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輪廻の果てへ  作者: 葉和戸 加太
二章 魔術契約
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63 剣の道

 体力テストが終わり通常の体育授業が始まった。


 基礎体力向上の為に走り込みが主体となっている。水を飲んじゃあかんといった根性論や、兎跳びのような効果が疑わしいものは今のところは無いが、この先どうなるか分からん。


 変わったものといえば剣道が始まったくらいか。竹刀と防具は前世日本と大差の無い造りとなっている。前世の中学授業で習った経験があるが、この世界では未だ体が出来ていない年少時から始めるらしい。


 戦乱が間近に存在するからなのか。実際に戦地で戦う事態があるか分からんが、いざという時に、身を守る術を身につけておくのは無駄にはならないだろう。


 剣道ねえ。魔法と組み合わせて魔法剣とか出来るんやろか。レーザーブレードも捨てがたい。カッコ良い技名を考えちゃうぜ。


 で、肝心の腕前はというと、全く自信は無い。剣の握りと基本的な振りは何とか覚えていたが、それだけだ。当時の授業でも、可もなく不可もなくって感じやったなあ。


 練習として素振りをしていたら、振りの型だけは良かったらしく、要らぬ警戒心を与えてしまったようだ。


「おはん! よか素振りじゃな。」

「え、そうなん?」

「おう。おいと勝負してみるか?」


 その結果は……。


 当然負けるわな。手も足も出んとはまさにこの事。多少の差なら悔しくもなろうが、圧倒的過ぎて笑うしかねえ。ゴンには勿論もちろんのこと、武士グループの5人全員に負けた。それ以外には勝てたので良しとしようか。


「うーん、筋は良かどが、太刀筋に自信が無かし素直すぎるな。」

「ワカが言ったごつ、戦はきれい事じゃすまんで。気合が足らんね。」

「面目ない。チェストが……。」

「足らんな。」


 二人が口をそろえて足りんと言う。そこまで強調せんでも分かっとりますがな。


 剣道ねえ。ちょっと真面目に考えてみるか。


 刀剣ってのは純粋にカッコいい。戦隊ヒーローでも、リーダー役を務めるレッドの武器は剣であるパターンが多い。


 じゃあ、実際の戦いで刀剣はどこまで有効なのだろうか。状況により異なるが、距離の問題のみを考慮に入れると当然に射程の長い得物が有利だ。命中精度や連射性も重要となるが、自分の安全を確保しながら敵を叩けるのは大きい。


 短刀より刀剣、刀剣より槍、槍より弓、弓より銃、銃より大砲やミサイルだ。


 戦争においてはこれが正解だが、相手を正確に捕捉し遮蔽物しゃへいぶつが無いという条件が付く。破壊力によっては簡単な遮蔽物しゃへいぶつなど意味がないケースもあるが、距離の長さだけでいえば、刀剣は利点の少ない武器と言える。


 戦場でメインウエポンとなるのは剣では無い。時代や戦術にもよるが、基本的には先ず弓矢で先制後、槍で叩き、それでも接近されたら剣による白兵戦だ。騎兵がサーベルを使う例もあるが、リーチの短さを馬の機動力で補う事が前提となる。


 軍隊においてメインでは無いが、サブウエポンとして必要不可欠なもの。それが刀剣類ではないかと思う。


 しかし舞台が日常へ変わると、戦場では脇役だった刀剣が主役へと躍り出る。


 市街地になると遮蔽物しゃへいぶつが多くて、弓はその威力を十分に発揮する事が出来ない。また、弓や槍を持ちながら日常生活をすごすと考えると、非常にかさばって邪魔になる。


 通常の生活をしながら武器を携帯する事を考えると、手頃に持ち運びが出来て、最大戦力となるのは何かという問題になる。その答えは近代なら拳銃、中世以前なら刀剣という答えに落ち着くのではないだろうか。


 日常生活で刀剣を使用する対象となると、仮想敵は同じ人間でしか有り得ない。警察官の拳銃と同じ事だ。刀剣は対人間兵器で力の象徴である。良い悪いは別に、刀剣は目的に特化した非常に純粋な存在だ。その目的とも相まって、見る者に研ぎ澄まされた冷たさ、美しさを感じさせる。


 究極の機能美、用の美と言える。


 本来の目的が目的なだけに、魔剣、妖刀の逸話が豊富にあるのは、当然と言って良いかもしれない。人を殺傷する為の武器、それが剣の目的だからだ。


 このように言うと、剣は人を傷つけるだけの残虐非道なものと思うかもしれないが、要は使い方である。触れるもの全てを傷つける凶器となるか、心の支えである守り刀となるかは使う者次第だ。


 時代背景もあるが、武器を持つ必要のない社会が好ましいのは言う迄も無い。


 まあ、いろいろ蘊蓄うんちくを述べたが、剣道なんて物騒なもんやから、負けて悔しくなんかないぜと強がっている訳では無い。


 普通に悔しいし情けないが、笑わんとやっとれん程の差がある。つまりアレよ、誤魔化し笑いですわなあ。


 そもそも剣の目的とは…、などと言い出したら、剣道やっとるヤツは殺人の練習をしとるんかという話になりかねん。


 それはそれ。これはこれだ。


「さすがお武家さんやな、完敗や。」

「そりゃそうじゃろ。こいでおいたちが負けたら、それこそ腹を切らんないかん。」

「腹ねえ……。まさか本気やないよね?」

「さすがにね。そんくらいの覚悟って事じゃな。」

「お侍すげえ。」

「なんやったら、道場で一緒に修行すっか?」

「でもお金かかるんでしょ?」

「練習生やったら金は要らんかったて思う。」


 どうやら練習生なるものがあり、子供で始めの一年間のみ無料となるらしい。


「希望者が多い場合は抽選とか?」

「いや、希望者なんてほぼおらんで申込すりゃ大丈夫じゃ。」


 人気無いんか。凄いスパルタなイメージがあるからかもしれんな。見学だけして無理そうだったらやめとくか。


 帰宅後に家族に話して許可をもらった。病院の手伝いをちゃんとすればよろしいとの事だ。


 よし、これなら止めようと思った時の言い訳がたつ。家の手伝いが忙しいんでと言えば何とかなるやろか。


 あえて退路を断つ背水の陣もあるが、そこまでの覚悟は無い。

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