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輪廻の果てへ  作者: 葉和戸 加太
二章 魔術契約
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67 必殺、カウンター攻撃

 勝てる気がしない。


 これまでの勝負では、相手の知らない戦法を使って勝ってきたが、今回はそれを使える状況に無い。剣道である以上は締め技や寝技を使っては駄目だろう。投げは邪道だが、一本を取る為の過程と考えれば許容範囲ってところか。なんとか足掻あがくしかないが勝機はあるのか?


 やるべきは防御を捨て攻撃あるのみ。元々僕の剣道技術なんてたかが知れてる。ここぞの一撃に全てを賭けるべし。


 賭ける一撃はワカが助言をくれた胴狙い。狙いが決まれば後はタイミングだ。


 所謂いわゆるカウンター狙いであるが、一口にカウンターと言っても、それを更に分類する事が出来る。


 いわく、先々の先、先の先、後の先である。


 これらはいずれもカウンター攻撃で、相手の動きに反応した動作である。流派によって解釈の違いがあるかもしれないが、僕の理解していた範囲で解釈するならば次の様になる。


1. 先々の先

 敵が攻撃しようとする心の起こりを打つ。首を動かしたり剣先を振る等、攻撃に入る一歩前の気配を読み取り、実際の行動に移る前に、その流れを断ち攻撃する。


2. 先の先

 敵が攻撃動作へ入ったが、技が発動する前に攻撃を合わせる。飛び込んでくる為に身を屈める等の動作を見切り、それが攻撃の形になる前に潰す。


3. 後の先

 攻撃する事により生じる隙を見切り反撃する。殺傷能力の高い剣による攻撃である場合では、前二つと比べて威力に差が少ないかもしれないが、徒手格闘技では、相手の攻撃の勢いに己の力を乗せる事が出来る為、その威力は格段に跳ね上がる。ボクシング等で、一般的にカウンターと呼ばれるもののイメージ。


 どれも心や技の隙を突くものであり難しい。僕にそんなん出来るんか?


 しかし、それしか道は無い。試合の前に死んでくると言ったが、所詮しょせんは試合や。死にはせん。やったるで。


 動作の起こりは下半身からだろう。相手の体全体を視界に収めながら、特に足に注意を払う。力を出す為に身体が沈んだら即時特攻だ。本来の試合では袴を着用するらしく、そうなると足捌あしさばきが分かり難くなるが、今はお互いズボンだ。袴よりは判断しやすい。


 正面に相手を見据みすえてジリジリと詰め寄る。


 後ろ足に体重が乗ったらそれが合図だ。完全に読み切るのは無理だろうと思う。ある程度は直感に頼るしかない。以前の授業で一度は手合わせしているはずだが、その時の内容は参考にならない。何も出来なかった記憶しか無く、分析しとる余裕すらなかったからなあ。それを思えば今が出来過ぎな程だ。


 そうだよね。自分でも良く分っとらん事を、グダグダ考えるから迷いも生じる。後ろ足に体重が乗ったら即特攻。細かい事はおいといて、これに賭けるしかない。


 ただ、仕掛けだけはさせてもらうぜ。飛び込みやすいように腰を落とし、気持ち前傾姿勢をとり竹刀を下げる。面打ちを誘ってみたが乗ってくるだろうか。さあ、いつでもこいや。


 気分は西部劇だ。抜きな、どっちが速いか勝負しようぜってヤツよ。


 ………足が沈む。今だっ!


 地を蹴り前へ出るのに併せて竹刀を一度下げ、下から胴へと切り上げる。


 届いたか?


 そう思った瞬間、頭頂部に衝撃が走り意識が飛びそうになった。


「あー、負けた負けた。」

「お疲れ。」


 最後は負けてしまったが思った以上に戦えた。二勝一敗とは我ながら上出来だ。自分の力だけではない。参謀がいたお陰で楽な試合運びをする事が出来た。


 また今回の試合で感じたのだが、試合と実戦を同じに考えたら駄目だなと思う。言う迄も無いが、実際の敵は試合における有効部位のみを狙うのではない。それに相打ちは仕切り直しでは無く、両者死亡を意味する。そんな状況の中での精神面も重要になるだろう。


 先ほどの試合の感触が未だ僕の手に残っている。確かに敵の剣は僕の頭を真っ二つにしたが、頭をカチ割られながらも僕の剣は相手の胴に届いていた。真剣ならどうなっていたかは不明である。


 今の僕が何を言っても、負け惜しみにしかならないのは分かっとりますがね。


 万一の自衛に備え、戦場の剣という自顕じげん一刀流を習うのは無駄ではないと思う。


 試合から数日後、入門の申込をしに道場へ訪れた。


「君が練習生を希望しているハル君か。」

「はい、宜しくお願いします。」


 師範とよばれる人と面談して入門の許可を貰う事が出来た。師範は名を無二斎と名乗った。穏やかな雰囲気ではあるが厳つい。刀傷の跡を頬に見る事が出来る。


 ワカ達の言うように初年度の練習生は無料だと言われ、理由を教えてくれた。


 初年度は基礎を徹底的にやるとの事で、素振りや人形に対しての打ち込み練習がほとんどだそうだ。ひたすら攻撃を磨き、剣が自分の手と同じになった感覚を持てるようになってから、高度な技の練習に入るという。しかし、それは基本的に一人でも出来る事だ。基礎訓練に耐え切れず止めていくものも多いらしい。


 それ故、初年度は師範からの指導も少なく金を貰うのは忍びないとの事だった。基本的な振りの姿勢や力の入れ方等は教えてくれるらしい。


 少し迷ったのは事実だが入門させてもらう事にした。理由は、先ず友達がいるという事。次に、基礎練習を嫌だとは思わなかった事。人と競う事も大事だが、一人で練習に打ち込み、己自身と向き合うのは嫌いじゃない。自分のペースで出来る事も大きい。


 練習生は勝手に来て勝手に帰っても良いとの事で、挨拶だけおこたらなければ、施設や備品を勝手に使って良いらしい。但し、道場生同士で試合や申し合わせ稽古などをする時は必ず許可を取るように言われた。練習生と言うより、危険な事をしなければ道場で遊んどっても良いよといった感じだ。


 自分にはすごい合ってる気がする。なんで人気が出んのやろか。それとも、遊んどるんやったら家の手伝いでもしろと言われとるのかもしれん。


 そう言われんように、病院のお手伝いをしっかりやろうと決意した。

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