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輪廻の果てへ  作者: 葉和戸 加太
二章 魔術契約
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81 儀式とプレゼンテーション3

 無事に儀式を終える事ができた。


 魔法を扱えるようになる前に、魔術契約で魔力の覚醒が出来るか考えていた事があったが、この儀式を成し遂げるには魔力操作が必要となる為、僕が考えていた様な抜け道は使えなかったようだ。それとも、契約者が魔力を使わなくても締結する事が出来るのだろうか。まあ、今となっては関係の無い疑問ではある。


 さて、次は商品のプレゼンテーションが待っている。


 先ほどの魔術契約により何らかの効果があるかもしれんが、それに期待し過ぎるのは駄目だろう。先の契約内容はあくまで「対話」であり、「洗脳」や「説得」では無いからだ。


 人の意思に強制的に介入する事は、一部ではあるが、存在そのものを書き換える事にも繋がる。仮にその力が魔術契約で得られたとしても、それなりの見返りが求められるだろう。


 かつて他人を魔術で支配下に置きたいと願った支配者が、皆が己の声に従うようになる契約を求めた。その契約者は周りの関係者を巻き込み、悲惨な結末を迎えたとされる。人を呪わば穴二つの典型だ。


 他人を支配したいのなら魔術ではなく、金銭や暴力により奴隷とするほうが効率が良いとされる。それもどうかと思いますがね。ちなみに、北関市に奴隷制度なるものは存在しない。存在はしないが、社会的階級はあるようだ。


 奴隷という固定階級は無いが経済的な格差は存在する。貧困から這い上がる手段が無ければ、実質的な奴隷階級と呼んでも良いのかもしれない。


 その辺、どうなっとるのか良く分らん。


 兎も角だ、僕の選んだものは「対話」であり、話をする事が出来るってだけだ。狭くて深いのでは無く、広く浅い対象を設定した。そうでなければ人外にまで枠を広げる事は出来ないだろう。


 それにだ、この契約内容は支援してくれた学校側も了承済みだ。商品を売り込んでくる相手が、どんな商談も無条件に成功させる能力を持っている場合、怖すぎて相手に出来るかってもんや。


「私に他人を支配する能力を下さい。勿論もちろんアナタを含めてね。」


 こんなんアカンやろがい。願うほうも願うほうやが、叶えるほうにも問題あると思うよ。頭オカシイわ。


 幸いにも、僕の周りに頭のオカシイやつは存在しとらん。正攻法によるプレゼンを成功させないかんが、望むところだ。


 休憩をはさみ、ユキちゃんの親父さんである源太さんと、無二斎師範が合流して発表会の開始となる。商品の見本は既に用意されており準備は万端だ。


「えー、本日はお集まりいただき有難う御座います。」


 挨拶をしながら皆の表情を確認する。家族の皆はニコニコしながらこっちを見ている。子供の発表会を見守るような心境だろうか。


 源太さんは仕事に関わる内容な事と、娘と仲良くしている同級生のお願いとの事で、発表を見てくれるのも分かるが、無二斎師範は良く来てくれたもんだと思う。小さい子供が便所について熱く語っているのを聞き、興味本位で来ただけかもしれないが、その判断は正しかったと思わせたい。


 皆の度肝を抜いてやるぜ。


「臭くない衛生的な便所が完成しましたので、お披露目したいと思います。お気に召したのなら、厠の建て替え等ご検討ください。」

「立派なもんですな。」

「興味があると凄い集中力を発揮するんですが、集中し過ぎて周りが見えなくなる傾向がありますので、そこは心配してるんですよ。」


 無二斎師範と春絵さんがが話す声が聞こえてくる。


「今大事なトコやから静かに聞いとってくださいっ!」

「はーい。」

「すまんな。」


 うむ、宜しい。これは子供の宿題発表とはレベルが違うのだよ。レヴェルがね。


「先ずは、なぜ便所が臭いのかを考えてみました。」


 考える迄も無い。そりゃ汚物の臭いですがな。この世界の一般的な便所は、見た目は和式便所だ。便器に出した汚物を水で洗い流す方式で、配管が家外の肥溜めまで伸びている。臭いはその管を通って肥溜めから来るのである。


 この臭いを防ぐ為、使用しない時は便器に蓋をしている。正に臭い物には蓋だ。しかし用を足す為に蓋を取ると強烈に臭う。しかも、蓋をしているとはいえ完全に密封されている訳では無いので、蓋があってもそれなりに臭う。


 それ故に、便所は生活空間から外れた場所、離れに設置される場合が多い。夏は兎も角、冬はとても不便に感じる。


 臭いだけではなく衛生面でも問題だ。配管を伝って虫が這いあがてくる事も珍しくない。感染症も起こりやすくなる。これは改善せねばならぬ。


 でしょ? 春絵さん。


「そうね。だから厠へ行った後は必ず手洗いをする。清潔にする事がとても大事です。これだけでかなりの効果があるんですよ。学校でも徹底させて下さい。」

「便所へ行った事が皆に知られると、それをいじる者も出てくるからなあ。友達に知られんように、手を洗わずに済ます者もおるんだ。我々教師も気を付けてはいるんだがね。」


 便所に行った事が知られると、結界バリアー張り合戦が始まる時がある。


「あー! 便所に行ったなっ 結界っ! 結界っ!」

「結界無効攻撃~! 俺の触ったトコロから腐り始める~。」

「結界を二回張ったから無敵結界です~っ 攻撃は跳ね返されます~っ!」

「それを跳ね返す結界っ!」


 終わりが無い…… 疲れるぜ。当然だが、本当の結界バリアーは張られていない。そんな魔法が本当に存在するんかね。それは分からん。


 だが、便所の後に手洗いをしていないと感染症になる恐れもある。腐食攻撃ってのは、あながち間違いではない。



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