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輪廻の果てへ  作者: 葉和戸 加太
三章 アルジャーノン計画
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92 学校での問題

 魔術契約を終えたが、何か劇的に変化したものはない。成果は水栓便所の普及率に伴い現れてくると期待したい。


 これまでは全力で突っ走ってきた。しばらくは、ゆっくりじっくりいこうか。果報は寝て待て。まさに寝ていながら大金を稼げる可能性が有る。不労所得ってヤツだ。


 大きな金額を動かせるようになれば、上下水道のインフラ投資をしても良いかもしれん。さらなる社会衛生に貢献できるだろう。


 ただ、今は夢物語に過ぎないので、捕らぬ狸の皮算用ですな。落ち着いたら次の目標を設定しますか。


 実は、次に目指すものは既に頭にある。


 しかし、今度ばかりは慎重になる必要がある。その望みは失敗した時に取り返しのつかなくなる可能性が高いからだ。


 次回の目的に必ず必要となるもの。それは微妙な魔力コントロールを極める事。それには普段やっている病院の手伝いがとても良い練習になる。言い方は悪いが、人体実験をしとるようなもんやからね。


 当然、人様のカラダやから慎重にやっとります。


 さて、学校の授業では水属性が終わり風属性の授業が始まった。未だ習得していない技術なので、真面目に受けようと思う。


 授業内容以外で変わった事といえば、副級長の僕への態度が変わった。元々仲が良い関係では無かったが、最近は敵意のようなものを感じる時がある。


 なんやねんコノヤロウ。


 コイツとは合わねえと思っていた為、関わり合いになるのを避けてきたのだが、最近は以前に増して、言動に明確な悪意がある。例えば連絡網を回さなかったり、僕の机の側を通る時に身体をぶつけてくるなどだ。お陰で墨がこぼれちまったのに謝りもしねえ。


 ふざけんな、ぶっ殺すぞ。


 嫌いなら嫌いでええから、関わってくんじゃねえよ。お互いにちょっかい出さんかったら平和やんけと思う。


 ヤツの名前はキュウと言う。商人の息子だそうで、嫌味なくらい派手な高級品を身に付けている。


 高級品かもしれんが趣味が悪い。こんなんに使われた生地が可哀想だぜ。本人は傾奇者を気取っているらしいがね。


「最近んキュウんやり方は目に余っな。心当たりはあっとな?」

「いや、まったくもって分からん。何も身に覚えがない。」

おいも目にした時は注意しちょっが、止むっ様子は無かごたっな。」

「我慢してきたがそろそろ限界やな。いつキレるか自分でも分からん。」

「多分だが、僕に思い当たっものがある。」


 ゴンは天都にて格付け合戦を経験した強者だ。その意見は参考になるだろう。


「何なん?」

「こん前さ、ハルが学校ん支援を受けたやろ。」

「うん。それと関係あんの?」

「キュウも企画をだしちょったが、落ちたらしい。」

「そんで逆恨みか。そんなん自分の実力不足やろ。」

「根性が曲がっちょっな。」

「そいが単純な問題じゃなかどな、コレが。」


 ゴンの情報によるとキュウの出した企画は、学校に制服を導入する案だったそうである。キュウが友人と話をしているのが偶然に耳に入ったという。


「キュウん家は繊維問屋や。自分んトコで扱う商品を売りたかったて思う。」

「でもさー、こっちはイチから全部やって提出したヤツやぞ。自分で裁縫したり型を作ったんならともかく、そんなんと比べられたくないわ。親の七光りやろが。」

「そう、そこだ。そこが問題なんじゃ。」


 この国では子供に税金は掛からないが、相続税というものは存在する。資産家のなかにはそれを見越し、合法的に資産を移す者もいるという。


 法の穴を突いたやり方だが、違法行為ではないので取り締まれない。事務方であるゴンの親も頭を痛めているそうだ。


 そのやり方なのだが、未成年の子供を起業させ、形の上だけは我が子を事業主にするのである。今回の話を例に説明してみよう。


 キュウを中間業者として使うやり方である。


 中間業者は生産者と消費者の中間に位置し、商品の流通を担っている。手数料や中抜きといった言葉があるように、生産者と消費者が直接取引をすれば余計な金額が掛からない場合もあるが、彼等を廃すれば全てが良くなるという単純な問題でもない。


 中間業者のメリットとして、大量に商品を扱う事で値引きされやすい事がある。


 例えば小規模な小売店で年間100個扱う商品があるとする。これらの小売店を100店舗まとめたら10,000個の仕入れとなる。


 百個で交渉するよりも一万個で生産者と交渉した方が有利で、これが中間業者を通すメリットの一つだ。値引き交渉で仕入額が下がれば、その差額の一部が業者の取分となる。


 別の見方をすれば、仕入担当を外部委託アウトソーシングしたのが中間業者だと言えなくもない。中間業者は複数の生産者と繋がり、業界の動きにも熟知しているので、アドバイスを得られる利点もある。


 逆に生産者からみれば不利と思えるが、自分で売り込みをしなくても消費者まで売りさばいてくれる事を思えば、営業を外部委託アウトソーシングしているとも言える。また、自社店舗などの設備投資が不要となるかもしれない。


 お互いにメリットがあるからこそ、利用し利用されやっていけるのである。


 ただし今回の件に関しては、完全なる中抜きと税金対策の印象が強い。キュウに資産を移して将来の贈与税対策と、現在が未成年である事の非課税措置だ。


 所謂いわゆるペーパーカンパニーってヤツですな。汚ねえ。汚ねえよ。


 ゴンが言うには天都で流行ったやり方らしい。今は対策が出来て使えなくなったが、首都に比べ地方は未だ法整備が遅れているとの事だ。


 ふーん、中央と地方では法が違うのね。自治権が強いのかもしれんな。


「家族ぐるみでやっとんのなら、一家まるごと敵に回した訳か。」

「今は僕ん親父がきばっちょっで、いずれ禁止されるって思うけどね。」


 え? って事は僕にも税金が掛かってくるかもしれんの?

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