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輪廻の果てへ  作者: 葉和戸 加太
二章 魔術契約
75/306

75 天王山の戦い3

残酷な描写があります。

 魔石の採掘が進むと魔石クズも比例して増えた。


 魔石は採掘後、純度の低い部分がカットされ、市場には品質の高いものが出回るようになっている。このカットされたものを魔石クズと呼ぶ。


 魔石と魔石クズの違いだが、どちらも魔力の結晶であり、本質的な違いは無い。違うのは魔力がどの様な作用を引き起こすのかを、使い手が操作できるか否かの違いである。


 例を挙げてみよう。風呂を沸かす時、薪の代わりに魔石を使う場合がある。この時は魔石に込められた魔力を火、または熱属性魔法を発動させる燃料として用いられる。この使い道を決めるのは使い手だ。


 ところが魔石クズになると、このように使い道を指定できない。魔石クズは状況に応じて反応するだけである。風呂を沸かす時、魔石で熱属性魔法を発動させた後で熱を更に上げるる為、周辺に魔石クズを撒くと、魔石の熱に魔石クズが反応して同じ熱属性魔法を発動する。まり、追加燃料を投入した形となる。


 魔石クズは安価で使い勝手が良く重宝され、魔石の産地以外ではめったに目にする事が無いが、北関市ではふんだんに手に入った。


 今回の戦いに、この魔法クズを利用した新兵器が使われる事となったのである。


 それは核に魔石を使い、その周囲を魔石クズで固めた西瓜すいか程の大きさを持つ球体であった。投石機にて投擲された球体が目標の上空で炸裂し、高温度となった魔石クズが辺り一面に降り注ぐ。


 前世で似たものを探すなら焼夷弾、若しくはナパーム弾だろうか。


 本来は港を防衛する為に開発された。広範囲に熱源をばら撒き船の帆、または船本体を焼くのである。野戦で敵味方が入り乱れた場面では使えないが、砦を攻める等の攻城戦では威力を発揮する。その名を火雨ひさめという。


火雨ひさめの準備は良いか。」

「は、整いましてござる。」

「海賊が陸で山賊の真似事か。こやつらには一分の同情も無い。焼き払え。」


 投石機に載せられた火雨に起動の魔力が流された。


「放てっ!」


 海賊達はこの兵器の存在を知らなかった。投石機そのものには見覚えがあるどころか、彼ら自身も良く使用するものだ。投石機を目にした時、気を付けるよう指示があったが、それ以上の対策は無かった。


 火雨ひさめの神髄は投擲された物体にこそある。放物線を描いて頭上に達したそれは、炸裂音を合図に無数の欠片となり地上に降り注ぐ。生まれたのは地獄である。


 高温の魔石クズが樹木を燃え上がらせる。最近の猛暑日で乾燥していたのに加え、海賊が飲料水の確保で水分を抜き取っていた為、非常に良く燃えた。


 魔石クズの雨を直接体に浴びた者もいた。それが衣服に付くと一瞬で着火した。気温が高いなかで砦の建設作業をしていた為に、ほぼ裸で作業をしていた者達も多かったが、彼らはそれ以上に凄惨な事態におちいった。


 火雨ひさめが身体に付着すると皮膚を破り肉に到達した。欠片が大きいものになると骨まで焼かれるケースもあった。身体にめり込んだ石の欠片は、魔力が無くなるまで高熱を発し続ける。生きながら内側より身体を焼かれ続け、悲鳴が耳をつんざく。


 高熱を発する欠片に耐え切れず、自ら手足を切り落とす者もあった。更には周り一帯の木々が燃える事により、酸欠状態も引き起こす。


 完全に想定外の攻撃により、海賊達は錯乱状態となる。


 山に籠ってなどいられない。そう判断した者達が統率も無く、逃げ出すように山から飛び出してくる。


「出てきたぞ、頭ドンジャラホイな奴等めが。殲滅せんめつせよ。」


 ナパーム弾は非人道的兵器として使用が自主規制されているが、今後、この世界で火雨ひさめはどの様に使われるのだろうか。


 火雨ひさめの効果は絶大であった。その結果、前哨戦は北関市守備隊の圧勝となる。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「ここに海賊どもが陣を敷いとったんか。」

「僕ん聞いた話では、新兵器で焼き尽くしたちゅう話や。木が全部燃えたせいで、今生えちょるんな若か木ばっかいやなあ。」

「新兵器ってどんなんやろ。」

「魔石を使うたヤツんごたっどん、作り方は極秘みてやぞ。」


 まあ、純粋な好奇心はあるが、知らんなら知らんでもええなと思う。関わりたいもんでも無いしね。


 昼食を終えると、天王山の北関市側の登山道から、何か落ちとらんかと注意しながら下山する事にした。天王山は山と呼ばれるが標高は高いとは言えず、険しい丘のようなものだ。特別な登山用具などは不要だが、登るより下るほうが体力を使う気がする。気を付けねば。


 ズルッ (うおっ)


 そう思った途端、何かを踏み足を取られた。転びはしなかったが、大きく体勢を崩した。


「大丈夫かー。気を付けや。」

「ゴメン御免。大丈夫や。」


 足元を見ると、何か金属製のものが地中から顔をのぞかせている。


「なんやろコレ。ちょっと掘っても良い?」

「じゃあ皆で掘るか。」


 三人でかかると直ぐに掘り出す事が出来た。それは一枚板の鉄板であり、盾のように見えた。

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