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お題シリーズ2

たった一言で きっかけ

作者: リィズ・ブランディシュカ



 大雨の中で立ち尽くす。

 私の目の前には崖。

 その崖の下には物言わぬ骸が転がっていた。


 ああ、あの一言さえなければ、こんな事にはならなかったのに。


 どうして、心の内に秘めておく事ができなかったの?

 どうして、問い詰めてしまったの?


 人間は理屈じゃない。

 感情で動く生き物。


 分かっていた事だけれど。


 私は、崖に向けて歩き出す。


 そして、こんな事になってしまった原因を思い出していた。





 私と彼がすれ違う事になった原因は、些細な事。

 後になって思えばなんて馬鹿らしいきっかけだったのだろうと思う。


 仲直りできたなら、笑って語り合える思い出になったはずだ。


 けれど、すれ違いの溝をうめる機会はなく、互いの間にある亀裂は深まるばかり。


 彼が女の人と歩いているのを見た。

 それだけなのよ。


 別に浮気をしている証拠が見つかったわけでもないのに。

 私はなんて、愚かな勘違いをしてしまったのかしら。


「あの女はだれ!?」そう彼に問い詰めた私は、とてもむきになっていた。

 そして、問い詰められ続ける彼も同じようにむきになった。


 それで互いに譲らず、話は平行線。


 そのうち、その後の運命をきめる言葉、たった一言がとびだしたのよ。


「そんな事で」と彼は言ったわ。

 

 その瞬間私は、殺意を抱いて、衝動に突き動かされた。


 気づいたら崖の上から、彼の亡骸を見下ろしていたわ。


 こんなはずじゃなかったの!


 私の心配する想いや、分かり合おうとした時間の長さ、すれ違いのやりとりを、よりにもよって大切な彼に一蹴されたんだって思ったら、ついかっとなってしまった。それだけなの。


 私は今も彼の事が好きで、彼もきっと私の事が好きだったはずなのに。


 ああ、あの時の女の人、あなたと顔がよく似てたわね。

 兄弟?

 それとも、いとこだったのかしら。


 もうすぐ記念日がやってくるから、プレゼントを相談していたのかもしれない。


 でも、どんな真相が判明したところで、もう遅いわ。


 たった一言で、すべて壊れてしまったのだから。



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