第1夢 序曲3
目を開けると、真っ白な天井があった。
「おはようございます、先生」
「うおぇあっ!」
思わず驚いてしまった。
声がしたほうを見ると、あの男子が椅子に座ってこちらを見ていた。
よく見ると、整った顔立ちをしている。
黒髪ストレートをボブの長さにカットし、少し長めの前髪から見えるタレ目に黒縁のメガネをかけている。
色白で背はやや低め、華奢な体つきをしているため一見女子に見えるが、俺が彼を男子だと断定したのは、彼だけズボンを履いていたからだ。
彼は今、片手に本を持っている。
「驚かせてしまって、すみません」
聞き取りやすいアルトボイスだ。
「……あの、誰?」
「僕は夢神 優と言います。この桜高校の三年生で、生徒会長を務めているものです。自己紹介もせずにすみませんでした」
「ふーん。で、なんで保健室にいるの?」
「ああ、先生が急に倒れたので、運びついでに看病を……と思いまして、勝手ながら入らせていただきました。ダメでしたか?」
その上目遣いはアウトだろっ。……男として。
「いや、別に俺は構わんが……」
「体調はいかがですか?」
「まだちょっと頭が痛いが、それ以外は大丈夫だ」
「それは良かったです」
そう言って彼は微笑んだ。
「今は何時だ?」
「午後五時三八分二七秒一九です」
「うん。細かすぎる回答をありがとう」
時間をだいぶ忘れていた。
「先生に記憶と感情を一気に流し込んだので、脳への負担が大きいはずです。でも、さすがに八時間以上も寝れば大丈夫そうですね」
俺、そんなに長い時間寝てたのか……。てか、どうりで頭が重いわけだ。なるほどなー。
「だいぶ回復してきたみたいですし、僕はもう行きますね」
「……ああ」
彼は静かに椅子から立ち上がると、静かに保健室から出て行った。