、わからなくなるなんて、あるはずないもの。それに」


 姿変わるどころか、性別すら変わっちゃってるんだけど……。

 果たして、性転換後の姿を、姿を変えた、程度で収めてもいいものなのだろうか? 親として。


「あなたは可愛いもの。男の子の時だって、そう思っていたわ。でも、女の子になっている今の姿は、とっっっっても! 可愛いわ」

「母さん……」


 思わず、母さんの温かさに泣きそうになってしまった。

 まさか、信じてくれるとは。

 ……親ってすごいんだなぁ。本当に、こういうところは素直にすごいと思える。


 ………だけど、最後の方は余計かな、うん。だって、男の子の時ですら可愛いと思われてたって……やっぱり複雑な心境だよ。


 ボクの両親はともに能天気な節があるからね……。そこが一番大きいかも。


 だって、勉強の面とか、『赤点さえ取らなきゃ、どんなに成績が悪くても問題ない!』って言ってきたり、毒蛇に噛まれても、『血清があれば問題ない!』とか、果ては、『交通事故? 命あればセーフ!』なんてことを言ってくる。


 結構とんでもないレベルな気がするけど、それでもものすごく心配してくれる。……矛盾してるなぁ。


「とりあえず、お父さんに言わなきゃね」

「う、うん」


 父さん、どう思うんだろ?



「というわけで……依桜が女の子になっちゃったの」

「そ、そういうわけです……」

「…………」


 父さんは驚愕していた。

 目を大きく見開き、口を大きく開けた状態になっていた。これを世間一般では、あほ面って言うんだろうなぁと、失礼にも思ってしまった。ここまでの表情、母さんですらしなかったよ。

 そんなあほ面をさらしている父さんの口から、開口一番。


「ま、まさか、息子が娘になるなんてっ……! 父さん嬉しいぞ!」


 なぜか、ものすごく喜んでいた。

 それも、なんかものすごく泣いているし。


「しかも、こんなに可愛い姿になって……!」

「あの……父さん? 普通こういう時って、信じられない、とか、『お前は依桜じゃない!』、みたいなことを言うところだと思うんだけど……」

「何を言っているんだ! 自分の子供がわからないわけはないだろう! ましてや、こんなに! こーんなに可愛い娘になったんだぞ!? 男親として、喜ばないわけないじゃないか!」


 ……う、うーん? その気持ちは全くわからない。


 だけど、子供は大切だという気持ちは伝わってくるし……


 こんなに、わけがわからないよ、的な状況でも信じてくれるというのは、やはり腐っても親だからなんだろうなぁ。だからか、すごく嬉しい……。


「ありがとう、二人とも」

「ははは。何をいまさら」

「そうよ。何の心配もいらないわ。心配があるとすれば、そうね……あなたの服や下着かしらね?」


 そう言って、二人はボクの体に視線を向けた。


 そういえば、体が変わったのは寝ている間みたいだったし、当然今は男物の服や下着。


 ……まあ、好き好んで女の子の服や下着を身に着けたくはないけど……。


「そうね……あなたのスタイルだと、私より大きいというか、あまり普段見かけない大きさよね……うん、買いに行くしかないわね、これは」

「え……」

「そうと決まれば、午前中には買いに行ってしまいましょ」

「いや、それは……」

「いいじゃないか。行ってきなさい。それに、そうじゃないとお前が困るぞ」

「ボクは困らないけど……」


 だって、元々男なんだし、困るとか言われてもね……逆に買いに行く方が困るんだけど。


 というか、ボクの胸って、母さんより大きいんだ……。

 ……どれくらいなんだろう、これ。

 少なくとも、足元は全く見えない。見えるのは、胸だけ。


「あなたは困らなくても、周囲の人的には困るのよ。まあ、あなたも困りそうだけどね、その内」


 それはどういうことなんだろう……? 何か困るようなことってある? ボクに。


「さ、とりあえず今はいつも通りの服でいいから、着替えてきなさい。早めに出るわよ」

「……どうしても行かなきゃダメ?」

「当然よ。昨日までは男の子だったとはいえ、今はとっても可愛い女の子。親としては、可愛い姿でいてもらいたいもの。ねえ、あなた?」

「ああ、そうだな。父さんも、依桜が可愛い姿でいるとすごく嬉しい。むしろ、可愛い姿でいてくれ」


 なんだろう。急に女の子になったというのに、なぜこんなにもこの人たちは当事者以上に順応しているのか。


 ボクはまだ混乱しているというのに……。


 あれかな、能天気だからか。ボクが能天気じゃないから、混乱しているの?


 ……いや、この人たちが異常なだけだね、うん。


「……わかった。着替えてくるね」


 ボクがそう言うと、母さんと父さんはとても満足そうな顔をした。


 ……解せない。



「んーと、とりあえず、服装はあまり男女関係なく着れるものがいいよね」


 あまり男物すぎてもあれだし。


 ……と言っても、ボクの場合、ファッションとかあまり気にしないので、基本的にボクに似合った(?)服を店員の人が持ってきたり、母さんが適当に見繕ったりしてくるから、大体男女両方着れたりするんだけどね。


 幸いと思うべきなのか、不幸と思うべきなのか……複雑だよぉ。


「うーん……とりあえず、黒のシャツと、ジーンズでいいかな? 今日は涼しいみたいだし、灰色のパーカーも着ていこう」


 着ていく服を決め、ボクはその服に着替えた。

 鏡を見て、どこか変じゃないかを軽く確認。


 うーん、少しだけ大きいかな?


 なんだか、ちょっとだぼっとしてるし……まあ、ジーンズはベルトをすれば問題ないかな?

 上は……うん、世の中には萌え袖? っていうのがあるみたいだし……大丈夫、だよね?


「うん。いつものボク……とは言い難いけど、問題ない、かな」


 ……少し地味目な色だから、ボクの銀髪がよく映えちゃってるけど。

 なんで、こんな姿になっちゃったんだろう……?


 そう言えば向こうのボクって、幸運値が高かったよね。

 それに、性転換は確率が低いって……あぁ、うん。なるほど。


 たしかにそれなら、この現状にも納得できるよ。


 あれだね。幸運値が高いせいで、結果的に一番低い確率のものを引き当ててしまったと。


 なんでボク、あんなに幸運値が高かったんだろう……?


「とりあえず、下行こ……」



 そんなわけで、家を出てまず最初に向かったのはランジェリーショップ。

 店内には女性の人しかいない。

 当然か。

 そんな中でボクは……


「あぅ……」


 非常に目立っていた。


 と言うのも、母さんたち曰く、どうやらボクの容姿はかなり整っているらしく、注目を集めているというのだ。


 それ以外にも、ブラを着けていないせいなのかはわからないけど、服に乳首がこすれてなぜか変な感じになっていて、それに反応しているのも、注目を集めている原因だと思う。


 そのせいで、ボクの顔は真っ赤だろうなぁ……。


 それに、かなり恥ずかしい。

 ボクはもともと男で、急に女の子になってしまった。だから、突然こんな場所に来たら、とても恥ずかしくなる。


「えっと、とりあえず依桜の胸囲は計ってきてあるから、それを探して……あ、あった。へぇ、依桜ってGあるのねぇ」


 どうやらボクの胸は、Gもあるらしい。

 いや、正直大きさとかよくわからないんだけど……そういえば、態徒が、


『十代女子のおっぱいの平均って、AA~Cらしいぞ?』


 とか言っていたっけ。


 ……当時は何調べてるんだ、とツッコまれていたけど……それが本当だとすると、ボクは結構大きい、みたいだね。

 ……うん。なんか複雑。

 こういうのって、普通は小さいものなんじゃないだろうか?


「はい、依桜。とりあえず、これつけてみて」

「う、うん……」


 そう言って、母さんに渡されたのは、水色のブラとパンツ一式のものだった。ところどころにフリルがあしらってあって、ちょっと可愛い印象のもの。


 ……と言っても、ボク自身見るのは初めてだから、可愛いのかどうかと言うのはよくわからないけどね。


 母さんに促されるまま、ボクは試着室へ。


「と、とりあえずパンツから……」


 一度全部の服を脱いで、試着用の下着に手をかける。

 そこでふと、自分の姿が映った鏡が目に入った。


「うわぁ……」


 思わず、こんな声が漏れてしまった。

 そこには当然、裸のボクが。

 なんというか……無駄にスタイルがいいというか……。


「世間一般で、こういうのを美巨乳って言うんだよね……」


 胸は大きい上に形が綺麗だし、大きい(女委ほどじゃないと思うけど)のに、腰にはしっかりとしたくびれが。


 あと、その……両方の胸の中央に、桜色の突起があるのが、その……自分のとは言えど、見えているものは見えているので、ものすごく恥ずかしい。自分なのに……。


「う、うーん、自分の裸とはいえ……なんだか、見てはいけないものを見ている気分になるね……」


 思わず自分に向かって苦笑いをしてしまう。

 まさか、こんな外見になるとは……。


 別の人の体に入っている、と言われたほうがまだ納得できる気がするよ……。

 その場合、ボクのもとの体に誰かが入っているということになっちゃうけど。


「はぁ……さっさとつけて、早くでよ」


 パンツは問題なく穿けた。

 ただ、


「むぅ……布面積が小さいし、なんか余すところなくフィットして、なんか変な感じ……」


 男物の下着と言えば、ある程度余裕があったりしたからね……例えるなら、ボクサーパンツを小さくした感じ、かな? うん。よくわからないけど。


「えっとブラは……」


 肩ひもに腕を通して、ホックを背中で止めればいいのかな?


「……ん、難しい」


 見ながらできるわけじゃないため、なかなかホックがはまらない。

 ほんの少しだけ悪戦苦闘していると、ようやくはまった。


「ふぅ……やっとつけられた」


 その状態で再び、鏡を見る。


「やっぱり……女の子になっちゃったんだなぁ……」


 そこに映ったボクを見て、ものすごく鬱な気分になった。

 たしかに、ちょっとは可愛いかもしれないけど……なんというか、複雑だよ。

 ボク的には、かっこよくなりたかったのに……。可愛くなりたかったわけじゃないよぉ……。


「依桜―? そっちはどう?」

「あ、うん。着けられたよー」

「じゃあ、開けるわねー」

「うん……って、え!? ちょ、まっ――!」


 ジャッ!


「あら。なかなかいいスタイルしてるわね」


 ボクの下着姿は、母さんによって、堂々と公開されてしまった……。

 しかも、ほかの女性客の人もこっちを見ている。

 その上、


『何あの子、可愛い……』

『銀髪碧眼って……外国の子かな?』

『身長は低めだけど、モデルみたいにスタイルいいし、肌も真っ白で綺麗だし……』

『すっごい胸大きいんですけど』

『……なんか、負けた気分』

『でも、不思議と嫌な気持ちにならない……』

『うん。なんか、癒されるような可愛さ、って感じだよね』

『『『わかるわー』』』


 こんな会話も聞こえてくるし、


「か、母さん! いきなり開け放たないでよっ! す、すごく恥ずかしいんだからっ!」

「あら、ごめんなさいね。でもいいじゃない。ここには、女の人しかいないのよ?」

「それでも、恥ずかしいものは恥ずかしいの! もう……」


 ボクは急いでカーテンを閉めた。


「うぅ……もうやだ……」


 どうしてボクがこんな目に……。

 どうも、九十九一です。とりあえず、元々書きあがっている部分を投稿するペースは昨日のままで行きます。

 ただ、まれに寝落ちか何かして、投稿が遅れた場合は、可能であれば一気に投稿します。

 できなさそうであれば、後日、何話分か追加で入れておきますので、よろしくお願いします。

 では。

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― 新着の感想 ―
めっちゃ今更感強いですけど作者えんがわ大好きですか?
[気になる点] 女の子が一夜にして男の子になっても、こんな風に(みんな)涙を流すだろうか?:価値観が変わるからねぇ ”涙が出ても仕方ないと思うんです。”
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