第1夢 序曲4
さっきまで寝すぎて、全然寝られなかった。
ベッドの上でぼーっとしてるのもつまらないし、保健室の中を探索しまくるのも無意味だと思った。
体調もだいぶ良くなったし、暇だから、とりあえず学校の中を歩き回ることにした。
保健室のドアを開けると、真っ赤な夕日に包まれた昇降口があった。
その先のカフェテリアから人工的な光が漏れ出ているのが見えたのを理由に、その場所へと足を踏み入れた。
全面ガラス張りだから嫌というほど夕日が差し込んできているというのに、なんでコイツは電気をつけてんだ。
カフェテリアの中の自動販売機スペースの一角にいた、大量のペットボトルやら缶ジュースやらを持った赤髪ポニーテールの少女が、俺に気づいた。
「あ、先生。やっと起きたんだな。おはようございます」
「ああ。おはよ」
「もう体調は大丈夫なのか?」
「ああ。……たぶん」
「ということはまだ大丈夫じゃないんだな」
「!」
いきなりバレたし。うっわ、恥ず……。てか俺、クソダセぇ……。
「……やっぱり。バレバレだな」
「心配……してくれるのな」
「そりゃそーだっ。だって、たった一人のこの学校の先生なんだもん」
「え、そうなの?」
「そーだっ」
「へぇ……」
そんな学校があるのか。しかもここに。
「あ、自己紹介してなかったな。あたしは二年の橘 真菜だ。よろしくなっ」
「ああ。よろしく」
「それじゃあ、あたし急いでるから。またなっ」
「ああ。また」
彼女はそのまま、大量のペットボトルやら缶ジュースやらを抱えて走り去っていった。まるでそれが、幻想であったかのように。
取り残された俺は、静かにその場を立ち去ることにした。