表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
輪廻の果てへ  作者: 葉和戸 加太
二章 魔術契約
82/306

82 儀式とプレゼンテーション4

「臭いと病気の原因は下水を伝って肥溜めから運ばれてきます。これを解決すれば全ての問題が解決します。」


 始めに現状の分析を行い問題点を見つけ出す。そして、新商品はこれらの問題をクリアしているとアピールするつもりだ。


 聞いた話では、魔法を使って臭いをなんとかしようとする試みがあったが、上手くいかなかったらしい。一般的な対策は風魔法で換気する方法らしいが、根本的な解決には程遠い。


 確かに魔法は非常に便利だと思うが、困ったら全部魔法に頼るってのもどうなんだろう。魔法ってのはドーピングみたいなもので、あまり頼り過ぎると魔法以外の文明が発達し辛いのかもしれん。


 これは魔力の無い世界を経験しているからこそ言える事であり、逆に魔法文化は何も知らない為、どっちもどっちだが、今回に限っては魔法文化に勝つことが出来ると思う。


「その解決方法は、肥溜めに繋がる下水管に栓をすれば良いんです。魔法は必要ありません。」


 反応が薄い。理解されてないようだが、これは想定内だ。だからこそ見本が必要と思い、苦労して作っとった訳ですな。


「じゃあ、どうやって栓をすれば良いんだ? 便所の蓋とは違うのかな?」


 いぶかし気な表情を浮かべた源太さんが尋ねる。


「その答えは水です。下水管を水で栓をする、水洗ではなく、水栓便所なのです。実際に見て確認して下さい。」


 僕の指の先には便器の見本が置かれてある。重要なのは便器そのものではなく、配管の形にある。見せたくない重要な部分は布で隠しておいた。今回の見本発表会で最悪なのは、アイデアだけ盗られて契約してもらえない事である。


 人を疑い過ぎるのは良く無いが、源太さんの人柄を知らない為、念には念を入れておいたほうが良い。


「底に水が溜まってるのが見えるな。でもね、便器に出した汚物は肥溜めまで流さないといけないよ。この底に溜まっている水はどうするつもりなんだい? 魔法は使わないと言うし、いまいち理解できないねえ。」


 水栓便所を知らない人からすれば当然の疑問だろう。汚物を肥溜めまで流す事が出来なければ何の意味も無い。


「これからが水栓の肝です。」


 懐から砂利と土を取り出し便器の中に放り込むと、それらが水中に広がり水を濁した。便器で用を足した後を模した訳である。


「これから商品の性能をお見せしますが、この土と砂利で汚れた水がキレイになれば、汚物が処理できたという事です。ここに注目して下さい。」


 指差した先には、細部を隠すために巻きつけた布から土管がはみ出ている。


 重力の下では水は高きから低きへ流れる。しかし、下水管が便器の下へ伸びているにもかかわらず、便器には汚水が貯まっており、流れ出す様子も無い。


 これからが商品の実演だ。水が入った木桶を手に取り皆に見せる。


「泥水を下水管で排出させる為には、さらに水を加えてやれば良いのです。さて、ここで問題ですが、この便器に水をそそいだらどうなると思いますか?」

「普通に考えたら、泥水があふれてまうわなあ。」


 格さんが反応を示す。反応してくれると手応えを感じられるので有難い。では、無反応と罵声ではどっちがええんやと問われると、そこは難しいように思う。


 否定であっても建設的な意見であれば有難い事だ。だが、どこまでが建設的意見で、どこからが罵声となるのか判断が難しい。純粋に助言したつもりでも、受け手が侮辱されたと感じる場合もあるだろうし、おとしめるだけの発言でも自分の糧として活かす事が出来る人間もいる。


 受け手次第な面もあるが、難しくて何が正解か分からん。分からんが、少なくとも今はそれを考えている時ではない。発表を続けよう。


 実演販売は客の反応が直接伝わるのが良い点だろう。実演に参加できる人数は限られてしまうが、チラシ等の宣伝よりも多くの情報を届ける事ができる。魔術契約の時とは異なり、今回は深くて狭い対象を設定した訳である。


「見とってください。」


 そう告げると、桶を高く掲げて水を便器へと注いでゆく。すると間を置かず配管

から砂利を含んだ泥水が流れ出した。


「おぉ?」

「さあ、便器の中を見てください。汚水が流れ出され、キレイな水に入れ替わっています。」


 皆が一斉にのぞき込むと、便器の底には澄んだ水が蓄えられていた。


「うーん、どうなっとるんだ?」

「ちょっと待った。一回俺にもやらせてもらっても良い?」

「何度でもどうぞ。」


 源太さんが自分でもやってみたいと言い出し他の者も後に続く。


 ふっふっふ。


 現代文明の恩恵を受けていた僕でさえ、この水栓システムを知った時には驚いたものだ。知らない時は当然の様に水栓トイレを使用していたが、海外で不便な生活を経験し、改めて気付くことが出来た。


 人間ってすげぇなと。知ってみれば簡単な仕組みだが、思いついた人は天才じゃなかろうかと驚いたのを覚えている。


「こりゃ面白いな。この理屈を教えてくれないか?」

「先生、こっから先は秘密です。」

「えぇ?」


 石神先生が不満そうな顔をするが、こっから先をタダで教える事はできまへん。こっちも商売ですからのう。


「この先が知りたかったら、僕と契約して下さい。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ