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輪廻の果てへ  作者: 葉和戸 加太
二章 魔術契約
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57 承認欲求

 契約相手である超越者達について、推測に域を出ないものが大部分ではあるが、その概略を理解する事は出来た。推測が当たっている事を前提とすると、何故に、神仏と呼ばれる者達が人間に干渉するのかも見えてくる。


「信者獲得の為でしょうか。」

「力の発現、具体的で目に見えるものは分かりやすいからね。説法という地道な活動が、一時的な実益に負ける事は良くある事だよ。」


 神様は信者にあがめられる事で存在し、力も大きくなる為に、人間に干渉し存在を見せつけようとするのではないか。その方法の一つが契約によって人間に力を与えている理由なのかもしれない。


 これが真魚さんの推測だった。契約で守らなければならない誓約よりも、与えられる力の方が大きいと感じる理由にも説明が付くように思う。契約で力を貸す対価を得る事が出来るうえに、己の存在理由となる信仰を増やす事にも繋がるからだ。


 他人から認めて欲しいというのは承認欲求だろう。


 承認とは評価と言い換えても問題ない。承認(評価)の基準だが、結局のところ自分自身がどう感じるかだけだが、独りよがりの自己承認だけでなく、他者からの客観的な他者承認があれば、より承認された実感があると思う。


 神様は信者からの他者承認こそが、存在理由となり得るのかもしれない。


 という事は、承認欲求が満たされるような契約であれば、力を授かり易いという事だろう。欲求なんて言うと俗っぽい印象があるのは否めない。この世界の神様は唯一神でない事は間違い無い。若しくは、神と呼ばれてはいても、精霊や天使の類に過ぎないかだ。


 これで魔術契約の要点を掴めたように思われた。次は詳細を詰めていこう。


「契約の内容、求める願いですが、重ねて願を掛ける事は出来るのですか?」

「重ねて?」

「はい。例えば足が速くなりたいという一つの願いを、複数の契約で結ぶ事ができるのかという点です。」


 例えば俊足になりたいと願う契約を結んだが、効果がいまいちだった場合、同じ願いを叶える為に契約を重ねて結ぶ事が可能かどうかだ。前回と同じ神様相手に、捧げるものを変えて結ぶパターンと、別の神様相手と新規で結ぶパターンが考えられる。


「それはやってはいけない事とされます。」

「理由は?」

「一つ目の、同じ神様に捧げる物を追加で増やす場合ですが、これは契約の変更、若しくは再契約に当たります。これは余程の事情で無いと認められず、契約破棄とみなされるので注意が必要です。」

「なるほど。」

「二つ目、別の神様と新規契約をするのは、目的が同じものであると、始めの神様との信用関係が無くなります。一柱の神と信頼を損ねた場合、他の契約にも多大な影響を及ぼします。今後において、信頼されない者は契約を結べなくなり、これを回復するのは至難の業とされています。」

「信頼こそ全てという事ですか。」


 住む世界の異なる人と神様の間では意思の疎通が難しい。それ故に、契約の儀式など、決まり事を設けるのだという。


「以前、契約の儀をおこなうには、ある程度の基礎が出来ていないと駄目だと聞きましたが、基礎とはなんでしょうか。」

「取得する能力は現在の力を基礎とし、その延長が望ましいのです。基礎を理解せず、いきなり応用技術を使おうとしても使いこなせません。」

「具体的な能力では無く、知識はどうでしょう。」

「知識も同じですね。」


 うーん、基礎をマスターしたと言えるものなんて、今の僕にあるのかな?


 誰しも簡単に魔術契約ができ、その恩恵が得られるのなら、地道な努力をする人はいなくなり、社会の仕組みなどが無茶苦茶になる気がする。魔術契約も万能ではないという事だろう。


 僕が求めていたのは、周りの家族と同じ知識の力だった。専門分野を絞らずに、世界の真実が知りたいと願ったらどうなるのか質問したが、それは欲張りすぎだと言われてしまった。仮に効果があったとしても、物覚えや頭の回転が速くなる程度だろうとの事だ。その程度とおっしゃるが、それでも凄い事ではある。


 それに世界の真実なんて願いをすると、知識を願う契約は二度と出来ないかもしれない。真実は知識を含んだものだと言えなくもない。同じ目的の契約を重ねる事は契約違反とみなされてしまう可能性がある。こりゃあかんわ。止めとこう。それに上手くいったとしても、情報量が多すぎて処理できない可能性が高い。


 前世の記憶で苦労したのを思い出す。あんなしんどい思いは二度としたくない。欲張り過ぎるのは良くないし、身の丈以上の力を手にしても、十分に使いこなす事が出来ないだろう。


 真魚さんと相談しながら戦略を練り直し、納得のいくものが出来上がった。


 さあ、次は人間同士の契約についてだ。


 契約相手が人間であったとしても、契約は非常に大事であり慎重になるべきだ。特に、こちらは子供なので足元を見られ、不利な条件を出されるかもしれない。


 そこで神様に立会人となってもらうのである。こういったケースは商売人であれば珍しい事では無いらしい。契約締結には神職や僧職のものが間に入り、良い収入になっていると聞いた。


 今回の魔術契約は、学校側の支援があるので僕の懐は痛まないが、個人的なものになれば金がかかる。当然ながら元手は無い。後払い、つまりローンを組めるのか確認したが、それは担当するものの裁量に任されるらしい。


 儀式の費用は、その担当者が一時的に負担する事になり、担当者が決めた利率に納得すれば、魔術契約の儀式が執り行われるとの事だ。


 将来に必要となった場合、低い利率でお願いしますよとお願いし、今回のお勉強は終了だ。中身が濃くて有意義だったが疲れてしまった。こんな時はさっさと帰って寝るに限る。


 

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