手の甲へのキスは受け取り方次第
前回:わっけわかんない場所で二回目の落下を体験
「うぅぅ、頭痛い」
謎の全身疲労感と頭痛、喉の渇きを感じながら目を開ける。
視界に広がるのは見たことのない天井
え?ここどこよ?
てかなんで私寝てるんだっけ?大学にいた気がするんだけど…
考えても思いだせずとりあえず水が飲みたくなって身体を起こす。
私が寝ていた部屋には私がいるベッドのほかに上質なソファとそのセットであろう机、化粧台、暖炉があった。むしろそれしかないだだっ広い部屋だった。
「‥‥。」
ヲタクだからかな。漫画で見た公爵令嬢のお宅とか爵位持ちのお家みたいな家具の配置と部屋の広さ。今どきこんな部屋(家)があるのだろうか。ヨーロッパでもない日本に
しかも私がいたのは本州から離れた鎖国空間四国なのに?
え?私が知らないだけ?
いやいやどっちにしても私なんでこんなとこで呑気に寝てんの?
怪我とかしたなら普通病院で寝てるけど…
そう思って顔に手を当てたり、腕を見たり触ったりするがべつに傷とかはないしベッドからも普通に降りれるし立っている。表面的怪我はないようだった。
とりあえず喉渇いたんだけどな~
ガチャリ
部屋唯一のドアが開かれザ・メイド服的な格好をした少女が入ってきた。
その手には花瓶が持っておりどうやら水を替えに行っていたようだ。
少女は茶色の綺麗な髪をお団子でまとめ上げており線の細さからとても私好みのメイドさんであった。
彼女は私と目が合うと綺麗な瞳が落っこちそうなぐらい目を見開きこちらを見る。
「えっと、そんなに見られるのはちょっと…」
そんなに驚くことなのか?
まあ、寝てたやつがいきなり起きてたらそりゃ驚くだろうけどさ
ハッとして我に返った彼女は「申し訳ございません!すぐにデンカに報告してまいりますので―」と深々とお辞儀して出て行ってしまおうとするので、慌てて引き留める。
「ちょ、待って待って待って!呼んでくるより先にお水かなんかもらえませんか?あと頭痛薬も」
「は、はい!少々お待ちください」
バタバタと彼女は部屋を後にする。
水が飲めると分かると喉の渇きが激しくなった気がして、ベッドの端に座る。
少ししてさっきの女の子が水と薬をもって部屋へ戻ってきた。
「ありがとうございます」
コップを受け取り水を口に含み飲み込む。
水が体全身にいきわたるのを感じながらコップ半分の量を飲み下す。
その後受け取った薬を水で流し込む。
なんだか今まで飲んでいたバ○ァリンとかと違った感じの薬だったけどまぁ小さいことは気にせずに飲んでおいた。
コップの中が空になって一息つくと部屋がノックされ4、5人の男性が入ってきた。
その先頭に立つ男性はモデルでもできるんじゃない?ってくらい背が高く金髪であった。その後ろについてくる男性の一人は同じく金髪だったが、他の男性陣の髪色を目にして一旦思考が停止してしまう。
これは私が悪いんではない。だって緑と赤とピンクの髪色ってなんだよってなるじゃん
ウイッグつけて堂々としてるのとかなんかのイベントかな?とか考えるけどそれならもっとお祭りみたいに人がいないとおかしくないか
それに一人ぐらい見知ったキャラのコスプレをしていてもいい気はするんだ
自慢じゃないけど私は結構友人たちのおかげや自身のヲタク力によってある程度のキャラは把握しているつもりだ。しかもコスプレされやすいキャラからそうでないキャラでもなんでもたいていは知っているつもり
なのにこの人たちがなんのキャラかわかんない
てかコスプレにしては全く化粧っけがない。まるでこれが素です見たいに歩いてくるんですけど…
先頭にいた男性がスッと私の前で跪く。
おぅ、、、男性免疫力がないため怖い。きっと美形なんだろうけれど私は残念ながら3次元ヲタではなく2次元ヲタなのだ
だからどんなに美形でもドキッとするのはイケメンだからではなく距離が近くて怖いからである。
「初めまして、私はゲナンチュア王国第一王子 アスフィルア・デル・ゲナンチュアと申します。貴女様が無事に目覚められてよかったです」
ちゅっ
手の甲に口づけをされ私はフリーズする。
見ず知らずのどっかの王子に男性免疫力のない女子大出身の私が手の甲にキスをされて内心「ないわぁぁぁぁ」と思ったのと、片頬をひきつらせたのは仕方のないことだと思うんです!!
むしろ口にしなかっただけ褒めてほしい。
イケメンだから何しても美化されるとは限らない