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輪廻の果てへ  作者: 葉和戸 加太
二章 魔術契約
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80 儀式とプレゼンテーション2

 この契約で望む物を分かりやすく言い換えれば、種族を超えたコミュニケーション能力をくれという事である。


 人間は社会を形成して生活する生き物である。会社という組織に属さず自営業であったり、日常生活で一人暮らしをしている場合でも、人間社会には属している。例えば衣服。アンタの履いてるパンツは誰が作ったんやっちゅう話だ。


 まさか綿花から作ったという猛者はおらんやろ。


 文明社会から隔絶された完全な自給自足生活も、やろうと思えば可能かもしれないが、著しく不便な日常を余儀なくされる。文明の恩恵が受けられないどころか、逆に環境汚染などの被害だけをこうむるばかりで、そんなのに僕は耐えられない。


 今の僕は、他人に助けてもられなければ生きていけない自信がある。家族が居なくなったら野垂れ死ぬしか無いだろう。


 群れという社会も大事だが、それを構成する個性にも個体差があるのも事実だ。しかしその優秀な個体も、社会があるからこそ力を発揮できる。集団に属するからこそ、他者の力を我が物にして成長できる。一人ではどうしても限界がある。


 個より集団が勝った例が、ネアンデルタール人とホモサピエンスの比較だ。


 現生人類のホモサピエンスより、地上から姿を消したネアンデルタール人のほうが体格も良く力が強かったとされるが、生き残りレースではホモサピエンスに軍配が上がった。


 何故だろうか。


 研究によれば、ホモサピエンスは体格こそ劣っていたが、ネアンデルタール人よりも小脳が大きかったという。小脳はコミュニケーション能力に深く関係すると言われている。


 これが正しいのなら、個の力で勝るネアンデルタール人を、集団での連携を重視するホモサピエンスが上回ったという事だろう。


 これからの人生において、僕は人間社会の中で生きてゆく。そんじゃあコミュ力を強化したろうやないかって事よ。


 かなり悩みましたがね。


 この世界は魔力なるものが存在している。前世よりも個人の実力が占める割合がデカいかもしれんが、人外との交流もあり得るのは面白い。やる価値は十分だ。


 契約を支援してくれる学校の責任者に内容を伝え、承認を得られたので儀式へと移る。


 儀式ときくと何やら難しく感じるが、至って簡単なものだった。誓紙に墨で内容を記載し、契約者の魔力を流したうえで火にくべる。それだけだ。内容を忘れない様に複製を一部作成して本人が保管する事になる。


 儀式を注意深く観察したところ墨から魔力が感じられた。おそらくは墨が重要となっているのだろう。作り方を教えて欲しいが無理やろうね。


 契約が成されたかどうかは天の啓示があるらしいが、何かが起こるんやろかね。誓紙の燃えた灰が風に乗り空を舞う。込めた魔力が拡散され、誓いの言葉が天地へ染み渡るのが感じられる。やっちまったぜ、もう後戻りできへんぞ。


 どうなるんやろと思っていると、何やら感覚がおかしくなってきた。何というか世界が鮮明に見えだし、周囲から圧倒されそうな存在感を感じた。


 大自然を目の当たりにした時のような感覚。巨大な滝の飛沫を浴びたり、巨木が生い茂る森林の冷気を感じると自然の偉大さを思い知らされるが、まさにその様な感覚に近い。これは願いが届いたという事だろうか。


 語りかけてくる声など聞こえないが、何となく理解できる。この世界の構成員に加わるか問われている気がする。


 拒否したところで、既にこの世界の住人であるのは間違いないが、より深く繋がりを持つ覚悟があるかという事だろう。正直、逃げ出したい気持ちになるが、もう遅い。一人だったら止めてたかもしれんが、皆が見てると思うと、カッコ悪いトコは見せられん。周りに流されて自分を見失うのは良く無いが、それを力に出来る時もある。


 心の中で願う。社会衛生に貢献できるよう努力するので、成果が認められれば、お力をお貸し下さいと。


 努力ってトコが弱気なのは認める。法律用語でも義務と努力義務では大きな違いがある。義務にどこまで強制力があるかで、それを怠った時の罰則が違ってくる。一般的には努力義務に罰則など無い。


 ただし、これは人が作った法律の常識に過ぎない。どこまで神様との契約に影響があるのかは知らん。


 誓紙を燃やす為に組んだ篝火かがりびの火が勢いを増し、ひと際大きな炎へと変わった。願いが聞き届けられた事を現しているらしい。このまま契約締結を望むなら、魔石に魔力を流して火にくべる必要がある。


 やるしかないでしょ。


 細かく砕いた魔石を右手で一掴みして火中に投げ入れると、炎の色に高温を示す青色が混じるようになる。


 このまま篝火かがりびが燃え尽きるまで待てば儀式が終了する。それほど時間は掛からないだろう。

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