フォークはナイフに打ち勝つのか?
「おいおい、そんな話があるのか?」
タンペンの先輩、コウテイは冗談話っぽく扱う。
「ですよね、」
タンペンは相談してしまったことに後悔し、やはり、心の中にしまいこもうと決める。しかし、
「だけど、俺も変な夢を見たことはある。」
「え?どんな夢なんですか?」
「それはな……」
大事そうに抱え込んだリスのように、もじもじとした感じで
「フォークがナイフに打ち勝つ夢を見たんだよ」
「なんだ、それは?」
思わずタメ口でいってしまったタンペン、思わず、内心アッとなったが、別段、コウテイは気にするそぶりも見せなかった。
「変な夢だよな、ちょうど、あのときは猛勉強してた時で、辛かったなぁ」
「受験戦争ですか?」
「そうなのよ」
「それで、いつも飲んでたのがブラックコーヒーで全然眠れてなかったわけよ」
「当然、そうなりますね」
タンペンは瞬時に、なぜ、カフェインを飲むと思った。
しかし、猛勉強してたという言葉から、眠れる時間があれば、勉強したいという精神が働くのも別段、おかしくはないのだろうと思って、納得した。
「それで、変な夢を見たのかと思った、よくいうじゃん、ペンはなんたらより強しって」
「まぁ言いますけどね、
受験に武器を持ってきたらいかんでしょ」
「それと同じで、そんな感じでフォークはナイフに打ち勝つのかって言う感じの夢の中の諺ができたってい感じで、」
「変な夢ですね」
「ミステリーだな」
そして、二人は仕事に従事する。
ステーションの仕事は忙しく、大変だ、
息をつく暇もない程に、
「あの、剣を使う職ってありますかね、」
列車に乗るホームの案内の他に、職業の相談も来るのも大半の仕事である。
向こう側の想像世界に向かう前にここで、決めておいた方が、
経済的にも安くすむらしいからだ。
「あー、そうですね……」
タンペンは困る、なぜなら、将来をタンペン自身のアドバイスに委ねる責任放棄に思えてしまうからだ。
しかし、任せられた仕事は遂行しなければならない。
「剣を使う職は……」
パソコンを使う、正直、多機能の携帯の方が、
効率がいいのではないかとタンペンは思っているが、
キーボードを打つ音がなにげに好きなので、憎めないのである。
「ないですね、すいません」
「冒険者という職業もですか?」
「冒険者という職業は向こうの世界では存在しません、」
男は尋ねた
「なぜ……ですか?私は今まで作品の中の世界では冒険者というものは職業として成り立ってたのですが」
想像世界においては、
ペンはなんたらより強しという誰かの言葉に従って、
成り立ってるからであり、
武器の所持は禁止されている。
例外があるのは、法を犯したものを裁くときである。
「じゃあ、暴力という職業はあるのですか?」
「それはないですね、正直に言うと、
ペンを使った職業に就くことが義務ですから」
「なぜ、
なぜ、向こうの世界に義務されなくてはいけないんですか!?」
「なぜ、なぜか?」
疑問に思っていなかった、タンペンの口が濁る。
「私の世界では武器を持ち、邪悪な魔物を倒すことで、英雄視されていた、武器を持たなければ、世界は救えなかった。じゃあ、なぜ、武器を持たなくても平和と言えるのか!」
「すっすいません、言っている意味がわからないです」
その言葉を言った、タンペン、どう対応していいか自分でもわからなくなった。
相手は取り乱したかのように武器を取り出す、
剣だ。
「俺は、向こうの世界にも魔物はいるんだと信じてるよ、だからなぁ、あっちの世界では救えなかったバッドエンドの世界にはしたくないんだよ、作者の好みとかでそうなっちまったからな」
タンペンの首筋をなでる。
剣が鋭いので痛い、幸い、刀の峰辺りであるから、
まだ、斬ろうとはしていないといえど、
言葉次第によっては殺すことも
念頭に置いているのだろうと考えられた。
「あ、えっと……」
評価されない作品はたくさんある。
タンペンはそれをよく見ている。
昨日だって、自殺した作品が発見されたのもある。
毎日のように消えていく作品、
向こうの世界で、志、新たに生きていったり、
このステーションで活躍している作品の中の登場人物もいる。
だが、タンペンの目で、
今回のケースは想定していなかったようだ。
「さぁ、俺を武器を持ってもいいような職はないか言え!」
タンペンは怖かった。
昨日見た夢が正夢のように、
コウテイに話した夢が現実になってゆくように思われた。
本当にペンは剣よりも強いのだろうか、
と向こうの世界の理念に疑いを向けたくなってしまう。
本当のことを言うべきか、
しかし、彼の行動に疑問を持つ
タンペンの頭のなかはぐちゃぐちゃになっていた。
「あっ、あっ、」
そうこうしていると、
「お客様、
私と一緒に事務室の方で相談とでもいきましょうか?」
「なんだと、俺は、今、こいつに聞いてるんだよ!黙れ!」
「言うことは聞けませんか?」
コウテイの目が変わる
「ここでは、武器を持つことは禁じられています」
「俺は作品だぞ、別にいろんな作品がいて、いいじゃねぇか」
「ですが、ペンは剣よりも強しという言葉を知らないのですか?」
「はっ、知ってるよ、だが、表現の自由ってものがあるだろうが、作品の中に描かれた武器を持ってたら、それは、ペンで描かれたものだからいいんじゃねぇかよ」
「ですが、この世界では現実ですが」
「あっ、確かに……」
男は納得する
「だから、ステーションに来たら、郷に入れば郷に従えというようにルールに従ってください!」
コウテイは言った。
「あっ、はい……えっと、武器の仕事は」
「ありません!」
「わかりました……」
彼はしょんぼりとして帰っていった。
タンペンは焦ってしまったことを後悔したのか、
コウテイの顔を見ることが出来なかった。
「あっ、待ってください」
コウテイは呼び止める。
少し、耳打ちすると、
男は喜んで、ステーションの列車の方に乗っていくのだった。
しかし、反対にタンペンは
自分の悪口を言われたのではないかと
少し、不安になるのだった。