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輪廻の果てへ  作者: 葉和戸 加太
二章 魔術契約
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62 ふるさとは遠きにありて思ふもの

室生犀星の解釈ですが、大岡信ことば館様HPを参考にさせていただきました。


 魔法・ファイアを使いたいというロマンを追い求め、話が脱線した感があるが、そもそも火属性魔法を必要としたのは、陶器作製に熱が必要だったからだ。


 必要なのは火そのものではない。火から発生する熱こそが必要だったのだ。火と熱は非常に近い存在だ。熱が原因となり燃焼が発生するという関係性もある。


 皆の火属性魔法を使うイメージを聞いてみた。


「俺は カッ! って感じだな。火打石で着火する感じ。」

「私は ジュー だね。硝子で光を集める感じ。キレイだしね。」


 ケン兄とハナ姉で違ったイメージを持っていた。授業では魔法以外の着火方法を勉強した後で、自分のイメージしやすいやり方で修得するという。ケン兄は習い始めたばかりの頃は習得にてこずったらしいが、佐助さんから火打石のイメージを教えられてから出来るようになったらしい。今では得意分野だ。


 ハナ姉はレンズで太陽光を集めるパターンだ。あまり一般的では無いが硝子細工の湯呑などがこの世界にも存在している。学校授業で、歴史だか文化だか何だかの時間に使われるらしい。


 ジューってのは分からんでもないが、僕には肉を焼く音に聞こえる。


 そういや食いしん坊設定ってのもあったな。


 食いもんの話はともかく二人とも良いイメージだと思う。僕自身はどうしよう。


 やはり大事なのは熱だ。熱を加えて、酸素と結合する化学反応を起こさせるのが目的で、火そのものは副産物と考えよう。


 どうやれば熱を発生させられるのだろうかと思ったが、実はその練習をしたことがあった事に気付いた。西瓜スイカだ! 西瓜スイカでドライフルーツを作った時に火属性魔法をイメージしてやっとったなと思い出した。その時の経験が役に立つはずだ。


 ドライフルーツを作っていた時のイメージは電子レンジだ。


 電子レンジはマイクロ波を対象に照射し、分子を振動させて温度を上げる装置である。僕はマイクロ波をイメージしながら魔力を西瓜スイカに浴びせていた。


 うむうむ。コレでいこうやないの。


 慣れてくれば一瞬にして水を沸騰させたり、炎が上がる程の熱を発生させる事が出来るかもしれん。ケン兄のように、一瞬にして高温にするなら「ボッ!」という感じだが、いきなりは無理だろう。ハナ姉に近い「ジー…」か「ジジジ…」だな。魔力を一点に集中させる、まさに集中力が必要だ。


 今回の注意点だが、前回のドライフルーツ作成時のイメージは、まさに人間電子レンジだったが、今回は少し違う。


 電子レンジのマイクロウェーブは、どんなものでも温めれるものではない。温める事が出来るものは水分を含んだ物に限るからだ。


 水属性魔法は習得済みなので、分子振動のコツを掴む為に、電子レンジと同じように水分子に限定して練習する方法もあるが、始めからへんな癖を付けたくない。長い目でみれば水分子振動に限定しないほうが良いだろう。捨ててしまう紙切れを学校から拝借し練習する事にした。


 これでやるべき事が見えた。後は練習あるのみだ。火事になったらいかんので、水を入れた桶を用意して風の無い日に練習を繰り返す。


 両手の親指と人差し指で三角形を作り、それを顔の前にかざし対象に狙いを付ける。イメージは眉間から照射された魔力が対象物の表面で一点に集中する感じだ。


 始めて二日間は何も起こらなかった。必ず出来ると信じていないと心が折れていただろうが、今の僕にはそれを乗り越えられる根拠がある。他の属性魔法を使えるからだ。一度でも出来ればそれが経験になり自信につながる。成功体験は人を大きく成長させてくれると思う。


 とは言っても、ただ頑張るだけでは集中力が持たない。時折、気持ちを高揚させる為に鼻歌を歌いながら作業している。歌の内容は特撮ヒーローやスーパー戦隊のテーマソングだ。


 子供に戻ったせいもあるのか一度歌い出すと頭から離れん。電子レンジから連想する戦隊ヒーローの歌をノリノリで歌っていたが、程なく我に返り周囲を見渡す。聞いとるヤツはおらんだろうな? 


 どの戦隊やヒーローが好きだったかは別にして、昔の番組で使われていた曲が好きだった。良く分らんが、古き良きノスタルジーというものを感じさせてくれる。歴史で例えるなら、過去の世を大正ロマンなどと呼び懐かしむようなものだろう。


 その時代の空気を味わいたいと願ってもそれが叶う事は無い。不可能だと思うと余計にロマンを掻き立てられる気がする。前世の地球を恋しく思うのも同じ事かもしれん。


 しかし、仮に自分の好きな時代に行ける事が出来ても、行く人っておるんか? 僕の場合は、行くにしても元の時代に帰って来られるのが大前提だ。現実的に考えると生活基盤が無い。言葉も違うかもしれん。同じ日本語でも昔の文字なんて達筆すぎてまともに読めんわ。正直、生きてゆける自信なんて無い。


 いろいろ考えると、今の僕はこの世界に属しているんだなと改めて思う。



 ふるさとは遠きにありて思ふもの


 そして悲しくうたふもの


 室生犀星



 この有名な詩句だが、これは純粋に故郷を思い詠んだ詩ではなく、作者が帰郷した際に詠んだものとされる。故郷は懐かしく忘れ難いが、いざ帰郷してみると複雑な感情が湧き起こるという、何とも言えぬ気持ちを詠ったものという解釈がある。


 現実的な話として、地球の日本へ戻れるぞと言われても、誰一人として知り合いが無く、戸籍もない異邦人となるのなら、最底辺の生活を免れる事は出来ないだろう。当然ながら魔法も使えんやろうなあ。


 ロマンはロマンのままに留めておいたほうが良いのかもしれん。今はただ出来る事をやるだけだ。決意を新たにして練習に精を出す。


 練習三日目になると、少し焦げたような跡が出来た。あと一息だと感じ、休憩を取るのも忘れて集中を続けていると、白く煙が立ち上った直後、それが小さな火へと成長した。


 よっしゃ! 初歩の初歩だろうが火属性魔法を発動できた。まだまだ小さな火種に過ぎないが、この小さな火を大きく育てていこう。


 火事だけは洒落にならん。十分すぎる程に気を付ける事にした。


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