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みんな同じ夢をみていた  作者: 海那 白
第1夢 序曲
15/40

間奏 深夜の秘密の生徒総会

 二二時。

 その瞬間、男子寮、女子寮、及び学校の敷地内全ての明かりが「星に願いを」の音楽に合わせてゆっくりと消えていく。

 そう。

 消灯の時間だ。


 そんな中、懐中電灯を片手に動き出す人影が一つあった。

 たった一人の先生が爆睡しているおかげで、やすやすと女子寮の門の前にたどり着いてしまった桜高校唯一の男子生徒、夢神 優。

 ただ彼は、覗きなどをする気は全くなく、女子生徒に用事があるだけなのだ。

 彼は女子寮の正面玄関の扉を、丁寧に二回ノックした。

 やがて、扉が開いた。


「はーい」


 楓の声に、彼は軽く手を挙げて返事をする。


「やあ」

「ああ、優。入ってよ」

「お邪魔します」


 楓が彼を中へと通し、女子寮正面玄関の扉を閉める。

 女子寮と男子寮の間取りは全く同じで、そこにもまた、食堂があった。

 その一角に、真菜、水樹、麦、桃、真子、柚希、聖菜、華菜がテーブルを囲うようにして座っていた。 そこに楓を入れると、この桜高校の全女子生徒が集まったことになり、さらに優を入れると、この桜高校の全生徒が集まったことになる。

 優と楓が彼らの近くにあった椅子に着席する。

 一番最初に口を開いたのは優だった。


「では、進捗状況を教えてくださいますか?」


 彼からの質問に一番最初に口を開いたのは、楓だった。


「なんとか吹奏楽部の顧問にさせることはできた」

「自己紹介の方はみなさんされましたか?」

「うん、やったよーっ」

「一応な」

「まあ、これくらいならですね」

「その時に、なにか聞かれたりはしませんでしたか?」


 そう言ったと同時に、優の目がきゅっと細められる。

 女子たちは少しの間考えていた。

 最初に答えたのは、水樹だった。


「あ……えと、私……職員室の前で……自分以外の、教師は……いない、のに……なんで……たくさん……机とかが、あるのか……聞かれた、から……分から、ない……て、答えた……」


 次は、楓だった。


「僕は、先生を呼びに行った時に、桜家一族とは何かについて尋ねられたから、この学校の創設者の血統でエンブレムを付けている奴がそうだ、とだけ伝えておいた」


「……そうですか」

「間違ってはないですねぇ」


 柚希が言った。


「そんで、アンタからお報告は?」


 それを聞いて優は作り笑いを作る。


「ああ、それもそうですね。すみません」


 彼女らの視線が優へと集まる。


「それじゃあ報告します」


 ゴクリ……と彼女らの喉が鳴る。


「彼は、記憶と感情を取り戻し、今日から男子寮で寝泊りすることになりました」


 この言葉を聞いた瞬間、彼女らは安心したのか、ほっと胸をなでおろし、気が抜けたのか、思い思いの言葉を口にしていた。

 だが、続く優の言葉でそれも止まる。


「ただ……」

「ただ?」


 そう真菜が反復する。


「僕の嘘が一つ、先生にバレてしまいました。さすがみなさんが見込まれたお方ですね」


 桃が口を開く。


「それってー、先生にバレてもいい嘘なのー?」

「はい。問題ありません」

「ならいいけどーっ」


 桃からの偉そうな返事を優は華麗に無視する。


「では、僕からの話は以上です。そちらはほかに話などはあったりしますか?」

「ないでぇ~すぅ」

「それじゃあ、これにて解散としましょう」


「……なあ、優。今夜も来てくれるのか?」


 そう問いかけたのは、楓だった。


「ああ。今から行くよ」


 そう言って優は楓とともに席を立った。

 他の人たちもそれを合図に席を立ち、思い思いの行動を始めた。

 

 ――これにて、今夜も深夜の秘密の生徒総会が終了した。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ミステリアスですね。そもそも先生が受け取った情報は真実なんでしょうか? まだ途中までしか読んでいませんが、これから楽しみです [気になる点] 構成上は仕方ないと思うのですが、序章で一気にキ…
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