表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
輪廻の果てへ  作者: 葉和戸 加太
二章 魔術契約
41/306

41 準備は整った

 転生の定義に関して難しくなってきたので、少々掘り下げて考えてみたい。


 始めに、精神と肉体は同一であるという前提のもと、個というものを突き詰めて考えれば、転生などあり得ないと述べたが、その例を挙げてみよう。


 ある日、居眠りトラックが突っ込んできて、今にも息絶えそうだ。


 そこに神様が降臨し、異世界へ転移させてあげると言う。


 異世界へ移動しますか?


「ありがてえ。是非お願いしますっ!」


 そう願い新たな世界が現れるのを待ったが、何も変化が起こる兆しが無い。


「すいませーん、もう死にそうなんですが、いつ異世界へ渡れるので?」

「もう終わりましたよ?」

「神様でも冗談は言うのですね。血が止まらないのですが……。」

「あなた自身は行く事が出来ません。」

「え?」

「あなたという人間の、全ての情報を異世界に送りました。その情報が新たな肉体を得て、新たな人生を送る事になります。異世界でのあなたは、現在の情報を全て受け継いでいます。あなたそのものと言ってよいでしょう。」

「しかし、それはただのコピーなのではありませんか?」

「コピーですが記憶は全く同じです。あなたが死ねば彼が唯一の存在となります。彼にコピーという自覚はありません。安心してお逝きなさい。」

「ぬわーーっっ‼」


 事実を知らなければ、満足した最期を迎えられたかもしれない。転移ではなく、転生でも同じ事がいえる。また、似たケースでSF世界のワープがある。


 瞬間移動の仕組みはいろいろあるが、代表的なものを挙げてみよう。


1. 転送先に情報だけ送り、現地で現物を組み立てる。


 この場合に転送元の人間は、物質としてはワープしない。送られるのは情報のみである。理屈としては、転送先にクローンが誕生するだけ。要するにFAXであり、先ほどの例と同じだ。転送元のオリジナルがどうなるのか不明。


 細かい話で蛇足かもしれないが、情報も物質の一つであり、情報を伝達する物質が存在しないと、情報の内容が伝わる事は無い。送付物の全てを送るのではなく、設計図だけ送ると考えてもらいたい。FAXではなく電子メールでも同じ事だ。


2. 転送元の物質を原子レベルに分解して転送、現地で再構築する。


 情報に加えて、再構築に必要な物質も転送するシステム。しかし、分解する時に一度死を迎え、その後に再生という段階を経る。このケースは生命が連続していると言えるのか疑問が残る。


3. 時空を歪めてワープする。


 転送元と先で何も違いが無い。最も受け入れやすい。


 どこまでがオリジナルの自分だと受け入れられるのか、悩ましい。


 この問題を解決するのが、魂こそ本体であるというシステムだ。肉体という物質が、所詮しょせん本体のオプションに過ぎないのなら、これらの推測は全て的外れとなる。すっごい便利な設定だ。これを考えたのは天才じゃなかろうか。いや、神様かな?


 では、僕の場合はどう解釈すれば良いのだろう?


 前世の記憶があるが、この記憶はどうやって次元を超え、異世界に届いたのか。魂というエネルギーに付随していたと考えるのが自然だろう。それについて更なる考察もあるが、それを確かめる術は無い。今はここで止めておこうと思う。


 さて、なんだかんだと考えているうちに、入学式が間近に迫ってきた。僕の近況だが、門の修得について進歩があった。現状は次の通りである。


<門を修得する工程表>

1. チャクラを封印する門の設計。


 門というイメージは使わない事にした。チャクラが活性化状態か、スリープ状態かという違いだけと設定した。単純にスイッチのON/OFFのみ。



2. 魔力のモード変更をする際の手順を決める。


 指で眉間のチャクラをトントンと2、3回叩いて、魔力の活性状態とスリープの切り替えを行う事にした。また、使う魔法によってチャクラの場所を変えるようにした。


 通常は眉間だが、水魔法の身体強化は、下腹部にあるチャクラで魔力を練るのがやりやすいので、身体強化は丹田でスイッチを入れる。


 ちなみに身体強化の魔法だが、僕の感覚では血液に魔力を乗せるイメージだ。酸素を運ぶ赤血球に力を与えている感覚である。



3. 複雑になりすぎて困るようなものは避ける。


 夜の就寝前と朝に起きた時に、それぞれスイッチを入れるよう習慣づけた。


 ある日の事、日課である桃の栽培で、魔力操作が出来なかった時があった。原因を探ってみると、朝にチャクラを起こす事を忘れていたようだ。上手く機能していると思われる。この程度のルーティーンならわずらわしさもない。始めは、自己暗示みたいなのがどこまで機能するんだろうと思ったが、これなら大丈夫だ。この世界は思いの強さが力になる。魔法の基となる力だ。



4. 将来、恥ずかしくならないように気を付ける事。


 気合を入れて叫んだりする事も無いし、今のところは大丈夫じゃないかな。


 新たな属性魔法は、格さんに風属性のヒントを貰っていたが、門の修得を優先した為に手が回らなかった。こちらは進展なし。


 そして最後になるが、家族のに前世の記憶を打ち明けるという話だ。夕食の時、こう聞いてみた。


「ねえ、前世ってあると思う?」

「前世?」

「今日、門の講習がお寺であったんや。坊さんと話してたみたいだから、影響されたんやないか?」

「うーん、何の神様をまつっているかで解釈が違うみたいだけどね。」

「解釈の違いって?」


 解釈の違いで、輪廻の受け止め方が違うという話はこのような事であった。


 魂とでもいうべきものは存在し、全ての生物に宿るとされているが、魂とは何かとの解釈で異なった見方があるらしい。


 魂とは全ての本質であるという説と、魂とは純粋なエネルギー、ただの栄養分に過ぎないという説に分かれている。つまり、魂のエネルギー循環を生まれ変わり、輪廻と解釈しても良いかという問題だ。


 魂のエネルギーとは魔力と同じく、純粋なエネルギーに過ぎないという受け止め方もあるという。


 神の存在が身近なこの世界でも解明されてないなら、一神教信者の言う通りに、この世界の神様ってのは、所詮しょせん精霊のたぐいなのかもしれん。まあ、それでも凄い事ではある。


 僕に前世の記憶らしきものがあると打ち明けてみた。人としての記憶があるとは言わなかったが、いろんな動物になってた記憶があるんだよねえと告白したら、


「ハルちゃん、人間になれて良かったね~。」

「ほほう、ようやく俺らと同じ存在になれた訳だな。」


 むむむっ⁉ 何だか釈然としないが良しとしよう。人間だった事もあると言い、ややこしくなっても困るので、こんなもんで良い。どこまで信じたかは知らんが、隠し事はこれで無くなった。


 いよいよ入学式だぜ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ