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輪廻の果てへ  作者: 葉和戸 加太
二章 魔術契約
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69 子供の懐事情

 前回の捕捉から話を始めたい。


 危機管理の対応について、国家としての話を個人レベルに例えてみたが、国家と個人では事情が異なる為、単純に比較は出来ない。


 例えば、ある組織団体は次の理屈で銃規制に反対している。


「ナイフを持った悪漢が家へ侵入し被害が発生しました。ナイフに対抗する為に銃が必要です。皆さん! 一家に一丁、銃を備えておきましょう!」


 これが正解なのだろうか?


 怖い世の中ですなあ。


 僕個人は自宅に対人用の武器など所持したく無い。それでは、どんな理由で国家と個人の差が生れるのだろうか。


 その決定的な違いとは、武力(暴力)が管理・コントロールされているかどうかだと考えている。


 治安が悪い、警察など信用できぬといった社会では、自衛の手段が無いのは死を意味する。銃の所持が必要不可欠かもしれない。


 しかし、治安が回復し社会が安定すれば、銃は無用の長物どころか、犯罪を助長する可能性すらある。銃が不要な社会が望ましいのは明らかだ。


 国家間の戦争や内戦を調停すべき世界政府として相応しいのは、国連だと言う人がいるかもしれない。理想としては良いが、記憶がある限りでは、その役割に相応しい力と能力があるとはとても考えられなかった。


 国家を管理する世界政府は存在しない。力を管理監督する存在の有無が、今回の話における国家と個人の差なのではないかと考えている。リスク管理というものは状況によって異なり、様々な要因を考慮しなければならい。


 前置きが長くなってしまった。


 さて、今後の計画の為にそろそろ陶器用の土を手に入れなあかんが、ユキちゃんの家から貰う事が出来ないかと考えている。タダとは言わん。代金分の働きはさせてもらいますぜ。


 家に送っていった時、工場らしき建物が隣接しており、そこには空へと突き出た煙突を見る事ができた。おそらくこれは窯であり、便器は外注ではなく自分の工場で作っているとみた。そうであるなら原料の土も扱っているはずだ。


「ユキちゃん家ってさ、便器って自分トコで作ってんの?」

「うん。窯で焼いてるんだけど夏は暑いから嫌なんだよね~。冬はあったかいから良いんだけどさ。」

「じゃあさ、土って分けてもらう事できる?」


 今回は勘違いが無いよう分かりやすく説明をする。原料である土は商品の一部で、お金も掛かっているはずだ。小遣いでは足りそうにないので、仕事で何か手伝わせてもらえれば有難い。


 自分の小遣いについてだが、饅頭なんかを買うと、直ぐに無くなってしまう程度の金額でやり繰りしている。ケン兄とハナ姉と相談し、次は何を買おうか計画しながら共同で使っているのが現状だ。餡子も良いがきな粉も捨てがたい。栗も人気の一品である。


 つまりですな、病院の手伝いをしてるとはいえ、子供に不相応な金額を貰っとる訳では無いという事だ。団子の新作が出た時などに、もうちょっとお金があればと思う事はあるが、今のところは満足している。


 金ってのは魔物と言われるほど扱いが難しい。金は力である。確かに金で解決できない事はあるが、それとは逆に、金が無いと解決できない事があるのも事実だ。子供のうちに自分の欲望をコントロールする術を身に付けないと、将来に苦労しそうだとの気持ちもあり、あえてお小遣いアップのお願いをしていない。


 なんだが偉そうな事を言ってしまったが、本音を言えば、金を出して欲しい物がそんなに無いんだよね。


 例えば服。昔はお下がりだったが、今は新品を買ってもらっている。見習いとはいえ、病院の先生が小汚い服装では信用に欠ける。遊び道具は基本的に野山で遊んでいるので、そこら辺に落ちてる木の棒とかで十分だ。それに道場へ通い出したので遊び場には事欠かない。ああ、川遊び用のタモや釣り竿は欲しいがそれ位かな。その程度はおねだりで何とかなりそうだ。


 お金で買いたい商品が無いのが一番大きい。菓子や団子を買えさえすれば、十分にやっていける。もっと体が成長したら変わってくると思いますがね。


 ふむ。いざとなったらお金の管理をしとる春絵さんに頼み込むか。


 数日後、ユキちゃんから返事を貰えた。


「お手伝いをしてくれたら幾らでもあげるって。」

「ありがとー! すっごい助かる。で、何やりゃええの?」

「窯焼き当番だって。」


 2,3日手伝ってくれれば良いよとの事だったので、早速お願いをした。ユキちゃんを家へ送るついでにお邪魔すると、温和そうなオバちゃんが出迎えてくれた。


「陶器用の土が欲しいんだって?」

「仕事のお手伝いするので、必要なだけ分けてもらえればと。」

「ユキから聞いたんだけど、臭くない便所を作るらしいねえ。」

「はい。それが出来たら見てもらって、使えるか判断してくれると有難いです。」

「変わってるねえ。そんなんが出来たら是非使わせてもらいたいよ。」


 お、商品の性能が良ければいけそうな感触だ。後は価格設定をどうするかだな。


 今回の手伝い仕事の内容だが、窯当番をして欲しいとの事だった。火を絶やさぬように薪をくべて欲しいそうだ。早速やり方を教わり窯を見守る。


「窯のそばにいると沢山汗をかくから、ちゃんと水分補給するようにね。あと塩。塩を嘗めとかないと気分が悪くなる事もあるから、忘れないように。少しでもおかしいと思ったら言うんだよ。」

「分かりました。」


 子供が窯当番ってのは重労働だ。現代日本では許されん話である。汗で失われるものは水分とミネラルだ。ミネラルと言うが、汗に含まれるミネラルの大部分は塩分である。スポーツドリンクなるものは無い為、熱中症にならぬよう塩を嘗め嘗め仕事に励むのだ。


 窯焼きね。願っても無い事だ。心の中で笑みを浮かべる。火属性魔法の延長として、熱属性を意識して練習を重ねてきたが、その感覚を掴むのにもってこいだ。


 なんとかこの仕事中に感覚をものにしたい。

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