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輪廻の果てへ  作者: 葉和戸 加太
二章 魔術契約
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85 儀式とプレゼンテーション7

 契約書の細部を取り決め、何とか合意に至る事が出来た。具体的な文書の作成は真魚さん任せだ。技術料の免除については、正規の率で僕の取分を受け取った後に返金する事にした。契約の内容は出来るだけシンプルにしたい。これなら例外措置を契約に記載する必要は無い。


 この事で喜んだのが無二斎師範だった。


「ほっほう、5分の率で戻してくれるんじゃな?」

「はい。契約上、一度は正規の率で代金をいただきますが、先ほどの話し合いで決めたように、師範達は特別免除です。僕の権利である5分をお戻しします。」


 格さんが耳打ちをしてくる。


「師範さん、にっこにこやな。」

「そうやね。門下生も多いし、お金に困っとるような気はしないんやけど、何かあるんかな。」

「どうなんやろうな、分からん。」


 僕達の気配を察知したらしく、照れくさそうな顔で説明してくれた。


「いやな、ワシん使える小遣いが増えると思うてな。」

「ん?」

「ウチん大蔵大臣がきつってなあ。まり、ワシんかかあじゃ。」

「師範とこも、かかあ天下でしたか。」


 源太さんが親近感を覚えたようだ。そいうや、島一族の女性は強い人が多いってゴンが言っとった気がするな。


 今回の金の動きを説明すると、師範が代金の105万を支払えば、後で5万が戻ってくる。この事をかーちゃんに黙っていれば、これをヘソクリに出来るのだ。105万とは、あくまで例としての金額なのは言うまでもない。


「師範、裏金がバレても責任は取れませんよ?」

「ワシが責任を取るから、君には迷惑が掛からんようにするよ。」


 僕としては、他人の家庭事情に介入するつもりなど無いが、これが脱税に繋がるのなら、バレたら逮捕されるんじゃないのか? 未成年無罪は適用されるのか?


「今さらやが、脱税なんて、そんな言葉どっから覚えてくるんや。」

「確か、患者さんがそんな話をしとった事が、有るような無いような。」

「いずれ学校で教えるが、税を払う義務は元服してからだ。今は大丈夫だぞ。」


 では、とりあえずの心配事は無くなったし、魔術契約の儀式へ移りますか。


 本日二回目の契約だ。ここで整理しておくが、一度目の契約は、特別学級の一年一組に籍を置く生徒のなかで、一人だけが選ばれ援助を受けるものだ。格差是正の為に、一般庶民から選ばれる事が多い。


 二回目の援助は、一年と最終学年の役員が対象で、優秀な企画が提出されれば、審査の上で援助してくれるというもの。これまでの努力が報われた気がする。


 ただ冷静に考えてみると、精神年齢はともかくとして、知識はそれなりに有ると自負している。そんなヤツが小学生に交じり無双しとると思うと、如何いかがなものかと感じなくもない。普通の子が受けるべき支援を奪っとるんじゃないのか。


 大人げないんじゃないのかね。えぇ?


 いやいや、僕も生物学的には子供に違いない。それに今回の水栓便所は社会全体に恩恵がある。間違った事はしとらん。そう考えて自分自身を納得させる。契約を結ぶ事について、後ろめたさを感じる必要など何も無い。


 人間同士の魔術契約は門の技術と良く似ている。


 己の心にストッパーを掛けるのである。


 門と違うのは個人ではなく複数で行う事と、その履行を神に誓うという点。最後の違いは、強制的に外部からの力により門を閉じるという事の三点だ。


 その違いを例えて説明すると、自己暗示による門は自分の意思で閉じる内鍵で、契約のよる門は外鍵となる。内鍵はホテルなどで良く見られるもので、内側からしか外せないストッパーだ。逆に外鍵は外部からしか外せない物となる。


 外鍵が使われるケースだが、認知症の人が徘徊する危険防止に使われる場合がある。これは虐待に当たるのではないかという指摘もあり、難しい問題がある。


 かつて認知症の老人が電車にはねられ、JRから損害賠償を求められた裁判があった。地裁では遺族の責任が認められ、賠償の全額を支払うように命じられた。介護に携わる人々にとり衝撃的な判決であった為、衝撃的なニュースだった。


 この裁判は最高裁まで争われた結果、JRの請求は退けられた。介護問題について考えさせられた事件だったので、強く印象に残っている。介護はどうあるべきか、悩みは尽きない。


 この魔術契約を認知症対策で使えないだろうか。一瞬でも理性が働いている時に契約を行い、己で己の行動を縛る事が出来れば、勝手に出歩く事を防げるのではあるまいかと思える。


 だけどなぁ。


 だけど…… である。


 ここの平均寿命ってどんくらいやろ。認知症になる前に死ぬのかもしれんな。


 あー、やめやめ。今は契約に集中しよう。契約を記載した紙に、僕を含む当事者達が魔力を流してゆく。そして契約の締結が成された。


 さあ、次はいよいよ水栓トイレの説明に移ろう。ここで部外者となった真魚さんが退席した。


 うーん。実はさ、お寺の便所も狙ってたんだよね。水栓トイレを買ってくれへんかなと。さすがにそこまで甘くなかった。まあいいさ。技術料を含んだ正規の値段で買ってくれれば、それに越したことは無いのだから。

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