96 カウンター再び
僕は左利きだが、そうだと分かった日から左右均等に身体を使うよう心掛けた。今は両利きに近いが、左の方が精度が優れているような気がする。それを踏まえて構えを決めていこう。
・右構え(右足前) …… サウスポースタイル
防御や刻み突き(ジャブ)を右手で行う。
とどめの一撃は左手。
・左構え(左足前) …… オーソドックススタイル
左手で牽制し、メインは右手。
左右をスイッチする事も頭をよぎったが、何方かにしぼろうと思う。両方使うとなると中途半端になってしまう。オールマイティよりスペシャリストだ。
一般的にはサウスポーが有利とされるが、その理由は単純にサウスポーが少ないからだ。右利きからすると、サウスポーとの対戦経験が少ない為にやり難さを感じるらしい。それだけの事である。
世界に右利きが多ければ、社会制度や文化も右利き用が多くなる。文字の書き方を考えてみても、右手書きが前提となっている。
日常生活において、左利きは右向きの社会に合わせなくてはならない。
横暴である。マイノリティーの左利きに権利を!
…と主張する活動家なんておるんかねと思い調べた事があったが、どうやらおるらしい。日常生活品はともかく、楽器のような微妙な感覚が求められる物については理解できるように思う。
うーむ。奥が深いぜ。
前世の経験では、幼い時は全て左手を使っていたが、それでは将来不便だという事で右に矯正された。その結果として両利きに近くなり、微妙な感覚の違いは残るが用途によって使い分けていた。
パワーの右手に精度の左手といったイメージ。
普段は右手を使う事が多い為、右手の方が力が強くなるが、微妙な作業では生来の利き手である左を使っていた。差別なんて事は一度も思わんかったけどね。
さて、この世界も左利きが少ないらしい。僕の周りを調べてみたが、僕以外では格さんだけが左利きで、他は右利きであった。前世の比率と大きな違いは無いように思う。
よし、サウスポーでいこう。右構えだ。
構えが定まったところで具体的な動きを確認していこうと思う。基礎の右構えでも細かく分類すれば、前屈立ちと後屈立ちがある。
前屈立ちは前足、後屈立ちは後ろ足に重心の比重が置かれる立ち方であり、攻撃か防御の何方に備えるかの目安だ。ここら辺は状況に応じて判断するしかない。
今回の戦略だが、カウンターの先の先、または後の先を狙って行きたいと思う。だってさ、いきなり殴りかかる奇襲攻撃が一番強いのは分かるが、そりゃ只の狂犬やぞ。そして武器に加えて魔法も使わないと決めた。(治療魔法除く)
ぶちのめすと決めたが、それはあくまで最後の手段だ。普段から喧嘩を仕掛ける口実を虎視眈々と狙えってか。それ、力の暗黒面に堕ちとるよ、君ィ。
再びカウンター勝負だ。剣道では負けたが格闘技で汚名返上といこうか。
カウンターについて考えてみる。そもそもだ、相手が先に行動を起こしているのに、後発のカウンターが先に当たるのは何故なのか。
後出しなのに先に当てる技術、それがカウンターだ。具体的な理由を考察すると以下のようになる。
1. 純粋な拳速が違う
素人と経験者では基本スピードが違う。マイク・タイソンのシャドーをネットで見た事があるが恐ろしく速い。仮に僕が先制パンチを繰り出したとしても、余裕でタコ殴りにされるのは間違いない。基本性能を底上げする事も必要となる。
どの格闘技でも、良いパンチを打つためには脱力が大事なのは経験者の常識だ。誤解され易いものに、筋肉を付け過ぎるとスピードが落ちるというものがあるが、そんな事は無い。筋肉はパワーの源であり、パワーはスピードを生みだす。
世界的に有名な漫画の中で次のような言葉がある。
「こんなに膨れ上がった筋肉では、スピードが殺されてしまうんだ。」
関節が満足に動かない程の異常な肉付きなら分からんでもない。そもそも彼らは宇宙人やからね。地球人でも鼻のないヤツがおる。突っ込むのが野暮ってもんや。
しかし一般的な人間は、拳速を速くする為に筋肉が必要だ。筋トレの結果、拳速が遅くなったと言う人がいれば、それは力の使い方が下手という事だ。大事なのは効果的な力の使い方である。
パンチを打つには腕を伸ばさなくてはならない。始めから握りこぶしを固めれば関節も固まってしまい、スムーズに前へ押し出せない。適度な脱力が必要だ。
ジャブやストレート、刻み突きに正拳突き。フックにアッパーなど。
パンチの種類は多いが基本は同じで、始めに拳は握り込まずに力を抜く。その時に力が入っていると、それこそスピードが力に殺される。力の使い方を間違えてはいけない。
力を使うのは、拳を前へ突き出すスピードの為だけに使う。そして拳が攻撃対象に当たる時に拳を握り込む。その時が最大の力を開放させるべき瞬間だ。
パンチに破壊力を与える要因は重量とスピード。
これらを効果的に使って破壊力を得るのが、パンチの基礎テクニックである。




