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輪廻の果てへ  作者: 葉和戸 加太
二章 魔術契約
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45 新魔法開発と、続・体力テスト

 さあ、短距離走の開始だ。


 僕の利点は二つある。


 ひとつ、近代的な走り方を知っている事。腕の振りや足の歩幅などだ。ケン兄と練習していて気付いたが、こちらの世界では、歩幅の短いピッチ走法が主流だ。


 ケン兄だけがピッチ走法というのではなく、他の人も同じような走り方らしい。しかも重心を落とした、走行中の安定性を重視した走り方をする。推測になるが、荷物を持って走るなどの、純粋に走る事が目的ではない場合には、歩幅の短くなるピッチ走法が有利となる。重心がひくいのは悪い事ではないが、純粋に速く走るという、近代陸上競技を知っている僕が有利かもしれない。


 ただしこれは、そうであって欲しいという希望的観測も含んでいる。


 ふたつ、道具の存在。それは靴のスパイクだ。


 陸上のスパイクは地面をとらえ、前へ進む推進力を与えてくれる。短距離走があると聞いた時、スパイクが付いた履物を作ろうと考えて、試作品を作ってみたのだ。


 が、見事に失敗した。


 こんなん無理でしょ。少なくとも今の僕には無理だ。釘を付けようと思ったが、草鞋ぞうりに付ければ貫通して足が死ぬ。丈夫な靴底が必要で、動物の皮を何層にも重ねたものであれば、使用に耐えないだろう。今から作っても間に合わん。


 釘ではない、滑り止めとなるものが何か無いかと思ったが、草履の裏にどう固定したら良いかわからん。


 困った末に魔法に頼る事にした。


 幸いにも、固体に作用する土属性魔法が使える。靴の製作を諦めて、新たな魔法開発を行っていた。無理と思ったら、早めに撤退するのも大事な判断だ。


 新魔法の内容だが、草履ぞうりを魔力でおおって、靴底の強度を高めてみた。草履ぞうりという名のスニーカーが誕生した。試すと非常に使い勝手が良い。これは強力な武器になるだろう。


 非常に上手くいった為、この性質変化の魔法をいろいろと試してみた。その結果をまとめてみたのが次だ。


1. 硬くしたり柔らかくできるが限界はある。

2. 常に魔力を流していなければならない。魔力を止めたら元に戻る。

3. 化学結合を魔力で変化させた結果だと思われる。

4. あくまで物質の変化であり、魔力で靴そのものを造り出す事は出来ない。


 この性質変化は、水という液体を氷という固体に変える事は出来るのだが、水をワインにするような事は無理で、物理法則を超える事は出来ない。


 もっとも化学結合を変化させる時点で、エネルギー保存の法則はどうなんだという疑問はある。魔力という力を使う事によりで、ある程度の物理法則を無視できるが、魔法と魔術で、その無視できる幅に違いがあるのかなと思う。


 結局、細かい事は良く分らん。分からんが、とにかく上手くいった。自分で試行錯誤をしているだけなので、勝手な思い込みがあるかもしれないが、学校の授業等で情報を仕入れれば、更に改善が出来ると思う。


 魔術契約になると後戻りが出来ないかもしれないが、魔法なら後で修正が効くはずだ。


 さあ、いよいよ競争が始まる。


 体力温存の為に一回戦は手を抜こうかとも考えたが、いきなり速いヤツと当たる可能性もあったので、本気で走る事にした。チャクラが開いているのを確認して、身体強化と足元の硬質化を行う。


 始めの号令を合図に溜めていた力を爆発させる。風だ。風になるのだっ!


 一番に旗を取る事ができた。二着との差はかなり開いていた。余裕だったぜ。


 実際に走って気付いたのは、魔法で更に改善するとしたら追い風かな? 追い風参考という基準もあるし、風属性が役に立つだろう。未だ使えないけどね。


 次の準決勝も勝利する事ができ、最後の勝負となった。


 他の子達の走りを見ていたら、なかなかやるやると思わせる子がいた。良い勝負が出来そうだ。


「おはん速いのぉ、よか走りじゃ。」

「君こそ速いな、負けんように頑張るわ。」


 友好的に話しかけてきた。ええヤツやんか。


「ワカさー、気張れや。」

「おお。」


 ワカって名前なのかな? おそらくは官僚グループの家柄選抜だろう。決勝まできたのは身体能力もそれなりだろう。精悍せいかんな顔つきをしている。


 家が金持ちで、運動神経が良くて顔も良いと。頭の中身は知らんが、性格も良さそうだ。こういう子はね、若いうちに挫折を知っとったほうがええと思うよ。負けを知る事が真の強さに繋がるのだよ。


 悪いが今回は勝たせてもらうぜ。最終奥義、クラウチングスタート発動だ。走者が二人だけなら、邪魔される事なくスタートが切れる。


 クラウチングスタートをする為、土属性魔法で土台を作る。一度使えば壊れてしまうものだがそれで十分。スタートは用意という号令の後、柏手一本だ。


「用意っ……。」


 腰を上げて備える。


 パンッ!


 前傾姿勢を保ちながら、足を前に出して加速してゆく。ゴールの旗のみ見据みすえ、他の事は頭から追い出した。


 そして、僕の手に旗が握られる事となった。

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