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輪廻の果てへ  作者: 葉和戸 加太
三章 アルジャーノン計画
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93 許されぬ一線

 先程までは他人の脱税を汚ねえと言っていたが、いざ自分に税金が掛かるかもしれんと思うと、何とかならんのかと心が乱れる。


 所詮しょせん、僕も俗物やったか。


 そりゃ何とかなるもんなら何とかしたい。それが本音だ。しかし、自分の信条に背いてまで対策を練るかと問われれば、それは違う。


 これぞ男のやせ我慢よ。


 払え言うんやったら払ったろうやないか。ただし、無駄遣いしたら許さん。


「細けぇ事はどげんなっか良う分らんのだけどね。」


 ゴンも詳しくは分からんらしい。今は情報だけを頭に入れておこう。下手の考え休むに似たりだ。そんな事より、今はキュウをどうするかが問題だ。


「少なくともコチラからは手を出さん。だけどさ、正直どこまでキレずにいられるか自信が無わ。皆に迷惑はかけたく無いし、どうしたらええんやろ。」

「一度ぶちのめしたらええんやなかか?」


 おおぅ、ワカさん過激やな。そういや島一族は基本スパルタやったな。


「でも、子供だけで済めばええけど、この話は親も一枚かんどるってのが怖いな。家族に迷惑はかけたないから、出来る限り我慢するわ。学年が上がれば組替えでおさらばや。」

「おはんが良いなら良いけど、あまり無理はするなよ。」


 終わりが見えているなら何とか耐えられるかもしれん。それに意地悪してくるのは、キュウとその取巻きだけだ。ただのアホやと思って無視するに限る。


 キュウを取巻くグループは、彼と同じ商人と、武士の子が各1人。この武士階級の子は、剣道で僕が勝てんかったヤツだ。あの試合以後、取巻きに加えたらしい。ようそこまでやるわ。


 残る1人はキツい言葉遣いをする女の子で総勢4人。彼女は整った容姿をしているが、とてもお近づきになりたいとは思えない。肝心の心がブサイクやと、美人も台無しやな。


 僕ら三人にユキちゃんを加えたグループが、彼等と対立しとるって感じだ。


 始めのターゲットはユキちゃんだったが、僕が学校の支援を勝ち取った件を境に、ユキちゃんから僕にターゲットが移った感じがする。


 そんなこんなで精神的に宜しくない日々を送っていたのだが、ついに僕にとって無視できない事件が起きる事になった。


 恐れていたものが来た。家族に迷惑が掛かり始めたのである。


 被害といっても軽いもので、ケン兄とハナ姉が、キュウの取巻き連中にからまれたのだ。からんできたのはキュウの家で雇われている従業員の子弟で、学年が上の連中であった。


 恫喝されただけで他には何も無かったが、僕としては許せない出来事であった。あんにゃろう、超えてはならぬ一線を超えやがった。


 自分の事だけなら我慢するが家族は許さん。やってくれるぜ。


 先ずは家族に状況を説明し、ケン兄とハナ姉に迷惑を掛けた事に謝りを入れる。


「気にするな。アイツらイキってるだけの半端モンだから。」

「そうそう、嫌われものが群れてるだけだからね。」

「いや、そうは言ってもさー、集団で威嚇されると怖くないの?」


 個人では大したことないヤツが、群れた途端にイキりだすのは良く見る光景だ。情けないと思うが、集団の力は侮れない。対策を考える必要があるだろう。


 また学校外の問題、実生活で何か不都合は起きないだろうか? キュウの実家がどれだけの力があるのか、そして子供の争いにどこまで関与してくるのかだ。


 家業の病院で扱う繊維といえば衣服と包帯だが、仕入れが出来なくなる恐れがあるのだろうか。


 医療魔法で処置をするとはいっても、包帯などを使用するケースはある。患者に体力が無く、医療魔法に耐えられない場合などだ。魔法も万能という訳ではなく、応急措置だけ施し、後は自然治癒に任せた方が良いものもある。


 これを確認すると、普段着の藍染めを含めキュウの店とウチの取引は無かった。彼の店は上流階級向けの品をメインに扱っており、庶民の生活とは縁遠い高級店とされている。


 藍染めでも高級品は存在するが、彼の店で取り扱っていない。藍染めを着ている、即ち商売敵なりという理屈で、始めから敵対心を持っとったかもしれん。


 心の狭いヤツめ。ま、これは推測に過ぎないけどね。


 これ迄の話に加えて、さらに皆の知恵を借りながら分析すると、その背後関係に社会階級の対立という構図が透けて見えてきた。


 僕やユキちゃんは言うに及ばず上流階級では無いが、ワカやゴンにも複雑な事情があるらしい。


 いや、ワカは幹部の子やから上流以外の何ものでもないやろと思ったが、幹部にも派閥があると、佐助さんが教えてくれた。


「確かに島一族は重要な役職を占めてはいるが、所詮しょせんは外様の田舎者だと見下す者もいるんだ。特に追い出された形になった、元々この地を治めていた侍にその様な意識があると聞くな。」

「へー、でもさ、それって恩知らずなんじゃないの?」

「喉元過ぎれば熱さを忘れるとも言うしな。そこら辺は複雑なんだよ。」


 旧権力者と新興勢力の抗争が、上流階級と中流層以下の対立に拍車をかけたという見方がある。現在の権力ポストで上位なのは新興の島一族だが、旧権力者は過去の実績により御用商人達と深い繋がりを保っており、無視できない影響力がある。


 しかし、商人というものは利によって動く。このままの状況が続けば、政治の舵を握っている島一族が有利となるのは間違いない為、己の立場を見直す御用商人達も出始めているという。


「このままだとジリ貧だからな。今は巻き返しを狙ってるらしい。」


 なんだか、クソ面倒くさい事に巻き込まれとる気がするぜ。

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