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輪廻の果てへ  作者: 葉和戸 加太
二章 魔術契約
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49 異世界相撲 開幕

 放課後に相撲をとる事になった。


 ふんどし一丁ではなく上着を着て行うらしいが、それを聞いて勝算が出てきた。前世の体育で柔道の授業を受けたが、実は得意分野だったりするのだ。経験者で黒帯の子と乱取りをした時があったが、それなりに付いていけていたように思う。また、何より楽しかった。


 今回の相撲では柔道をしてやろうと思う。柔道はスポーツとして大成功している競技だ。武術である柔術を基に嘉納治五郎が発展させたものである。


 柔術を柔道へと展開させるにあたり、切り捨てて取り入れなかった部分もある事だろう。それをブラッシュアップと呼ぶのか、斬り捨てとされるのかは分からないが、その結果として、より洗練されたものになったのではないだろうか。


 それを判断するには、古流柔術と柔道の双方を学んだ者でないと判断できない。前段で述べた事は素人感想の域を出ないのは言う迄も無く、どの格闘技がより強いのかというのは難しい問題だ。


 技じゃなくフィジカルこそ全てだよ説が、相撲最強論を支えるひとつだが、今回の僕は技で勝つ。前世で柔道の授業を受けたときは高校生だった。高校の黒帯にはさすがに勝てんが、今の相手は小さい子供だ。勿論もちろん、僕自身も子供に違いは無いのだが、体格は同じようなもんである。


 フィジカルが同じなら技が勝負を分ける。柔道の凄さをみせたろうやないかい。高校体育の、なんちゃって柔道ですがね。この柔道のおかげで、成績は最高評価だったのを覚えている。やったるぜ。


 前に、一番大事なのは心だと述べたが、その心を集中できるように、打撃技無し等のルール設定を設けたのだ。このルールだったら全力が出せる。全力パンチ有りという状況だったら、冷静に闘えるのかはなはだ疑問だ。


 さて、午後の授業が終わり、他の二人と校庭にある砂場へ行くと、少なくない数の野次馬が集まっていた。観客有りとは聞いとらへんよ。誰だ、話をひろめたヤツは。まあ、いい見世物かもしれんというのは否定しない。


「くれぐれも、興奮して喧嘩にならんように頼むぞ。」


 先生が念を押すが、心配無用。喧嘩になるくらいだったら負けるつもりである。どの程度の格下か知らんが、若様相手に意地を張るつもりはない。忖度そんたくすべき所はするつもりだ。今のところその必要は無さそうだが、臨機応変に対応しよう。


 さて、実際に相撲をするとなると順番決めが重要になる。3人なのでどうしても連戦しないといけない。


 初戦、次戦、最終戦とあり、体力的に楽なのが、初戦と最終戦で戦うケースだ。次に有利なのが、次戦と最終戦の連戦のケース。これは連戦となるが、対戦相手はすでに一試合後なので、体力が消耗しているはずだ。


「あのさ、相撲ってやったことも見たことも無いし、どんな感じなのか見てみたいから、2戦目と3戦目にしてもらっても良いかな?」

「良かぞ。じゃあ初戦で負けた者が、連戦にまわっか。」

「これは負けられんね。」


 交渉をする際に最善の結果を求め、それが得られれば良いのだが、そこまで固執しないのであれば、あえてセカンドベストを狙うと、競合する相手が少ない為に、成果がすんなりと出る場合がある。今回はそのケースだろう。それに、体力以上に重要かもしれない情報を得る事ができる。


 頭脳戦では一歩リードだぜ。これがどう転ぶのか、まだ分からないけどね。


 砂場の中央に二本線を引き、初戦を戦う二人が身をかがめる。


「見合って見合ってー、」


 さらにかがめて目を合わせる。


「のこった!」


 勢いよく体がぶつかる。片手を腰帯に、もう片方は袖口を掴んでいる。ほほう。これが異世界相撲のスタイルですか。


 今の僕たちの服装は、ズボンを帯で締め、上着を羽織った後でさらに帯を締めるスタイルだ。マワシでは無いので両手で帯を持っても、対戦相手の動きを封じるには不十分な為、この様な組み合いなのだろう。さあ、ここからどう動く?


 二人の動きを見ていると、力は拮抗しているようだ。押したり足をかけたりしているが、力による闘いがメインだ。足をかけて投げようとする動きもあるが、崩しが足りないような気がする。身体強化魔法の影響で力技は研究されたが、崩し技は軽視されているのだろうか。


「のーこったのこったっ!」


 じりじりとした状態が続いていたが、力ではワカが僅かに上回るようで、最後はゴンの足が砂場から外に出た。ワカの勝利である。


「白熱しとったな~。」

「あー、くそっ! 最後、次戦を考えて、体力温存しちまった。」


 本来であれば最後まで粘り、頭から落ちるのが勝負の心得だというが、そこまでやられたら圧倒されるわ。既に気迫で負けていたような気がする。試合の前に見せつけられんで良かった。二人に比べて、勝負への気持ちで負けていた。だが、それを気付けたのは大きい。


 ここまで来たら負けたくない。僕にもそれなりに意地ってもんがあるのよね。


 二人の取り組みを見た感じでは、体力配分とか余計な事を考えとったら負ける。一戦一戦を全力で取り組むだけだ。


「ちょっと待っとって。」

「おお……。少し休ませてくれ。」


 校庭の端にある井戸から水をみ、運んでくる。


「死にかけのヤツに勝っても威張れんからね。これでも飲んで息を整えてくれ。毒は入っとらんよ。」

「あいがと。」


 体力テストに向けて準備してきたのは、学校生活で、周りからめられたりいじめられたりしないようにと思っての事だった。その目的はここまでくれば達成できたと思って良いだろう。


 ここから先はオマケみたいなもんだ。最低限の目標はクリアしたんだ。後は僕の心のまま、全力を出せたと言う充実感を味わう為に頑張るのみ。


 やったるぜ。

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