53 役員決め
入学式から数日経つと、クラスの役員決めの話し合いが始まった。
役員の種類は以下の通りである。
・級長 1名
・副級長 1名
・書記 1名
・生活委員 2名(男女各1名)
・清掃委員 2名(男女各1名)
正直、どれも時間がとられそうでやりたくない。ただでさえ、相撲の経緯があり目立ってしまっている。この三人でグループが出来つつあるが、僕が庶民という事があり、他のヤツから妬まれても嫌だからね。
そんな僕の思いを無視するように、他の二人は盛り上がっているようだ。
「こんた組織の動かし方の練習になっかもしれんな。俺と一緒にやってみんか?」
「えー、家の手伝いもあるしどうしようかな……。」
「手伝いなら何時でも出来っどん、こんた今しか出来んぞ。」
「すごいやる気やね。」
「時間はとらるっかもしれんが、生徒ん希望で、やりたい事をやらせてくるっらしい。」
「ゴンは?」
「僕もやるよ。希望が通ればお金も出してくれるらしいよ。」
なに! 聞き捨てならん事を言ったぞ。現金なもので、急にやる気が出てきた。要するに、良い企画なら学校がスポンサーとなってくれるらしい。
こんな事が出来るのは、特別学級である1年1組の特権であるらしい。特別学級は1年1組という初年度と、最終年度である10年1組だけだという。
10年後に、今の教室に居る面子がどれだけ揃う事になるのだろうか?
また選ばれたいという気持ちと、面倒くさいので勘弁して欲しいといった思いが半々だが、これから一年間の経験により、気持ちが変化していく事だろうと思う。
さて、どれに立候補するかが問題だが、他の二人はどうする気だろうか。
「君らはどうすんの? 級長と副級長?」
「そうやな。目指すなら天辺じゃ。」
「僕は書記やなあ。」
「副やないの?」
「記録ってんな大事じゃっでね。例え嘘を記録せんでん、何を残すか残さんかで、操作すっ事もできるし、信頼できる事務方ってんな大事やろ?」
「その通りやと思うけど、悪い事はせんでね。」
「勿論。そいを防ぐ為にも書記をやろうかなと。」
凄いお子さんやね。これには親の影響もあるだろう。ワカの親は幹部クラスだというが、ゴンの親は事務方らしい。
以上の二つを除けば、残るは副級長、生活と清掃だ。
まず生活は無いな。生活指導の役なら論外だ。庶民がセレブに指導したとして、特権意識の塊の奴らが、素直に話を聞いてくれるか? ワカとゴンは例外だろう。
同じ理由で副級長も却下だ。
「なんや。俺を助けてはくれんのか?」
「そんなコト言われると心苦しいけど、普段から仲良くさせてもらって、副級長なんてもんになると、何て思われるか分からん。断固として拒否する。」
ここは譲れん。残るは清掃一択である。
「僕は清掃でもやるわ。」
「清掃って、便所掃除がほとんどやぞ。」
「なんやと?」
「俺は先輩から聞いたんだが、豊かなものこそ、汚れ仕事を知る必要があっちゅう方針で、便所掃除をさせっごつなったが、結局は庶民がやらせられちょっ事が多か言っとったあ。」
「うわあ、嫌な事を聞いたなあ。でも君らは階級が上やけど、ちょっと違うね。」
「僕は首都生活で散々苦労したし、ワカも少し前までは田舎に居たで、ほのぼのやっとたんじゃ。」
「君らみたいなんがおって、ホント良かったわ。」
先生が立候補を募ると、僕ら三人は、競合する候補が無くあっさり決まった。
体力テストや相撲の一件があり、この組の中でも僕らのグループは目立っているらしい。なんとなく、ワカがそのリーダーの位置にいる為と、上流階級である事も影響してか、彼がスクールカーストの頂点だろう。
ゴンも上位に入る。体力テストでは非凡な成績を残している。
で、肝心の僕自身である。運動では優秀な成績を修め、ワカとゴンとでグループを形成している事から、コミュニケーションも今のところは順調だ。
が、問題は家柄である。孤児である僕は話にならない。孤児だと言われる事については、それが事実なので構わないが、それを理由に見下されるのは釈然としない気持ちがある。
相撲の時にゴンが言ったように、子供達だけで終わる話なら、我慢が切れた段階で、喧嘩になって終わる話かもしれんが、家族に影響が出るかもしれんと聞くと、直情的に切れる事も出来んような気がする。
感情を抑えろってのもストレスが溜まりそうなので、関わり合いにならないのが一番だが、既にカーストの上位と仲良くなってしまった。その事自体は良い事なのだが、嫉妬されてはやっかいだ。
嫉妬を薄める為にも清掃委員に立候補し、汚れ仕事を引き受けるのだ。それに、良い企画があれば予算が貰えるという話が魅力的だ。以前から考えていた事が実行できるかもしれない。
やはり清掃委員の人気は無いようであり、女子の担当に立候補は無く、庶民だと思われる子が推薦で決まっていた。
こりゃ押し付けられたな。世知辛い話である。




