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輪廻の果てへ  作者: 葉和戸 加太
二章 魔術契約
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70 焼き場造り

 仕事が終わり、オバちゃんから声が掛かる。


「今日はもういいよ。お疲れ様。」

「ありがとうございましたー。」

「ありがとねー。おむすび持っていきなさい。」


 仕度が終わると声を掛けてくれ、お土産を渡してくれる。塩むすびだった。魔法で焼きおむすびが出来るかもしれんと思い付き、帰宅途中に試してみたら、火加減を間違えて焦げてしまった。


 犬のタロウにあげると美味しそうに食べてくれたので良しとしたが、せっかく作ってくれたおむすびを焦がした事で、少し罪悪感を感じてしまった。微妙な操作をするには修行が足りんようだが、ちゃんと魔法を発動できたのは自信になった。


 手伝いは2、3日の予定だったが、熱属性魔法の感覚を掴むまでと思い延長させてもらい、延べ日数で5日の仕事となった。オバちゃんが夕飯の仕度をしている間の1~2時間程度だったが、思ったより疲れが残った。


 そして今日、最後の窯当番が終わり念願の土を分けてもらう。手で運ぶのは大変そうだと思い、また豊吉さんから大八車を借りる事にした。


 これで目標としていた最低限の二つ、土の入手と火属性魔法の修得が達成できた事になる。順調やないか。商品の製作に入るのは夏休みに入ってからとして、後は内容、質を高めて成功する確率を上げていこう。


 となると問題は窯だ。作るのはあくまでサンプルであり、完成品としての品質で作るのは無理だ。しかし見本も出来るだけ良い物を作りたいと思う。


 簡単な窯でも作るか。イメージは焼却炉だ。燃やすのが目的ではなく、熱が籠り温度を逃がさない為なので、熱を反射するアーチ形が良いだろうか。


 ………いやいや、そりゃ無理やろ。我ながら何を考えとんねん。血迷ったか。


 さすがにそこまで時間の余裕が無い。今まで順調に行き過ぎた為に調子に乗ってしまったようだ。ちょっと冷静にならなあかん。


 ユキちゃん家で窯を借りるのも有りだが、発表まではアイデアをさらしたくないので、それは最後の手段としたい。


 土を入手した次は、土で器の成形と焼成という過程を経て商品が出来上がるのだが、ここでの問題は、この土は直火で熱して良いか、詰まり、直火焼成が可能なのかという事だ。


 直火焼成が駄目なら窯を使わせてもらうか、熱属性魔法を使いこなすしか無い。オバちゃんに聞いて確認したら、耐火粘土なので直火で大丈夫だと教えてくれた。素晴らしいやないの。


 本格的な窯は無理だが、簡単な焼き場を造ってみるか。造るといっても簡単な穴を斜めに掘るだけだ。平らな地面で焚火をするよりはマシな程度である。うーん、やっぱり熱属性魔法が必要かもしれんなあ。


 木を燃やして焼成しようと思っているが、その為には乾燥させた木材が必要となる。薪となる木材を集めんといかん。山に入って毎日少しずつ持ち帰るとしよう。


 陶磁器については多少の知識があると自負している。前世のサラリーマン時代、陶磁器商品を扱っていた時に、生産現場との打ち合わせで、これは人気があるから生産を早くしてくれだとか、今はこれが品薄なので急ぎで頼んますなど急かしていたら、現場責任者に次の様に言われた。


「分かった。お前に生産ライン一本くれてやるから好きなようにやってみろ。」

「マジッスか。」

「おう、一度やりたいようにラインを組んで持ってきてみぃ。駄目な所は直したるから。」


 生産ラインを任され仕事のスケジュールは楽になったが、僕個人のスケジュールは逆に厳しくなった。そりゃ受注から生産、納品まで一括管理しとったから、作業工程は完全に把握できていたが、その分プライベートが犠牲になったっちゅう訳ですな。


 おかげで他の営業と生産ラインの取り合い合戦をする必要は無くなったが、覚えなあかん事が増えて大変だった。最終責任は現場が持ってくれたので、気持ちとしては楽に感じたが、そこまで投げられたら、こっちもやっとれんかったと思う。


 しかし、モノ作りに関われた事は純粋に面白かった。真剣に職人にでもなったるかと考えた時もあったなと、今となっては懐かしい思い出だ。まさかその時の知識が異世界で役に立つかもしれんとは思いもよらかった。


 素人に毛が生えた程度の知識ではあるし、生産設備は皆無なので出来ない事の方が多いが、あくまで試作サンプルとしてなら、誤魔化せる程度には作れるやろ。


 畑として開墾した場所を焼き場にしようと決め、穴を掘る事にした。所謂いわゆる野焼きと呼ばれる原始的な方法だ。丸い穴ではなく傾斜をつけて掘り進む。後ろと左右は土壁に囲まれ熱を逃がし難くし、傾斜がある方向からは空気を取り入れ易いようにと考えた結果だ。上部は鉄板が手に入れば、それで蓋をするのも悪く無い。


 そんなこんなをしてるうちに日は廻り、日中の日差しが強くなったのを感じる。


 始めての夏休みが訪れようとしていた。

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